去年4月、広島県府中町で男性(当時52)が殺害され、10代の男女3人が逮捕された事件。3人のうち、強盗致死の罪に問われている特定少年の男(19)の裁判員裁判が22日、広島地裁で始まりました。

起訴状などによりますと、男は少年(17)と、男性から金品を脅し取ろうと考え、去年4月12日の夜、府中町の水分峡森林公園に誘い出し、男性の頭などを殴って死亡させ、現金8万1000円が入った財布を奪ったとされています。

この事件をめぐっては、逮捕された他の2人のうち、少年が強盗殺人の罪で起訴され、当時18歳だった女は恐喝の非行事実で少年院送致の保護処分となっています。

この裁判の争点は?

冒頭陳述で検察側は「少年とともに男性に暴行を加えた後、男が男性に馬乗りになった状態で『やれ』と少年に指示。少年が木の棒(長さ66.7cm 重さ1.5kg)で男性の頭を殴り死亡させた」と指摘しました。

この裁判は男に刑事処分を科すか、保護処分とすべきかが争点になっています。

検察側は、男を保護処分とする特段の事情はないとして、原則通り、男に刑事処分を科すべきと指摘しました。

弁護側の意見は?

弁護側は、起訴内容については争わず、「男には生育歴など特段の事情がある」として少年院での保護処分とするのが相当と主張。

その決定を下せる家庭裁判所への移送を求めました。

続く証拠調べでは検察側が、
▽女が男性を広島に呼び寄せたこと
▽当日は男が少年をバイクに乗せて現場に移動したこと
▽少年と女がメッセージアプリで連絡を取り合い、男と少年が犯行のタイミングを伺っていたことなどを明らかにしました。

奪った現金の行方は?

証拠調べでは、この他にも
▽男と少年が、倒れて動かなくなった男性のカバンから財布を抜き取ったこと
▽財布の現金のうち、少年が男に3万円を、女に3000円を渡し、残った4万8000円を少年が奪ったこと
▽男は受け取った3万円をタバコ代や知人とのカラオケ代、ホテル代に使ったこと
なども明らかにされました。

その後の被告人質問で男は、主導的な立場ではないことを主張しました。

「誰が計画したのかもはっきり分かりません」

【弁護側からの被告人質問】
Q「少年との関係は?」
A「長い付き合いで、一番かわいがっている後輩です」
Q「男性との面識は?」
A「ありません」
Q「計画段階で被告がしたことは?」
A「何もしていません。何も聞いていないので誰が計画したのかもはっきり分かりません」
Q「現場で最初に男性と話したのは?」
A「少年です」
Q「どんなやり取りをしていた?」
A「『金出せ』とかだったと思います。その後、取っ組み合いが始まりました」
Q「そのとき、何をしてた?」
A「女と2人で、少し離れたところから取っ組み合いを見ていました」

少年に対し「なんでそうなるんや」

Q「どのくらい男性を殴った?」
A「10発以下だと言い切れます」
Q「馬乗りになった理由は?」
A「うつ伏せの男性からバッグを奪おうとしたからです」
Q「そのとき少年に何か言った?」
A「男性が叫びだしたので『なんとかせいや』と少年を怒鳴りつけました」
Q「その後、少年はどうした?」
A「男性の頭に木の棒を思い切り振り下ろしました」
Q「そんなことすると思った?」
A「思いませんでした」
Q「殴ったときどう思った?」
A「『なんでそうなるんや』と思いました」
Q「金は受け取った」
A「3万円受け取りました」

「ケンカ弱いので木の棒を持つくらい・・・」

【検察側の被告人質問】
Q「少年の身長は?」
A「160cmくらい。体格は細かったです」
Q「少年がケンカで勝ったという話は?」
A「やられっぱなしと聞いていました」
Q「少年が木の棒を持ったときどう思った?」
A「ケンカ弱いので持つくらいは良いのかなと思いました」
Q「男性に暴力を振ったのはいつ?」
A「少年が男性に木の棒を奪われたとき、初めて跳び蹴りしました」
Q「他に暴力は?」
A「しゃがんで男性に話しかけたときに顔を殴られたので殴り返しました。これ以外に手は出してません」

「殺した罪悪感よりも・・・」

Q「『なんとかせいや』とは具体的にどうしてほしかった?」
A「特に意味はありません。とにかくなんとかしてほしいと思っていただけです」
Q「供述調書には『失神させてほしかった』と記録されているが?」
A「そんなことは言っていません」
Q「犯行で得た金を使うことに抵抗は?」
A「当時は何も思っていませんでした」
Q「殺してしまった罪悪感は?」
A「罪悪感よりも記憶から振り払いたいという思いが強かったです」

裁判員裁判は30日に弁護側証人への証人尋問などが行われ、7月1日に結審。判決は7月3日に言い渡される予定です。