元「TOKIO」の山口達也さん(54)が16日、広島市で講演しました。仕事も順調だったなかで自ら招いた不祥事と“飲酒運転事故”。しかし、この2度目の事故が、山口さんにとって本当の転換点となりました。(全5回の4回目)

【この連載は全5回でお届けします】
#1「お酒をやめた」と言えない アルコール依存症のリアル 「広島の空港で飲んでしまうかもしれない」その意味は
#2「お酒強いね」が誇らしかった「二十歳の乾杯」から始まった“15年”仕事が順調の裏で“家飲み”が逃げ場に
#3「お前は地に落ちたんだ」 仕事も仲間も信頼も全てを失った“不祥事” そして「本当の転機」となった“飲酒運転事故”
#4「お前は地に落ちたんだ」 仕事も仲間も信頼も全てを失った“不祥事” そして「本当の転機」となった“飲酒運転事故”
#5「変えられるのは未来と自分」依存症“克服”と言わない理由「死ぬまでアルコール依存症と共に生きる」覚悟

初めて言った「助けてください」

山口達也さん
「ここで初めて『助けてください』と言いました。自分がいつも誰かの相談を受けることはあった。でも自分が助けてくださいと言ったことは、振り返ると一度もなかった。その必要はないと思い込んでいたのかもしれません」

その言葉を受けて、周囲が動きました。

連れて行かれたのは内科ではなく、アルコール専門病院でした。

山口達也さん
「私が必要だったのは内科じゃなくて精神科だったんです。気づかなかったです」

入院期間は3か月。病院で山口さんを出迎えたのは、60~70人の同世代の依存症者たちでした。

山口達也さん
「アル中のおっさんたちの中に入っていくんです。めちゃめちゃ怖かった。刺されるんじゃないか、殴られるんじゃないかって思いながら気合を入れて行ったら、みんな『ようこそー』って言うんですよ。

元気そうで驚きました。みんな歯はなかったですけどね。でも笑っていた」

「ありがとう」という言葉に救われ

入院と並行して山口さんが続けたのが「自助グループ」への参加でした。

山口達也さん
「自分の話をして、人の話を聞く。過去・現在・未来の話をしていく。その中で共感をする、共感をされる」

依存症者は「心が凍えている」と山口さんは言います。孤独の中で、誰かの「ありがとう」という言葉や共感が、その氷を溶かしていく力になるのだそうです。

山口達也さん
「人を助けて自分が助かる、という言葉があります。助けるといっても、自分の経験を話すだけなんですよ。それで人がありがとうって言ってくれる。それがじわーってくるんです」

この自助グループの活動を通じて、山口さんは自分の飲酒の根底にあるものに気づいていきました。

依存者に限らない「生きづらさ」

山口達也さん
「すべての始まりは“不安”だった。生きづらさの入り口は不安です。苦しさの入り口も不安です」

山口さんが語った「生きづらさ」の構造は、依存症者に限らない話でした。

「人と比べる」「嘘や後ろめたさ」「他人への過度な期待」この3つが、じわじわと人の心を追い詰めていくー。

人と比べること自体は、必ずしも悪いことではないと、山口さんは言います。

山口達也さん
「あの人は素敵だな、優秀だな、見習いたいな、と自分に足りないものを知ることで、人は勉強し、向上心につながる。問題なのは、その比較が『うらやみ』に変わるとき」

「なんで自分はだめなんだろう」

山口さんが特に強調したのが「うらやみ」という感覚でした。

山口達也さん
「『なんであいつばっかりうまくいくんだよ。なんでだよ』って。それが“恨み”に似た感覚になり、やがて自分を恨むようになる。『なんで自分はだめなんだろう』『なんでここにいるんだろう』『なんで生きてるんだろう』って、そこまで追い詰めるんです」

山口さん自身、仕事が順調で周囲から評価されていた時期にも、「なんで俺がこの仕事をやっているんだろう」「もっと自分より合う人がいるのに」と内心では自分を否定し続けていたといいます。

「かわいそうだから褒めてくれる」

この「低すぎる自己肯定感」が、生きづらさの核にありました。

山口達也さん
「人に褒められれば褒められるほど、『この人は俺に嘘をついているんだ』と勝手に思っていた。『かわいそうだからなんとなく褒めてくれてるんだ』『仕事が少なそうだから仕事を入れてくれているんだ』と。自分が決めればいいことを、逆のほうに走らせていたんです」

孤独になりたくて独り飲みを始めたわけではないー。

それでも「人と会うと自分がだめな人間だと思ってしまうから」という感覚が、山口さんを自然と、孤立へと向かわせたのです。

依存からの回復に向け、歩みを進める山口さんは「アルコール依存症と共に生きる」と掲げます。そこには、強い覚悟が込められています。
(5回目【「変えられるのは未来と自分」依存症“服”と言わない理由「死ぬまでアルコール依存症と共に生きる」覚悟】へ続く)