協会最大規模の訓練センターが広島に

2027年、広島の街で「盲導犬」を見る機会が増えるかもしれません。広島市南区比治山本町に2027年4月、公益財団法人日本盲導犬協会の訓練センターが開設されます。

日本盲導犬協会は、西日本の基幹訓練施設と位置付け、年間およそ40頭の盲導犬を育成していく考えです。訓練センターが「街中」にできることで、より実戦的に訓練ができる期待があります。

ただその一方で、飲食店や施設での「盲導犬受け入れ拒否」は、今なお解消されない深刻な課題です。新しい訓練センターの誕生を機に、広島がより優しく、誰もが自由に歩ける街になるために、私たちはどう盲導犬と接すればいいのでしょうか。正しい知識と心構えとは。

“街中”に開設は初の試み

訓練センター建設予定地

訓練センターの建設が予定されているのは、広島市南区比治山本町にある日本通運比治山宿舎跡地。現在は更地となっています。

今年4月に着工、1年後の2027年4月開設を目指していて、西日本初の基幹訓練施設になります。訓練センターを街中に開設するのは協会では初めての試みです。

日本盲導犬協会によりますと、分娩施設が整う静岡県の「富士ハーネス」では年間およそ100頭の子犬が産まれるそうです。そのうち、広島の訓練センターでは年間およそ40頭の訓練犬を育成していきたいとしています。

盲導犬のお仕事はたった3つ!?

日本で活動している盲導犬は、768頭。そのうち、広島県では18頭います(2025年3月末現在)。

一見、まるでカーナビのように「盲導犬がユーザー(飼い主)を目的地まで導いている」と感じる人も少なくないのではないでしょうか。

実はそうではありません。
盲導犬の基本的なお仕事は、たったの3つ。
(1)障害物を避ける
(2)曲がり角の手前で止まり、ユーザーに角を教える
(3)段差の手前で止まり、ユーザーに段があることを教える

スムーズな歩行の裏に「高度なコミュニケーション」

実は、ユーザー自身が目的地までの道順を頭の中に描き、「右」「まっすぐ」と犬に指示を出しているのです。

横断歩道の段差で止まり、そこから、盲導犬が信号の色を判断して歩き出すわけではありません。

ユーザーが車の走る音や、音響信号機の音を聞いて「今、青になったな」と判断して進む指示を出しています。

スムーズな歩行の裏には、人間と犬の高度なコミュニケーションが行われているのです。

私たちができることは

盲導犬ユーザーが安全に歩行するために、私たちができることとは…。
まず、盲導犬に対して【やってはいけないこと】があります。

(1)なでない・触らない(集中力を切らせない)
(2)声をかけない・じっと見つめない(犬にとってプレッシャーになる)
(3)食べ物を見せない・与えない(食べ物を探す癖がつくのを防ぐため)

ただ、日本盲導犬協会の高野秀一常任理事は「ユーザーが困っていそうな時や危険な時は、ぜひ積極的に、**“盲導犬”ではなく“ユーザー”**に声をかけていただきたいです」と話します。

理想は「May I help you」のたすきリレー

2016年、東京の地下鉄で盲導犬と一緒にいた男性がホームから転落し電車にはねられ死亡しました。この事故は、駅のホームドア設置の議論を加速させる大きな転機となりました。

盲導犬がいれば万全ということはありません。

▽危険を感じたら「止まってください」と伝える
▽信号待ちをしていたら「青になりましたよ」と教える
▽道に迷っていたら盲導犬ではなくユーザーに「お手伝いしましょうか?」と声をかける
といったことが推奨されています。

日本盲導犬協会の高野秀一常任理事

「大げさかもしれませんが…」と断ったうえで、高野さんは話します。

「ヨーロッパでは、盲導犬ユーザーはたくさんの人に『May I help you?』と声をかけられるんです。歩けないくらい。“May I help youのたすきリレー”で、目の不自由な人が目的地までたどり着ける。社会が見守る。これが究極の理想です」

ただ、その一方で、盲導犬への理解が深まっていない現状もあります。

進まない盲導犬の受け入れ

盲導犬ユーザーへの全国調査によると2024年、飲食店や交通機関、宿泊施設などで受け入れを拒否された人は、48%にも上ります。

2020年の調査とほぼ横ばいで、受け入れが進んでいない現状が浮き彫りとなっています。

「犬アレルギーや犬嫌いの人など、他の人に迷惑がかかる」
「前例がない」
などの理由で拒否されているといいます。

理解を深めるために 知ってた?盲導犬の法律

「身体障害者補助犬法」では、スーパーやレストランといった不特定多数の人が出入りする民間施設などに、補助犬(盲導犬、聴導犬、介助犬)同伴の受入れを義務付けています。

同時に、ユーザーにも義務が…。

日々のブラッシングやシャンプー、予防接種といった「健康衛生管理の義務」。”排せつ”や”待機”を、ユーザーの指示した場所や時間に応じて行う、「行動管理の義務」。

こういった行政上の認定基準をクリアした盲導犬とユーザーに、認定証(使用者証)が交付され、それを「表示する義務」もユーザーにはあります。

誰もが歩きやすく、受け入れられる街へ

2027年4月、新しい訓練センターが比治山に開設します。盲導犬は、将来のユーザーとの生活を想定し、電車やバスへの乗車、スーパーマーケットでの買い物といった「社会の中での実践的な訓練」を積み重ねます。

街中に拠点が置かれることで、こうした日常的な環境がすぐそばに揃うことになり、育成効率が格段に上がることが期待されています。

また、センターの役割は犬の訓練だけではなく、視覚障がいを持つ人たちへ向けた「情報提供の場」としても重要な機能を果たします。

広島の街そのものが犬たちにとっての教室となり、私たちにとっては、心のバリアフリーを学ぶ場所となるかもしれません。