広島県東広島市にある、アメリカ軍弾薬庫そばの住民の血液から検出された、超高濃度のPFAS(ピーファス)。そこには、行政が水質調査の対象とする2つのPFAS以外に、「3つめのPFAS」が含まれていました。泡消火剤にも含まれるという、その物質は…?

京都府立大学 原田浩二教授
「同じようにやはり注意しないといけないということにはなると思います」
東広島市の住民の血液から超高濃度のPFASが検出された問題については、2月に放送しました。今回は、行政の検査の対象とされていない「3つめのPFAS」について専門家の見解を交え、お伝えしていきます。
血液に含まれていた”第三のPFAS”とは?
まずは、位置関係を確認します。住民が暮らしているのは、東広島市八本松町宗吉地区。一帯の地下水からは2年前、飲用としては全国最悪とも言われる濃度のPFASが検出されています。
そして、この地域のすぐ隣には、在日アメリカ軍の川上弾薬庫があります。アメリカ軍は、おととし、弾薬庫のヘリパッド周辺で、PFASを含む泡消火剤をかつて使っていたことを認めました。

とはいえ、地下水や血液から出たPFASの原因が泡消火剤だ、と特定されたわけではありません。そこで専門家が住民の依頼を受け、初めて現地を訪れ、調査しました。
PFAS研究の第一人者が登場 向かった先は・・・?
PFAS研究の第一人者で、京都府立大学の原田浩二教授です。
Q. 住民の招きで来られた?
京都府立大学 原田浩二教授
「ハイ、そうですね、井戸水の問題というのがあって、それが血液中にもそれ(PFAS)が含まれている、と。それが本当に井戸の水・川の水・土壌、そういったものがどれだけ類似しているかということを、もうちょっと具体的に調べて行った方がいい」
原田教授が向かったのは、東広島市にある在日アメリカ軍川上弾薬庫の周辺です。

弾薬庫に隣接する八本松町宗吉地区では、2025年、住民13人中12人の血液から、アメリカの指標を超えるPFASが検出されました。最も高い人では、指標の117倍という超高濃度でした。

そのPFASを種類ごとに見ると…PFOS(ピーフォス)とPFHxS(ピーエフヘクスエス)という物質が非常に多いことがわかります。
原田教授は、この「PFHxS(ピーエフヘクスエス)」が鍵となるとみています。
読み方さえややこしい! PFHxS(ピーエフヘクスエス)って・・・?
1万種類以上あると言われる有機フッ素化合物=PFAS(ピーファス)のうち「PFOS(ピーフォス)」と「PFOA(ピーフォア)」については、発がん性などが指摘されています。
日本では河川や地下水の指針値を、1Lあたり合わせて50ngとしています。
一方、「3つめのPFAS」、PFHxS(正式名称:「ペルフルオロヘキサンスルホン酸」、通称:「ピーエフヘクスエス」)については、指針値が設けられておらず、行政も調査していません。しかし─。

京都府立大学 原田浩二教授
「やはりそのPFOSとPFHxSというのは非常に構造的にも非常に類似していると。また毒性もですね、かなり似たものがあるだろうと考えられています。そういった点で、PFOSとPFHxS、ほぼ同じように取り扱うべきじゃないのかという考え方があるんですね」
PFHxS(ピーエフヘクスエス)も、PFOSやPFOAと同様に、製造や輸入が国内外で禁止されています。さらに欧米では、水質規制も進んでいます。
血液中のPFHxS(ピーエフヘクスエス)はどこからやってきたのか?
アメリカ軍は、35年前から19年間にわたって、PFOSを含む泡消火剤を弾薬庫のヘリパッド周辺で、訓練などで使用してきたと2024年9月に認めました。
「PFHxS(ピーエフヘクスエス)も含まれていたか」というRCCの質問には、今のところ回答はありません。
しかし、アメリカ軍の基地でかつて使用されてきた泡消火剤には、PFOSと並んでPFHxS(ピーエフヘクスエス)が含まれることが知られています。
PFAS汚染が発覚した2024年から、東広島市は地域の水質調査を続けています。
河川では、弾薬庫の敷地から水がしみ出す場所でPFASの値が最も高く、指針値の42~148倍の間で増減を繰り返しています。

実はこれは、ほとんどがPFOSの値です。そして東広島市はPFHxS(ピーエフヘクスエス)については全く調べていません。
行政がやらないのであれば・・・住民と専門家が追う3つめのPFAS
京都府立大学 原田浩二教授
「これがさっきの排水路の…水が染み出してますね」

原田教授は、まずこのポイントで水を採取しました。
京都府立大学 原田浩二教授
「今までの他の地域の事例とかを見ると、泡消火剤だって言うんだったら、主にはPFOSとPFHxS、この辺りがかなり大きく占めるところになると思うので。おそらく検出されるとは思いますね。ちょっとそれを、それをまずは確認したいなと思います」
今回の調査では、泡消火剤に特徴的なPFOSとPFHxS(ピーエフヘクスエス)が、河川や地下水に含まれているかを確認します。

この地域では、33年前まで水道管が引かれておらず、それ以前に建てられた家を中心に、多くの家庭で井戸水が使われてきました。地下水や湧き水は美味しいと評判で、遠くから汲みに来る人もいるほどだったそうです。米を炊くときに、この水で炊くと全然味が違ったと、誇らしげに話してくれる人もいます。
その井戸水からは、2024年以降、1Lあたり15000ngなど、指針値を大幅に超えるPFASが検出されています。しかしこの値にも、PFHxS(ピーエフヘクスエス)は含まれていません。
専門家を頼った住民の思いとは─
京都府立大学 原田浩二教授
「井戸水だからやっぱりあったかいですね」
原田教授は、この日、井戸や川や池など10カ所で採水しました。

住民
「なんかこの地域のために一肌脱いでいただいたような、大変我々としてもなんか元気が出ます」
住民は、この調査の結果、さらに深刻なPFAS汚染が判明するかもしれないと覚悟しています。
住民
「やっぱりわかった方がいいですね、やっぱり物事は。やっぱり数値で訴えんと、世の中が動いてもらえんです」
一番身近な行政の反応は?
東広島市の今後の調査項目に、3つめのPFAS=PFHxS(ピーエフヘクスエス)も追加するかどうか、尋ねました。
東広島市 高垣広徳市長
「今のところ、その調査項目の中に入っておりません。国からも示されてない。従って、調査の対象にする予定は現時点ではございません」

他の自治体で調査した例はあるものの、東広島市は国が決めた項目のみを調べる、といいます。
東広島市 高垣広徳市長
「我々とすると、災害と同じような対応ずっとしてきました。我々がこれまでした対応というのは決して不適切でもないし、できる範囲では十分な…。できる範囲のことはやらしていただいていると」
ニワトリが先か卵が先か。「予防原則」はどこへ?
PFHxS(ピーエフヘクスエス)について、日本では、2024年2月から第一種特定化学物質に指定されて、製造や輸入が禁止されました。しかし、まだ指針値などが設けられていないために、水質検査の項目にはありません。
環境省に確認したところ、指針値が設けられていない理由は主に、毒性評価が定まらないこと、浄水中の存在量が不明であることでした。
一方、東広島市を始め多くの自治体では、「指針値が設けられていないから調査しない」としています。
つまり、存在量がわからないから指針値がなく、指針値がないから存在量がわからない、ということになります。
そんな中、千葉県鎌ケ谷市では、2024年4~5月に地域の河川や地下水から高濃度のPFASが検出されたことを受けて、その年の12月に希望する住民の血液濃度の検査に補助を出しています。

そして住民の血液から高い値のPFHxS(ピーエフヘクスエス)が検出されたことを受けて、「試験的な調査」として井戸の所有者の承諾を得て、2025年7月、PFHxS(ピーエフヘクスエス)の調査を実施しました。
国の指針値がない中で、危険性などの判断はできないけれども、少なくとも血中と同じ物質が井戸水に存在することは確認できた、ということです。
なお、鎌ケ谷市では、PFAS汚染の原因は特定できないものの、地域に隣接する自衛隊の基地では、定期的に調査が続けられていて、PFAS除去装置が2025年秋から稼働しています。
東広島市で実施された原田教授の水質検査の結果は、4月には判明するということです。
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