広島県庄原市で作られているチーズが、去年、「ワールド・チーズ・アワード2025」という世界最大のコンテストで、「スーパー・ゴールド」を受賞しました。地域の人と歴史が生んだといっても過言ではない、この特産品の生産現場を、取材しました。

北海道と見まがうようなポプラ並木が続くここは、庄原市七塚原高原。明治時代(1900年)に、日本で初めて国営の種牛牧場が設立された場所です。品種改良した牛を北海道をはじめ全国各地に送って酪農の礎を作った、とされています。
広島県立総合技術研究所 畜産技術センター河野幸雄センター長
「おそらく日本でもこの場所が一番早くチーズ作った場所だろうと思うんですね。その地で、そういう賞が取れたって、すごいことだと思いますね。わくわくしますね、ホントに」
午前5時。チーズ工房の前に止まったトラックには、ミルクのタンクが積まれています。
Q.いつもこの時間に取りに行かれて?
敷信村農吉 チーズ工房 積賀一輝リーダー
「そうです、そうです、毎朝5時10分過ぎぐらいにローリー回ってくるんで、そこで取りに行ってます」
朝5時から始まるチーズ作り
まだ暗いうちに搬入するのは、近所の牧場で絞られたミルクです。「チーズ工房乳ぃーずの物語。」での作業は、毎朝、かなり早くから始まります。
敷信村農吉 チーズ工房 国利知史さん
「鮮度が落ちてもいけないので、ミルクの。持って帰ったらすぐ作業する。保管しておいて作ることもできなくはないと思うんですけど、ま、やっぱりこう、新鮮なミルクを使いたいっていうのがあるんで」

この日、国利さんが手がけていたのは、去年、栄えある賞を受け取った、「雪子」。前日に酵素や酵母を混ぜてヨーグルト状になったミルクを、穴の空いた容器に移していきます。
「雪子」は、白カビ系でも青カビ系でもなくソフトタイプと呼ばれる種類のチーズ。新鮮なミルクを酵母の力で1週間熟成させて、完成します。
敷信村農吉 チーズ工房 国利知史さん
「今回の雪子ってチーズがすごいこう繊細というか、湿度のコントロールだったりとか、すごい手間をかけてるチーズなんで」
実はこれまでにも多々受賞していますが…
庄原市山内町出身の国利さんは、北海道でチーズ作りを学んだ後、Uターン。地元の野菜を販売する会社に就職して13年前、チーズ部門を立ち上げました。

これまでに、モッツァレラやリコッタなどで数々の賞を受賞していますが、去年の受賞は特別だと言います。
敷信村農吉 チーズ工房 国利知史さん
「今回に関しては世界で最も大きなコンテストで、スーパーゴールドっていうことなので、ちょっと予想以上の結果で、ちょっとびっくりしてます」
「ワールド・チーズ・アワード」での受賞が、どれくらいすごいことなのか…? 審査員としても参加した、チーズのプロに聞いてみました。
チーズ・プロフェショナル協会 坂上あき会長
「いわゆる私たちがイメージするヨーロッパとかアメリカだけではなくって、例えば南米であるとか、アジアであるとか、アフリカとか、そういうところからも多数出品されるという、多様性があるっていうところが、一つ特徴です」
「ワールド・チーズ・アワード」とは ”チーズの総合格闘技”⁈
出品されるのは、世界46か国から5244品。審査員も、40か国以上から。今回は、256人が集まったそうです。
チーズ・プロフェショナル協会 坂上あき会長
「それぞれのバックグラウンドを持って、かつですね、共通の良いチーズとは何かという、そういう評価(軸)を持って審査するというところで、もう世界一かなというふうに思っています」

しかも、このコンテストは、いわばチーズの総合格闘技。5000を超えるチーズが、様々な種類が混在するまま110のテーブルに分けられ、見た目や香り、食感、風味などが審査されます。そして、テーブルごとのナンバー1に「スーパー・ゴールド」の栄誉が与えられるのです。
チーズ・プロフェショナル協会 坂上あき会長
「スーパーゴールドを獲るっていうのは、いろんなチーズがある中で、テーブルでたった一つしか選ばれないわけなので、やはりそれはもう本当に快挙というふうに言っていいと思います」
快挙の要因の一つは、原料。一つの牧場からのミルクに限定することで、個性が出やすくなるそうです。
チーズ・プロフェショナル協会 坂上あき会長
「そのミルクだけで作っていると、いろいろな農場のミルクが集まっていたりするところよりは、特性を活かすっていう意味で有利だったのかなというふうには、思います」
単一牧場のミルクから作るチーズの強み…牧場の反応は?
Q.受賞を聞いてどう思われました?
市川牧場 市川勝敏さん
「すごいなぁとは…。えへへへへ」
世界に羽ばたく「雪子」の原材料は、同じ庄原市内にある市川牧場で育てられているホルスタインのミルクです。

市川牧場 市川勝敏さん
「(国利さん)本人からはね、『やっぱ牛乳がええけぇ』とはよう言われるんじゃけどもね。まぁ…海外まで行ってええ賞獲ったんじゃ、すごいな、いうような、どっちか言うたらちょっと他人事みたいな。ははは」
飼育する牛は、40頭。エサとなる牧草の7割以上を自給しています。誠実なミルクの味と同じように、世界的な受賞にもどこまでも謙虚な姿勢です。
市川牧場 市川勝敏さん
「昔からこの搾り方・使い方(育て方)をしよるから、それのどこがいいのかと言われると難しいなと。まぁそれがね、ええチーズに繋がっとる言うならそれは飼い方が間違ってないということなので、それはええことだなあと」
世界に認められたチーズ でもあくまでも地元に愛されたい
「ワールド・チーズ・アワード」の受賞以来、「雪子」の注文数は前の年の1.7倍になりました。作り手たちは、期待を裏切りたくないと、目の前の仕事に向き合っています。
敷信村農吉 チーズ工房 国利知史さん
「世界に認めてもらいたいっていう思いも、まあまあなくはないですけど、それよりは本当にこう地元の人に愛されるような商品にしていきたいので普段の食卓の中に、ちょっとこう、贅沢な味が添えられてるっていう感じで使ってもらえればいいかなと思います」

作りたての「雪子」にはほんのり酸味があります。熟成が進むとなめらかで酵母の香りがたちます。生産者・国利さんの好みとしては、賞味期限のちょっと手前のタイミング、作られて3週間を過ぎたころがお勧めだそうです。
「雪子」は1個¥900。購入は、産直ネットショップ農吉でのほか、広島市内では、三越とエキエに入っているアバンセでも可能です。
なお、「ワールド・チーズ・アワード2025」では、日本から出品されたチーズでは「雪子」のほかに養沢ヤギ牧場(東京都あきる野市)の「養沢ヤギリーズ」も、「スーパーゴールド」を受賞しています。
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