きょうの特集は学生食堂=「学食」についてです。「学食」といえば食材費の高騰などで全国的に厳しい経営を迫られています。そんな中、広島市立の高校で「学食」を復活させた男性がいます。その挑戦を追いました。

広島市立基町高校の学食運営 山谷将之さん(38)
「はい、大盛り」

広島市立基町高校の学食。昼休みのチャイムとともに、大勢の生徒たちがやってきます。

2年生
「温かいご飯が食べれるのが一番嬉しいです」
1年生
「すごく助かって。親が特に助かってて。おいしいし」

廃止されていたこの学食で再び、温かい食事を届けるのは山谷将之さんです。

広島市立基町高校の学食運営 山谷将之さん(38)
「食堂自体が初めてっていうところもあって、戸惑うことはかなり多くあったんですけど」

基町高校の学食はかつて、広島市の業者「ホーユー」が運営していました。しかし、コロナ禍などで売り上げが落ち込んだことから「ホーユー」は2023年3月に撤退。学食は廃止されました。

「ホーユー」はその半年後に経営破綻。契約していた高校では突然、食事の提供が止まり、学食業界の経営の難しさを浮き彫りにしました。

基町高校の学食を復活させた山谷さん。配達専門の弁当店を経営しています。学食に行く前に毎朝、弁当作りです。調理や盛り付けはすべて1人でこなし、この日は120個を作ってスーパーや幼稚園に届けました。

幼いころから料理が得意で、大学で学んだのは食物栄養学。学食の復活は、自ら学校に提案しました。

広島市立基町高校の学食運営・弁当店経営 山谷将之さん(38)
「食堂は最初の頃から元々興味はあって。調べていく中で基町高校は業者が入っていないということがわかったので。食堂ってもし入れたらレパートリー増えるのかなって単純に思って」

山谷さんの挑戦は、キッチンカーから始まりました。

学食が廃止されて2年が過ぎた2025年4月。生徒たちは、自宅からの弁当やコンビニで買ってくることに慣れていたため、まずはキッチンカーを借りて試験的に「日替わりランチ」を販売することにしました。

山谷将之さん
「きょうは初めてなのでカレーなんですけど、明日からはボロネーゼとかトマトチキン丼とか。高校生でもおしゃれな見た目のものを食べてほしいなと。あとは野菜が入ったものを食べてほしい」

初日のメニューは「ポークカレー」。生徒たちが集まってきました。

カフェのように彩り豊かなメニューを1日1種類、「日替わり」で提供します。価格は、生徒が利用しやすいよう400円に抑えました。

3年生
「一瞬で来ました。Q楽しみにしてた?はい」
2年生
「温かいご飯が食べられる。すごい楽しみにしてたので」
3年生
「カレーの匂いがずっと授業中もしてたから」

1か月もたつと、生徒たちの長い列が出来ていました。

山谷将之さん
「大盛り?みんな大盛り?OK!」

販売数は、目標の「1日平均80食」を達成しました。こだわったのは味と、生徒を飽きさせない「日替わりメニュー」。台湾料理の「ルーローハン」や岡山名物「デミカツ丼」も登場。一番人気は「汁なし担々麺」で、多いときで150食売れる看板メニューとなりました。

キッチンカーで手応えをつかんだ山谷さん。学食復活についてPTAや学校とも協議しました。

広島市立基町高校PTA 今村真一 会長
「食堂を閉鎖したという経緯もある中で、売上げが1日平均で1万2~3000円ぐらいまで落ち込むという可能性があるとしたら、それはちょっと困りますよね?当然」
山谷将之さん
「3万円を切ることはないんじゃないかなと思っているんですが…」

高騰する食材費や人件費を考えると、目指す売り上げは1日平均3万5000円。キッチンカーと同じくらい販売できれば、続けていけます。

厨房設備を点検する今村PTA会長と山谷さん
「これもまあこのまま使えはするよね?」
「掃除でいけますか?」「掃除でいける」

厨房設備の整備にかかった費用はPTAが、水道・光熱費は広島市が負担します。しかし、食材費などへの補助は一切ありません。

さらに短い昼休みの中、学食は教室から離れているという不利な条件も抱えています。それでも「メニューの工夫で乗り越えられる」と学食の復活に踏み切りました。

山谷将之さん
「今まで通り、うどんとラーメンとカレーとか普通のことをやっても毎日は来ないんじゃないのかなと。多分、生徒さんからも普通のものは求められてないです」

オープンの日。教室から離れた学食に、生徒たちが次々とやってきました。メニューは、定食・麺・どんぶりの3種類に増やし、それぞれ「日替わり」。スタッフの拘束時間が延びたため、人件費はかさみますが、価格は全て400円に据え置きました。

3年生
「めっちゃおいしいです。あったかいです」
同じ部活の1~3年生
「最高です、最高。学食で食べるの夢でした。青春の1ページじゃないですか!」

仕入れ値が上がり続ける中、山谷さんは、目標の3万5000円を掲げて学食の運営を続けています。

厳しい業界だからこそPTAやOB、民間企業も巻き込んで学食を盛り上げる新たな方法はないか考え続けています。

広島市立基町高校の学食運営 山谷将之さん(38)
「大学とかではトレー広告だとか、自動車学校とかのスポンサーブースだとかポスターである程度、学食の利益を上げているというのも、東京とか大阪とか特に良く聞くので。高校の食堂だけ10年前20年前30年前のままというのもおかしいと思うので」

復活した学食を新年度からも守りたいー。手探りの歩みが続きます。

◇  ◇  ◇

広島県内の県立・市立高校で現在、学食がある学校は全90校のうち30校。全国的にも学食の運営は厳しく、県内でもここ3年間に2校の公立高校で業者が撤退し学食が廃止された。

民間企業との連携は公立高校でもできるのか。学校やPTAは何ができるのか。またOB、地域、行政にできることは何か。それぞれの学校をとりまく皆で一緒に考えて、持続可能な学食にしていけたらいい。