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吉田幸noみみコミ | RCCラジオ | 2025/11/02/日 16:30-16:45
内容:「木村伊兵衛 写真に生きる」特別展の見どころ解説!
出演:広島県立美術館 学芸員 山下寿水さん


写真界の巨匠、木村伊兵衛の回顧展開催!その魅力に迫る。
広島県立美術館でこの冬、昭和を代表する写真家、木村伊兵衛の没後50年を記念した回顧展が開かれます。その魅力について、学芸員の山下寿水さんにお話を伺います。
山下さんどうぞよろしくお願いいたします。
よろしくお願いします。
今や写真、カメラというと、スマホですとかデジカメが普及して「1億総カメラマン」なんていうふうに言われますけれども、この木村伊兵衛さんが活躍した時代はそんなことはない、とても貴重だった時代ですよね。
ですねはい、彼が本格的に写真を撮り始めたのは1920年代ですので今から100年ぐらい前になるんですけれども、今と違ってスマホは当然ありませんし、カメラもまだ一般には普及していない本当に貴重なものでございました。
とりわけ木村伊兵衛が愛用したカメラにドイツ製のライカというものがありますけれども、これなんか戦前には「1台あれば家が1軒建てられる」というふうに言われるぐらいに高級なものだったということで、現在とはちょっと違う時代だったということを感じていただけるんじゃないかと思います。

ライカを構える木村伊兵衛、1965
はい。木村伊兵衛、ご存知ない方もいらっしゃると思うんですが、どんな方だったのでしょうか?
ライカ使いの名手とも言われますし、スナップ写真の名主とも言われていたんですけれども、このライカというのが非常に機動性に優れた小型カメラだったとところがポイントで、このライカを愛用して何気ない日常のシーン、そういったものを写真に残し続けたというところが木村伊兵衛の特徴だと言えます。

那覇の市場、本通り、沖縄、1936
ここに図録を持ってきてくださったんですけれども、見せていただいてますと本当にカメラが小型だったからなのか、本当に子供たちが自然な笑顔をしていたり、大人だったらもっと構えて、かしこまって写真を撮っていたのが当時の写真じゃないかと思うんですけども、そうではなくてふわっと自然な表情で写っているシーンがいくつも見られます。
それこそが本当に木村伊兵衛の真骨頂とも言えるところで、特に小型カメラ以前ですと大判のカメラで非常に大きなものになりますので、自然に取るというのは難しく、小型カメラといえどもなかなかやっぱりカメラを構えると人は身構えてしまうので、ここまでさりげない本当に日常の自然な姿を捉えるというのは、非常にその技術の高さというものを見ることができるんじゃないかと思います。

秋田おばこ、大曲、秋田、1953
なるほど。この木村伊兵衛という方は、日本写真家協会の初代会長を務められたり、写真界の芥川賞とも言われている木村伊兵衛賞というのがその名前が冠されていたりするなど写真界の巨匠でいらっしゃるわけですよね。
そうですね。木村伊兵衛賞の名前なんかは、今日著名な写真家を数多く輩出しておりますので、ある程度その非常に重要な賞として、比較的知られているんじゃないかと思うんですけれども、木村伊兵衛の写真自体、必ずしも派手で作家性というものが強く出ているというわけではないので、今日ではなかなかその実像というものが知られていないんじゃないかなともちょっと思います。ただ写真というのはちょっと先ほどの話にもありました通り本当にすごい職人芸というところが見られる見事な写真ばかりということが言えるんじゃないかと思います。
当時の写真自体の歴史を簡単にご紹介していただけたらと思います。
はい。今年は写真というものが誕生してそもそも200年という記念碑的な年にも当たるんですけれども、さらに100年経って、木村伊兵衛が活躍する前にはピクトリアリズムという芸術運動というものが流行していました。
これ何かというと、絵画のような写真というものを目指した運動です。
写真よりも絵画の方が偉いというふうに思われていた時代に、ある種絵画の真似みたいなことを写真でやり始めたわけなんですけれども、特にヨーロッパから写真機ならではのその特性というものを意識したような新しい写真というものが、今から100年ぐらい前に生まれて、こうした海外での動向なんかにも影響を受けつつ、木村伊兵衛、そしてその同世代の日本の作家たちというのは写真でしかできない表現を追求して新しい写真というものが日本でも1930年代にかけて登場したということが言えます。

ミラボー橋、パリ、フランス、1955
その写真を見せていただいてますと、確かにこんなふうに切り取られているんだなと。絵画だと自分で作家さんが好きに書くことができますね。でも写真だと現実がそこにあるわけで、よくこういう切り取られ方をしているんだなっていうような、レンズを覗いた向こうの風景の画角が素晴らしいんじゃないかと思うんですよね。
おっしゃる通り、今のでもう全て語っていただいたところはあるんですけれども。
木村伊兵衛さんは、小型のカメラをライカを常に持ち歩いておられて、いつの間にか撮影されていて、被写体が撮られたことに気がつかないっていうこともあったというふうにも言われています。やっぱりカメラの存在って、革新的だったんですか。
そうですね。大型から小型になったということもありますし、あとは大判のカメラというのはやっぱり1回撮影するごとにフィルムを変えてまた改めて撮影しなければいけないというような。
それはドラマで見たことありますよね。
はい、手間のかかる写真機でしたので、そうなると余計やっぱり撮影者の方も映される被写体の方もその1回の撮影というものにすごく気がいってしまうというようなところあったかと思うんです。
魂を込めるっていうような。このワンショットに、1回のシャッターにみたいな。
はい、そうなるとねやっぱりその自然に振る舞うということがなかなかできないということがあったかと思うんですけども、さりげなく撮影することができるそのライカなどの小型カメラによって、とりわけその人物撮影という点では非常にその革新的な動きというものが起こったということが言えるかと思います。
ズバリ、山下さんが思われる木村伊兵衛というカメラマンのすごさってどんなところにあるんでしょうか?
結構そこがですね、なかなか難しいところでございまして、木村伊兵衛さんの写真というのはちょっと先ほど派手ではないということを言いましたけれども、そのすごさがわかりづらいっていうことが結構50年ぐらい前からも言われていて。「写真を見る訓練を受けてないと木村伊兵衛さんの写真というのはちょっとわからない」というような対談みたいなものもカメラ雑誌なんかにも載っていたりするんですけれども、本当に眺めていく中で確かに派手ではないんですけれども、ただなかなかいざ写真を撮ろうと思ってもこんなふうには取れないという、人々の自然な様子であるとか、今にも動き出しそうな生き生きとした感じ、本当に他の写真家と比べても非常にすごいところではないかと思います。

本郷森川町、東京、1953
そして今回の没後50年を振り返る回顧展の見どころを教えてください。
はい、約165点ほどの作品を展示しますけれども、そこでぜひ木村伊兵衛のすごさを感じてもらえればとも思いますし、またこの昭和という木村伊兵衛が生きた時代、その空気感というものを見事に写真では捉えられているので、その過去を振り返るというか、その時代を眺めるという意味でも、面白く展覧会ご覧いただけるんじゃないかと思っております。
とっておきのエピソードなんかもあるんですって?
そうですね。例えば昭和を代表する名優に高峰秀子さんという方もいらっしゃいますけれども、木村伊兵衛は彼女の肖像写真撮るときにですね、「何もしなくていいです。もうそこに自然にいてくれればいいです。」というふうに言ってですね。
ちょっとタイミングを見計らって、二、三枚だけ撮影したっていう話なんですけれども、それで出来上がった写真をいざ見てみると、この高峰さん自身も驚くほど絶世の美女が写っていたっていうふうに述べられていて、感動を得たというようなお話が残っていまして、もちろん女優ですから写真も散々撮られ慣れているはずなんですけれども、それほどまでに感動を覚えたというのはちょっと興味深いエピソードではないかと思います。
ぜひご覧いただけたらと思います。また、あの広島で回顧展が行われるということで、戦後すぐの広島を写した作品もあるそうですね。
戦後の広島を紹介する外国人向けの本「リビング広島」というものが販売されるんですけれども、そこに掲載する写真の撮影のためにですね、1947年の夏にかけて広島を訪れています。RCC近くの広島城の跡地の辺りでもですね、撮影をされておりますし、当館に隣接する縮景園でも写真を何枚も撮られています。また宮島の方なんかにも取材に行かれております。

若い人、広島、1947
当時の写真も展示されますか。
今回はできるだけ広島で撮った写真なんかもプリントされたものでなくても少しちょっとスライドショーみたいな形式で、ぜひともちょっとご紹介できればというふうに考えて今準備をしています。
ありがとうございます。今日は12月13日から広島県立美術館で開催されます木村伊兵衛写真に生きる展について広島県立美術館学芸員の山下寿水さんにお話を伺いました。山下さんありがとうございました。
こちらこそありがとうございました。
【チケットプレゼント】ペア5組 応募締切 11/9(日)
ご希望の方は、こちらからご応募下さい
『木村伊兵衛 写真に生きる』
●会期:2025年 12/13(土) ~ 2026年 2/8(日) 12/13(土)は10時開館
※休館日:年末年始(12/25-1/1)
●開館時間:午前9時~午後5時(金曜日は午後7時まで)※入場は閉館30分前
●場所:広島県立美術館
●入館料:一般:1,500円、高大生:1,000円、小中生:700円
※前売り・20名以上の団体は200円引き
●お問い合わせ:広島県立美術館 広島市中区上織町2-22
TEL:(082)221-6246
詳しくは公式HP
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