「30万9000人」。昨年度1年間に修学旅行で広島を訪れた子どもの数です。全国の子どもの3人に1人が、小・中・高校のどこかで広島を訪れている計算になるそうです。(広島平和文化センター調べ)
この広島への修学旅行、西日本の学校では定着していますが、実は関東では交通費や移動時間の面から京都・奈良が定番で、広島を訪れる子どもは2割にとどまっています。

こうした中、まずは現場の先生たちに広島での「平和学習」の意義を知ってもらい修学旅行につなげてもらおうと、関東の教員を対象にした研修会が開かれました。

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広島駅に進入する被爆電車ー。乗り込んだのは東京や埼玉など関東地方から訪れた公立中学校の教員たちです。

車内アナウンス
「広島市の繁華街を通る八丁堀、紙屋町を通って袋町までご案内いたします」

2日間にわたる広島での「平和学習」の研修会。開いたのは原爆資料館を運営する広島平和文化センターです。

関東からの修学旅行の割合が対象児童・生徒のわずか2割にとどまるなか、教員に「平和学習」の意義を知ってもらい、修学旅行で広島を訪れてもらおうと企画しました。

今回の研修には30の中学校から去年の3倍にあたる61人の教員が参加しました。

車内アナウンス
「皆様が今ご乗車いただいている652号は、宇品という場所で被爆しました」

教員たちはさっそく座席に座れる人数などを質問していました。

電車を降りて向かったのは袋町小学校の平和資料館ー。校舎の壁には原爆投下の混乱の中、肉親の安否を訪ねた「伝言」が残されています。

広島市立袋町小学校 教員(平和教育担当)
「読みやすくするために区切りの線を引いたと言われています。ではバツの線は何かと言ったら、もうこのメッセージとしては役目を果たした、もう相手に伝わったということを表しています」

「伝言」の前に立った教員たち。原爆をより身近かに感じていました。

東京の中学校教員
「実際にこうやって目の当たりにすると、より実感がわくと言いますか…。やはり私たちがまず知って、子どもたちに伝えていく必要があると思いました」
東京の中学校教員
「昨年10月に修学旅行で広島に来ました。それまでは京都奈良です。生徒たちに平和を考える機会を得て欲しいと」

平和学習をめぐってはことし「政治的中立性」を問われる出来事がありました。

沖縄・辺野古沖での平和学習中の転覆事故ー。文部科学省は5月、この教育内容が「政治的中立性を定めた教育基本法に反する」との見解を示しました。

修学旅行生を案内するヒロシマ平和ガイドクラブB.P.B. 座間味正彦 代表
「一瞬にして街がなくなるんですよ」

翌月には、広島でもガイド団体に対して、政治的思想が偏ったガイドはいないか、県外の3つの学校から、不安の声が寄せられていたといいます。

ヒロシマ平和ガイドクラブB.P.B.座間味正彦 代表
「ガイドの中にそういう政治的な含みを持ったガイドはいらっしゃいますかというのがズバリの質問です。僕たちは信念をもって純粋に広島が伝えていかなければならない平和を、我々が学んだことを素直に教えている」

被爆という歴史的事実を学び、核兵器のない世界を目指す広島の平和学習。平和文化センターはこれまで通り、「教育の中立性」を保っていくと説明しました。

広島平和文化センター 谷 史郎 副理事長
「被爆体験という体験、事実に基づいた発信をしておりますので、当然そういう意味では何か主義主張があるものではありません」

東京の中学校校長
「文科省の見解は直接的には平和学習に影響してないと思ってます、心理的には沖縄と広島が一緒に考えられてしまう危険性はあると思うので、丁寧に説明していくことはこれからも子供にも保護者にも必要だと思う」
神奈川の中学校教員
「私は社会科の教員なので関心はある。どういうふうに政治的中立を保って学習していけばいいのか、どうしたらいいのかと思う部分はあった」

教員たちの疑問に応え、広島での学びを後押ししたい。その“カギ”となるのが2年後に原爆資料館に開設される「子ども向け展示」です。

広島平和文化センター 谷 史郎 副理事長
「ある意味、我が国で初めてと言っていいと思いますけれども、本格的な「平和学習」に特化した大規模な展示ということになりますので」

▽同世代の子どもの遺品や日記を展示し、「自分ごと」としてとらえられるようにするほか、▽心理的な影響にも配慮し、一部の悲惨な展示は子ども自身が見る・見ないを判断する「選択展示」を導入。▽さらに学校での事前学習をサポートする資料も作成し、より深い学びへとつなげる考えです。

広島平和文化センター 谷史郎 副理事長
「教師の方々が知りたいのは、広島で何を学べるかと、その時にどういう風に学校で教えればいいのか。もっと合理的な効果の高い平和学習ができるということになれば、もっともっと関東から修学旅行に来ていただける可能性があると思っています」

平和公園を案内するヒロシマ・ピース・ボランティア
「『安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから』は、世界中の全ての人々に戦争という過ちを二度と繰り返させないと誓う言葉です」

2日目は、ピース・ボランティアの案内で慰霊碑を巡ったあと、原爆資料館へー。教員たちは子どもたちが展示物をみてどう感じるかを想像しながら、真剣に見学していました。

群馬の中学校教員
「どういう事前学習をすればショックだけで終わらないのかというくらい、ショッキングな内容だった。単純に『はい、次お昼ね』『はい次は何をして…』といっても子どもたちが切り替えられるかというくらいの内容の重さ。観光地とは違うというか…」

被爆者から体験を聞く機会が減っていく中、教員たちは被爆者の証言を聞き、その声を直接、受け止めました。

東京の中学校教員
「平和学習に興味はあっても具体的に何をやったらいいか分からないという悩みの部分が共有できたり。あとはすでに実践された学校さんのお話聞くことができたりして、それはとても参考になりました」
東京の中学校教員
「平和ってどういうことなのか1人1人に考えてもらいたいと思う。自分ごととしてどういうことなんだろうと」

研修で得た学びをそれぞれの学校に持ち帰り、どう生かしていくのかー。教員たちの模索が続きます。

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(スタジオ)
高松綾香キャスター
今回、参加した先生たちの意見で多かったのは、▽「事前の学習の仕方が分からない」▽「平和学習のノウハウがない」原爆資料館を見学した先生の中には「選択展示で子ども自身が選べるようになるのはありがたい」という意見もありました。

修学旅行を誘致する最大の目的は「広島の平和学習を全国に広げていくこと」。被爆体験を受け継ぎ、平和を作り出す、平和の担い手になってほしいという思いからです。広島平和文化センターでは12月にも川崎市で教員対象の研修会を開催することにしています。関東からも多くの子どもたちが広島を訪れ、深い学びが得られたらいいですね。