豊かな自然と清流に魅せられ、兵庫県から縁もゆかりもない広島へと移住した男性がいます。地域おこし協力隊として川の魅力を伝えながら2人の息子を育てる暮らしと「好きなこと」を求める情熱に迫りました。

安芸太田町にある「三段峡」は、国の特別名勝にも指定されている景勝地です。夏場でも水温が20度以下という清流で、訪れた人たちは、川遊びをして満喫しています。
ツアーガイドを務める井上嵩裕さん(31)は、三段峡の魅力を一身に受け止め、この地に吸い寄せられた1人でした。
【移住を決断】 幻の魚「ゴギ」との出会い
三段峡ビジターセンターの水槽を愛おしそうに見つめる井上さん。泳いでいるのは、イワナの亜種である「ゴギ」です。
中国山地にしか生息しない珍しい魚に惹かれて、「ゴギが好きということが、この町に来た大きな理由の一つです」と笑顔で話します。
大学時代から海の生きものを研究し、釣りマニアの間では、専門誌から密着取材を受けるほどの腕前を持つ井上さん。大学卒業後は大手アウトドアメーカーに就職し、最初の勤務地が広島でした。

転勤で一度は広島を離れたものの、自然と近い暮らしがしたいとの強い思いで、3年前に安芸太田町への移住を決意したのです。
【特別名勝】三段峡のシャワークライミング挑戦
地域おこし協力隊として活動する井上さんの主な仕事の一つが、三段峡での「シャワークライミング」のガイドです。
一般的な渓谷よりも谷が深く、日照時間が短いためコケが豊かな三段峡。水深が最深で8メートルにも達するエリアを、ツアー客は泳ぎながら上流を目指します。

井上さんは「三段峡を開拓した昔の人たちは、道がない時代に川を上がっていったはず。その大変さと凄さを、泳ぐことで体感できます」と魅力を語ります。
途中で岩場から飛び込んだり、名物である「姉妹滝」の水しぶきを浴びたりしながら進む冒険は、大人も子どもも笑顔が絶えません。
【広島県1位】過疎が進むまちで見つけた暮らし
一方で、安芸太田町が直面している現実は決していいものばかりではありません。
町が誕生した2004年に8784人いた人口は、2026年7月末には5110人まで減少。高齢化53.46%は広島県内で1位です。
井上さんは「畑作業などをしているわけではないので、普段の買い物でスーパーに行く物理的な距離や時間は少し課題だと感じます」とまち暮らしのリアルを口にします。

それでも、5年前に結婚した妻の典子さんと、長男の湧翔くん(4)・次男の楠琉(1)くんとの4人暮らしは、代えがたい充実感に満ちています。
「自分自身が幼少期に自然と戯れた記憶がずっと残っている。子どもたちにも同じような体験をさせてあげたい」
【若者へ】「好き」に行動を起こす生き方
地域おこし協力隊としての任期満了を迎えるにあたり、今後も安芸太田町で暮らす道を選んだ井上さん。進路に悩む若者や、新しい一歩を踏み出したい人に向けて、温かいメッセージを送ります。

「僕は本当に『好き』を求めてここに来ました。魚や釣り、自然が好きなら、それを真剣に追いかけてみる。好きなものに対してしっかり行動を起こすことが大切だと思います」
大好きな三段峡の清流とともに生きる井上さん。その真っ直ぐな背中は、過疎の町に新しい風と希望を吹き込んでいます。

































































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