実業団最高峰のSTリーグで15連覇を果たす男子ソフトテニス界の絶対王者・NTT西日本。広島を拠点とする同部から、9月に開幕する愛知・名古屋アジア競技大会の日本代表へ3選手が選出されました。高卒で入社し、業務と練習を両立させながら9年越しの夢舞台へ挑む広岡宙(ひろおか・そら)選手(27)の歩みと、彼を支える温かい職場の姿に迫ります。

実業団最高峰で15連覇を誇る「絶対王者」

広島市に拠点を置く「NTT西日本ソフトテニス部」は、実業団最高峰のSTリーグで15連覇という偉業を達成している男子ソフトテニス界の絶対王者です。

2026年9月に愛知・名古屋で開催されるアジア競技大会の日本代表には同部から3人の選手が選出されました。いずれも前回大会で日本を優勝に導いた主力メンバーです。

主将を務める内本隆文選手(28)は、「今回は主将として出場するので、チームをしっかり牽引していい方向に導けたら」と意気込みを語ります。

日本代表の主将を務める内本隆文

また、前回大会3冠の上松俊貴選手(28)も「2大会連続の全種別優勝は僕にとって夢であり、成し遂げられる可能性はすごくある」と力強く前を見据えます。

2023年アジア大会で3冠の上松俊貴

9年越しの夢舞台へ挑む広岡宙の原点

代表3名の中でも、今回の日本開催大会にひときわ強い思いを抱いているのが広岡宙選手(27)です。

広岡選手が今大会を目標に掲げたのは、なんと9年前のことでした。入社直後の2018年、インドネシアで開催されたアジア競技大会を現地で見学したことが大きな転機となります。

同い年で女子代表として活躍していた林田リコ選手の試合を目の当たりにし、衝撃を受けました。

「僕も日本代表として世界で戦ってみたい」

その強い情熱が芽生えたことが、日本開催の名古屋大会を目指す原動力となったのです。

高校から実業団へ…異例の選択と苦闘の4年間

高校卒業後、大学を経ずに名門・NTT西日本へ進むという「高卒ルーキー」という選択は異例のことでした。

しかし、入社当初は順風満帆とはいきませんでした。最初の4年間は思うような成績が残せず、葛藤の日々が続きます。

広岡選手自身も、当時を次のように振り返ります。

「最初の4年間は正直きつかったです。国内大会でもそんなに成績を残せていたわけではなくて。でも最終決断をしたのは自分なので、先輩のプレーを見て盗んだり真似したりしながらやってきました」

当時の印象について、NTT西日本ソフトテニス部前監督の堀晃大さんは「泣き虫ですぐしょげるし、はぶてる(ふてくされる)こともあった」と明かします。

一方で、「負けず嫌いなところは人一倍強い。そこが結果に結びつき、大きく成長した」と評価します。苦難を乗り越えた広岡選手は、2023年のアジア大会で日本の4大会ぶり金メダル獲得に貢献するまでに飛躍を遂げました。

朝8時半に出社、12時まで勤務してからコートへ

アスリートとして第一線で活躍する一方で、広岡選手は「会社員」としての日常も大切にしています。

取材日のスケジュールも、競技と仕事を両立させる多忙なものでした。

  • 08:30:出社
  • 08:30〜12:00:仕事
  • 12:00〜13:00:昼休憩
  • 13:00〜18:00:練習

18歳で入社した当時、職場では「息子と同じ歳」とかわいがられ、業務を一から教えてもらえる恵まれた環境だったと言います。

職場の同僚からは「ヒーローであり、アイドル的な存在」、上司からも「目標を努力で実現させる姿は本当に尊敬する」とすっかり溶け込んでいます。

「結果で恩返ししたい」支えてくれた職場への思い

勝った時だけでなく、負けた時にも温かい声をかけてくれる職場の支えが、広岡選手の背中を押し続けています。時には社員たちが現地まで応援に駆けつけることもあるほどです。

大会開幕まで残り1か月となった今、広岡選手は強い決意を口にします。

「職場では見られない“広岡宙”を見てほしい。会社のシンボルチームとしてテニスを仕事にさせてもらっているので、結果を出して会社に恩返しがしたいです」

かつて夢見た憧れの舞台で、多くの期待を背負った広岡選手の躍動が始まろうとしています。

入社1年目(2018年)の広岡宙