飲用としては全国最悪レベルの有機フッ素化合物=PFAS(ピーファス)が検出された地域の水から、行政が調査しない「第3のPFAS」が見つかりました。
これは、泡消火剤にも住民の血液にも、含まれている成分です。

さらに、PFAS汚染は、水だけに留まらないこともわかってきました。
京都府立大学 原田浩二教授
「特にPFOSは、土壌自体に吸着しやすい性質がありますので、濃度としては高くなりやすいという関係があります」
「普天間飛行場で流出事故あった後に、敷地内で調査した結果はあるんですが、今回見られた濃度というのも、おおよそそれに近い汚染が生じているような状況だと言えますね」
いま、東広島市で何が起きているのか…。水と土の調査の結果から考えます。
泡消火剤にも血液にも含まれる「第3のPFAS」とは?
広島県東広島市八本松町宗吉地区の住民の血液から高濃度のPFASが検出された件について、新たな展開です。この度の検査で、血液と共通するある成分が、地域の地下水などからも確認されました。
その成分とは、PFHxS(ピーエフヘクスエス)。国の検査項目にはまだ含まれていない、いわば「第3のPFAS」とも言える物質です。

さらにこのエリアからは、水よりもはるかに高い値のPFASが、土壌からも検出されました。
いったい何が起こっているのか取材しました。
PFAS研究の第一人者の一人、原田浩二教授が東広島を訪れたのは、2026年3月。在日アメリカ軍・川上弾薬庫そばを中心に、湧き水や井戸水を採取していきました。
京都府立大学 原田浩二教授
「今までの他の地域の事例とかを見ると、(汚染原因が)泡消火剤だって言うんだったら、主にはPFOS(ピーフォス)とPFHxS、この辺りがかなり大きく占めるところになると思うので」

アメリカ軍基地で一般的に使用されてきた泡消火剤は、主成分の一つがPFOSで、PFHxSも含まれるということが海外での調査からわかっています。
川上弾薬庫のヘリパッド周辺では、かつてPFOSを含む泡消火剤を使用していたことを、アメリカ軍は認めています。
住民の血液に「第3のPFAS」はどれくらい含まれるのか?
ヘリパッドから下流に位置する東広島市八本松町宗吉地区では、33年前まで上水が整備されていなかったために多くの家庭で、井戸水が使われてきました。
住民12人の血液からは、2025年、アメリカの指標を超えるPFASが検出されました。最も高い人では、指標の117倍にあたります。
血液中のPFAS濃度は、一般的に7種類のPFASの合計値で示されます。成分ごとに見てみると、PFOSとPFHxSが非常に多いことがわかりました。

1万種類以上あると言われるPFAS(ピーファス)のうち、「PFOS(ピーフォス)」と「PFOA(ピーフォア)」は、発がん性などが指摘されています。
日本でも「要監視項目」とされ、1Lあたり合わせて50ng(ナノグラム)という指針値などが設けられ、水質検査が実施されています。
一方、PFHxS(ピーエフヘクスエス)ついては、PFOSと同程度の健康影響が指摘され、国際的には規制が強化されています。日本でもPFOS・PFOAと同様に製造・輸入・使用が禁止されているものの、まだ「要監視項目」とは認められていません。そのため、指針値などは設定されておらず、検査されません。
東広島市八本松町宗吉では、地下水から、指針値の300倍(15,000ng/L)という飲用水として全国最悪レベルの値が検出されましたが、そこにもPFHxSはカウントされていませんでした。
行政が検査しない「第3のPFAS」を調査!
今回の調査では、井戸水など21地点の水を採取し、47種類のPFASについて分析。
全ての地点で
▼PFOSが最も多く
▼次いでPFHxSが相当量含まれる
ことが判明しました。

行政は、住民の血液中のPFASと地域の水との因果関係は、「明らかではない」としてきましたが、原田教授は…。
京都府立大学 原田浩二教授
「それ(井戸水)を飲んだことによってですね、住民の体内に非常に高い濃度のPFASが蓄積して、今もそれが残っているということが言えるわけです」
さらに「井戸水の汚染は一時的なものではなく、長期間生じていたと予想される」と指摘します。
京都府立大学 原田浩二教授
「それだけの水の汚染があったということから、やはり今後の行政の方でも、何らかの健康上のフォローアップ、こういったものをしていく必要があるかと思います」
また、血液中の方が、地下水よりもPFHxSの割合が高くなっているのは、PFHxSが、生物学的半減期が長い=体内に溜まりやすい性質をもっているからだそうです。
PFAS汚染は水だけでなく土壌にも…
住民
「今、家庭菜園でね、作ってますからね。で、私らはそれを食べてますからね。ええ、大丈夫かな、ということですよね」
住民
「野菜は自分たちで作って食べるっていうのが今までの習慣だったんで、でこの状態になって、なんかすごい、怖い、食べるかどうかっていうのが」
問題は、水だけに留まりません。
原田教授は、現地調査の際に、住民の求めを受けて土壌も採取していました。
京都府立大学 原田浩二教授
「元々使われてる水とか含まれてるPFASなんかは、そのままやはりまず最初に土壌に吸着してそれが残っていくだろうということがあるので、そういったものがまたここに濃縮、蓄積していくということはありうると思います」

調査した7地点の土のうち最も高かったのは、PFHxSを含めると47,899ng/kg、PFOSとPFOAだけでも、44,200ng/kgが検出されました。
この数値をどう受け止めればいいのか?
土壌におけるPFASの濃度に関して、日本ではリスク評価の基準は設けられていません。
左側のグラフは6年前、沖縄の普天間基地で泡消火剤の流出事故が起きた際に、事故の約1か月後に実施された土壌調査の結果です。国の分析によると、14カ所の土壌から、PFOSとPFOAが合わせて900~30,000ng/kg検出されました。

東広島市では、場所によってはそれ以上に汚染しているということになります。
また、今回調査した中で土壌の濃度が最も高い地点で比べると、土は水の7倍になっています。これは、PFOSが土壌に吸着しやすいために起きる現象だということです。
ここからさらに懸念されるのが、「汚染の拡大」です。
京都府立大学 原田浩二教授
「このPFOSなどは、土壌中を徐々に広がっていくということがありますので、大元の発生源自体が残っていれば、その周辺の地下水へさらに浸透が続いていくだろうと。そこからさらに拡大する可能性もあります」
「汚染の拡大」を防ぐためにできることは?
この結果について、東広島市は…。
東広島市生活衛生課 西田幸雄課長
「率直に私もこれを見て、本当に、土壌のPFASがですね、これほど高濃度であったっていうのは正直驚いております。この結果を基に(環境調査)検討委員会の方に議題とさせていただいて、我々の委員会の専門家の意見を聞きながら考えていきたいと」
東広島市は、環境調査検討委員会を31日に開催し、今後の対応を検討する、ということです。
問題になっているのは、東広島市八本松町宗吉地区です。すぐそばの在日アメリカ軍川上弾薬庫では、かつてPFASを含む泡消火剤が使われました。「因果関係は不明」とされていますが、河川や地下水、そして血液からも高濃度のPFASが検出されています。

この地域の水から今回、泡消火剤や血液と共通する「第3のPFAS」=PFHxSが確認された、ということです。さらに土壌からも、水より高い濃度でPFASが検出されました。
PFAS研究の専門家、京都府立大学の原田浩二教授の指摘から、主な3点をご紹介します。
専門家の指摘と住民が求めることは…?
▼環境について
「PFASは沈みながら広がる」
「もし発生源を今すぐ除去したとしても、汚染はしばらく続く」
⇒発生源の除去が早急に必要
▼健康影響について
「汚染は一時的でなく長期間続いていた可能性」
⇒行政は、PFASの指針値超過の発覚時だけに限定せず、
(対象を広げて)過去に摂取したかどうかに基づいて、
血液中濃度も考慮しながら健康管理をすべき
▼農産物への影響について
「土からの移行は農産物によって幅があり、限定的な可能性もある」
「家庭菜園も土壌の汚染度が高い場合は注意」
⇒風評被害を防ぐためにも行政が調査すべき

住民は、主に以下の3つを求めています。
・今後の水質検査でPFHxSを調べること
・血中濃度検査の公費負担
そしてなにより・これ以上の汚染を止めること
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