三原・竹原市民による産廃問題を考える会 岡田和樹共同代表
「やはりこういう泡水が立って流れていきます。これでも搬入停止はしていただけない状況で、地元住民としては非常に大きな不安を抱えています」

広島県三原市にある産廃処分場をめぐって、住民が県を相手取った訴訟が続く中、住民と地元議員らは、直接、国にも現状を訴えています。
そんな中、現地ではまた、基準値を超えた鉛の検出が判明しました。

裁判で争われているのは、そもそも建設許可の判断が正しかったのかどうか、です。14日に広島高裁で判決が言い渡されます。
実は、この処分場では2025年秋以降、基準値を超える鉛が地下水から何度も見つかっています。ただ、監督権のある広島県にも、事業者に対して「指導することはできない」ということです。それはどうしてでしょうか?取材しました。
水の問題に揺れる集落の年明け
この日、三原市本郷町南方の日名内上町内会では、蕎麦打ち会が開かれました。
住民
「おいしい!最高!やっぱり地元で作ったやつじゃけね、よけい美味しい」

地元産の蕎麦、柚子、そして自然薯を食べる、新年会を兼ねた恒例行事です。
日名内上営農組合 竹之内昇組合長
「うん、おいしいですね」
「また1年頑張れる。まだまだ日名内をね、捨てられないですね」
住民
「なるべく抵抗せにゃいけまぁ」
「もうここは一致団結じゃね」
蕎麦の栽培期間は、8月からの2か月間。全世帯が協力し合って育てるそうです。
Q.米に比べたら育てる期間は短い?
日名内上営農組合 竹之内昇組合長
「ちょっと短い。そしてあまり水を使わないから。上からの水(雨)だけで蕎麦は育つから」
この地域は、ここ数年、水に翻弄されています。
設置許可の是非が問われる処分場 ふもとでは離農者も
日名内上町内会に隣接する本郷最終処分場をめぐっては、近隣住民12人が、「環境影響調査が不十分だった」などとして、県に設置許可処分の取り消しを求める裁判が続いています。

この処分場では、4年前に埋め立てが始まって以降、基準値を超える水質汚染が度々検出され、事業者に対する行政指導が繰り返されてきました。
水質汚染への不安から、これまでに9軒の農家がコメの作付けを減らしたり、完全にやめたりしています。
しかも、基準値を超過していた値は、これだけではありません。
2025年9月に、処分場の事業者が実施した調査で、地下水の鉛が基準値の2.6倍の0.026mg/L検出されました。
25年秋に検出された鉛への対応は…?
広島県として追加調査した結果、さらに高濃度の0.034mg/Lが検出されましたが、県は、近隣住民への報告に留めました。また、「自然由来と考えられるため、法令違反ではない」と結論づけて、事業者に指導も行っていません。
県が地下水の鉛を「自然由来」とする理由は、主に2つあります。1つは、「処分場の浸透水からは鉛が検出されていないこと」。もう1つが、「埋め立て開始前から何度も検出されていること」です。

県は、事業者が実施した検査データを元に、処分場の建設許可が申請される前からこの場所では基準値を超える鉛が繰り返し検出されていた、としています。その値は、高い時で基準値の10倍を超えています。
現在の法律では、地下水から基準値を超える鉛が出ていても、建設を不許可にする理由にはなりません。
日名内上町内会 飯田純子さん
「そりゃあそこで出たら、だんだんこっちの方にも、影響してくると思う。井戸水が飲めんようになったら、大変なことですよ」
近隣住民に広がる不安 隣接自治体の動き
地下水から基準値超えの鉛が見つかったことを受けて、2025年12月、処分場周辺の、井戸水利用者らは水質検査を要望し、三原市が実施しました。結果は「不検出」でしたが、不安は払拭されません。
日名内上営農組合 竹之内昇組合長
「全然ね、向こうの言われるデータは、私らはやっぱし信用しづらいよね。自然由来、自然由来って、山ほじくってから出たら、自然由来とか言われても、私らは、産廃場が原因だろうと思いますけどね」
三原市に隣接する竹原市では、今後、処分場の拡張で水道水源が汚染されることが懸念されています。
条例制定を求める会 世話人 森山洋子さん
「竹原市の資源は水です。水道水のほとんどが地下水という自治体は(全国でも多くは)ありません」

竹原市では「水道水源保護条例の制定」を求める署名が、2月までに3356人分提出されました。その数は、人口の15%にあたります。
条例制定を公約に掲げてこの年新たに就任した平井明道市長は、議会で「可能な限り速やかな制定を目指し、取り組みを進める」と表明。それまでの竹原市の方針を 転換しました。
県にも陳情 そして国にも…
三原・竹原市民による産廃問題を考える会 三島弘敬共同代表
「鉛が実際に出てますから、地下水としてやがては(周辺も)汚染されるかもしれない」
3月、三原市・竹原市の住民は、鉛汚染の原因が自然由来だとする科学的な根拠などを求めて、広島県の横田美香知事に宛てて陳情しました。
三原・竹原市民による産廃問題を考える会 三島弘敬共同代表
「鉛汚染がこの地域で広まっている、確実に継続している、そういう問題は放置するべきではないと」

この陳情に対し県は後日、「公表可能な範囲のデータはすでに実施した説明会で提供済であり、その他の情報は、事業活動情報等に該当することから、回答を差し控える」と回答しました。
本郷最終処分場の現状は、国にも直接伝えられています。
4月27日には、環境省との意見交換会が開催され、住民や地元議員らが出席しました。住民の代表者は、これまでに記録した映像などを示しつつ、処分場の近隣で何が起きているのか説明しました。
住民だけでなく党派を超えた議員らも口々に…
三原・竹原市民による産廃問題を考える会 岡田和樹共同代表
「周りは水田なんですが、昨年は9軒の農家が、川に水があっても汚染されているので、水稲の稲作ができないということで、離農者も出始めている。実被害、風評被害ともに広がっている状況にあります」
「調整池排水はこのように泡立って濁っていると。これは広島県が良しとしている状況になります」

環境省 高橋亮介 産廃規制企画官
「廃棄物処理法上は、県にはかなり厳しい権限がありますので、この規定を使って県にしっかりと指導していただくことだと思います」
「三原市にある産廃処分場の監督権限は、あくまでも広島県にある」と環境省の担当者は繰り返します。
しかし、党派を超えて参加した議員らからも、次々と声が上がりました。
三原市議会 正田洋一議長
「県にもですね、議会から意見書を出したり要望書を出したりですね、何度も何度もですね、お願いをしているんですが、県の対応は0ではありませんが鈍いし、住民の問題を解決するところまでは動いていただけないという現状があるんです」
「法的な問題いろいろあるとは思うんですけど、結局、住んでる住民はもうずっとこのまま苦しんでるんですね。なので、この苦しみをなんとか解決していただくためにですね、お力をお貸しいただきたいというのが今の思いです」
環境省 高橋亮介 産廃規制企画官
「必要な手段が与えられてもそれを執行しないと適切にはなりませんので、そこは県の方でもしっかり、我々としてもですね、県が必要があれば我々も助言しながら、(県には)しっかり対応していただきたいと思っております」
さらに住民らは、今の法律では、安定型最終処分場からの有害物質の流出を防げないとして、法改正も求めました。
「法律の限界ならば改正を」の声が上がる中 またも鉛が基準値超過
三原・竹原市民による産廃問題を考える会 岡田和樹共同代表
「法律の中で言われている、汚染物質を食い止めるというその法律の原則自体が形骸化してしまっている、それが現状ではありますので、ぜひ、その法律の改正だったりとか、あとはその規制の強化、国として今後どうするかを考えていただきたいなという風に思っているところです」
時を同じくして再び、地下水から鉛の基準値超過があったことが、事業者のHPに掲載されました。

今度は、調査が行われたのは前年の12月で、場所はこれから埋め立てが始まる竹原側です。
新しく判明したのは0.087mg/Lと基準値の8.7倍ですが、県は今回も、「自然由来と判断した」、「濃度変動の範囲に含まれる」としています。
なお、この「濃度変動」がどこまでの範囲なのかについては、県は、「不開示とするべき事業活動情報に該当する」として、説明していません。
設置許可が下りて6年。本郷最終処分場のこれまでの埋め立て量は、10万tを超えています。
この本郷最終処分場をめぐる注目の裁判は、5月14日に広島高裁で判決があります。
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