1年以上前から、指針値を超えるPFASが検出され続けている広島県福山市加茂町。深い山間の斜面を流れる水はなぜか白く泡立ち、検出された値は、市内で最悪の濃度を示していました。
PFAS問題を考える福山連絡会 坪山和聖副代表
「元を断たなくちゃダメなわけで」
京都大学 小泉昭夫名誉教授
「発生源を特定することが大事なんですよ。でもねそれはね、犯人ではないんですよ、本当の」
全国各地で次々確認されている有機フッ素化合物=PFAS(ピーファス)。発がん性など健康への影響が指摘されている、自然界には存在しないはずの物質ですが、今回は広島県福山市での事例です。
山が連なる地域で、なぜか指針値超過が相次ぐ現状
福山市では、2025年2月の市の公表以降、国の調査結果も合わせると加茂川上流にあたる深山川の6地点と谷尻川の1地点の計7地点で、指針値を超える値が何度も確認されています。中でも一番高かったのは、深山川上流の580ng/Lという値です。
しかし、福山市はいずれも発生源を特定していません。

そんな中、今回市民団体が調査したのは、谷尻川の上流です。これまでに行政が調査したことがない地点を独自に調べたところ、福山市内で最悪の数値が検出されました。その現場を取材しました。
向かったのは、福山市加茂町の谷尻川。人が住む場所から車で10分ほどで、小さな橋が見えてきました。
最上流ではありませんが、市民団体「PFAS問題を考える福山連絡会」は、まずはこの場所で採水することを決めました。
PFAS問題を考える福山連絡会 坪山和聖副代表
「深山というか、キレイな山の渓谷の水だから、本当に自然そのもの。しかも下流には(かつて)酒造会社があって、酒の源水になってたくらいおいしい水だったんですよ」

3月の調査では、この水のPFASは、PFOSとPFOAの合計で1.4ng/L。他のPFASも多くが「検出されず」という結果でした。
PFAS問題を考える福山連絡会 竹本健一さん
「つまりここは産廃の影響を受けてないんですよね。これから行くと産廃がありますから。その違いを調べようということですね」
市民団体が「調べたいこと」とは?
福山市加茂町で、指針値を超えるPFASが検出されたと最初に公表されたのは、去年2月。それ以降、深山川と谷尻川の7地点で指針値超過が繰り返し確認されています。
周辺には、産業廃棄物の安定型最終処分場が数多くあることから、地域住民の間では、関連を疑う声が上がっています。
しかし、福山市は、発生源の特定に向けた調査を行っておらず、因果関係は明らかになっていません。
1カ所目の採水地点から山道を500mほど進んだところが、2カ所目の採水地点でした。
PFAS問題を考える福山連絡会 竹本健一さん
「第二地点です。ここの水を採水してます、これを」
一見、山から湧き出ているように見える水ですが、なぜか泡だっていました。
PFAS問題を考える福山連絡会 竹本健一さん
「この上で、その排水が出てるんですね」

斜面の下からは見えませんが、この場所は安定型最終処分場の調整池のすぐ下側にあたります。
検出された値に処分場運営事業者の見解は…
ここから検出されたPFASは1Lあたり697.7ng。指針値のおよそ14倍と、これまで福山市内で確認された中で、最悪の値でした。

PFAS問題を考える福山連絡会 高木武志代表
「ある意味ここでね、本当に証明できたという風に思うんですよね。やっぱりこれをなんとかしないと」
PFAS問題を考える福山連絡会 坪山和聖副代表)
「(福山市は)『皆さんの口に入るのは浄水場の水ですから、大丈夫』というけど、でもそれ、元を断たなくちゃダメなわけで。しかもそれをずっと飲まされてる者にとっては、それが体に蓄積するっていう、その不安にどう応えてくれるのか」
上流で処分場を運営する事業者も、この水に調整池からの排水が含まれていることを認めています。
その上でこの事業者は、「最終処分場が、PFASの排出源となり得ると考えている。国の研究結果をふまえた対処方法などがわかれば、迅速に対応したい」としています。
PFAS問題を長年研究する専門家は、産廃処分場がPFASの発生源となることは珍しくないと指摘します。
なぜ産廃処分場からPFASが流出するのか?
京都大学 小泉昭夫名誉教授
「(産廃処分場がPFAS発生源になることは)全然珍しくなくて、日本全国にかなりいろんなとこにありますね」
「じゃあどっから(PFASが)来てるのかっていうことなんですが、建築廃材で撥水処理っていうのをやってるわけですよね。そういうところでPFASが使われているので、容易に690(ng/L)ぐらいはなると思いますね」
過去に防水加工などでPFASが使われた建築資材がゴミとなり、遮水シートのない安定型の最終処分場に埋め立てられれば、そこから環境中に流れ出ても不思議ではありません。

小泉教授は、
▼PFASが使われた製品の廃棄に関する現在の規制が非常に緩い
というだけでなく、
▼規制前に埋め立てられたゴミからのPFASの流出は防ぎようがない、
と指摘します。
京都大学 小泉昭夫名誉教授
「そうすると、一体誰が責任取るんだっていうことになるわけですよね」

Q.産廃事業者さんたちからすると困っていらっしゃる?
「めちゃくちゃ困ってますよ」
「だから、産廃業者さんも、ある意味で被害者なんですよ」
「国は、50ng/Lで決めてハイ終わりって言ってるわけでしょ。そこの部分がね、やっぱり非常に無責任だと思いますよ」
「産廃処分場も被害者」。だとしてもやるべきことは…
その上で小泉名誉教授は、全国で実際に、高濃度のPFAS汚染が見つかっている地域の事例を念頭に、発生源の特定は急ぐべきだ、と言います。
京都大学 小泉昭夫名誉教授
「土壌汚染が起こっちゃって、今度は農産物に移行するんですよ。福山市は農産物ないですか」
PFAS問題を考える福山連絡会は、福山市に対し、発生源特定のための調査やPFAS濃度の軽減措置などを求めています。

PFAS問題を考える福山連絡会 メンバー
「今はなんともないって思ってらっしゃるかもわからないけど、何か起きてからなんか対応するのではなくって」
「これから生きる子どもたちが、毎日毎日汚染された水を摂ったとしたら、何か起こるんじゃないかってすごく危機感を感じています」
「市民の暮らしを守るいう視点に立って、積極的に関わってほしいな、いう希望です」
「発生源の特定は必要ない」という行政の方針の理由は…?
福山市加茂町周辺には、今回の場所以外にも、指針値を超過している地点がいくつもあって、産業廃棄物の安定型最終処分場も数多くあります。

しかし、今のところ、いずれの場所でも、因果関係は明らかではありません。
福山市では、井戸水や沢の水の調査、46カ所全てで指針値未満だったことから、▼「飲用に問題ない」
▼国の「対応の手引き」によれば「発生源の特定に向けた調査も必要ない」
という考えです。
ただ、今回の情報と要望を受けて、
▼今後については現在検討中
としています

PFASに関するルールを見てみますと、廃処分場の排水には、PFASの規制はありません。また、現在、PFASが使用されたゴミを廃棄する際の規制は、非常に緩い状態です。さらに、すでに埋め立てられた分からの流出は防ぐことができません。つまり、処分場が発生源だとしても責任者ではない、と京都大学の小泉昭夫名誉教授は指摘します。
とはいえ、「発生源の特定は早急に必要」だと言います。発生源でPFASを除去できれば、土壌・農産物への移行を防ぐことが可能になるからです。
これからの行政の動きに注目したいと思います。
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