体の不自由な動物のために、オーダーメイドの車いすを製作する大学生たちがいます。「もう一度、元気に歩くサポートをしたい」動物と飼い主に寄り添う学生たちの挑戦を追いました。

飼い主・古賀木綿子さん
「がんばれ!がんばれ!…立ち上がれないか…」
猫のかりんくんは1歳の頃、感染症にかかり、体にマヒが残っています。
飼い主・古賀木綿子さん
「前あし・後ろあしが突っ張った状態になってしまい、歩行が困難になった」
そんなかりんくんに手を差し伸べたのは、大学生でした。
学生が自ら作った「ネコ用の車いす」

広島国際大学 徳山珠季さん
Q、手に持っているものは?
「ネコの車いす。自分が作った」
人間の義足や車いすなどを作る「義肢装具士」を目指す徳山さんが、その技術を応用。半年かけて作り上げた一台です。
飼い主・古賀木綿子さん
「未来を感じてうれしい」
広島国際大学 徳山珠季さん
「喜んでいる姿を見るのが一番うれしい。ごはん目がけて走ってほしい」
学生は全国から「動物義肢装具研究会」
広島国際大学の「動物義肢装具研究会」。動物病院や動物園の依頼を受け、車いすなどを製作しています。
ペットの長寿化が進む中で、治療やリハビリのニーズは多様化しています。
講師の山田哲生さんは、足に障害があるキリンの装具開発も手がけるエキスパート。山田さんに憧れて、全国から学生が集まっています。

広島国際大学 三宅奉文さん(広島県出身)
「動物が立って生活できて、走れるようになっているのが、とにかくすごい」
広島国際大学 上間真奈美さん(沖縄県出身)
「沖縄県内に義肢装具士になれる学校がなかった」
広島国際大学 平井晴菜さん(岐阜県出身)
「いとこが車いすを使っていて、義肢装具士という職業に興味を持った」
「動物が幸せに生涯を終えられた」
前田奏咲さんは農業高校出身です。世話をしていた馬の死が、義肢装具士を目指すきっかけになったといいます。
広島国際大学 前田奏咲さん(愛知県出身)
「体を痛めて、乗れなくなった。そのまま筋力低下して、どんどん悪くなっていって、結局立てなくて死んでしまった。動物が幸せに生涯を終えられたらいい。その手伝いをしたい」
そんなメンバーたちに、新たな依頼が届きました。犬の車いす製作。この4人にとっては、初めての挑戦です。

チワワのキラちゃん 去年夏から歩行困難に…

飼い主・山村純子さん
「よろしくお願いします。すごく人見知りで乱暴なところもあるので心配…」
飼い主の山村さんと、チワワのキラちゃんです。
学生たち
「やっほー。怖いよね…目線合わせない全然…」
キラちゃんは関節のリウマチで体が不自由になり、25年夏から歩くのが難しくなりました。
「もう1度散歩をさせてあげたい」
学生たち
「キラちゃんの好きなことは?」
飼い主・山村純子さん
「もともと散歩が大好きな子だったので、外に出る回数が減ってストレスを抱えていると思う。精神的に不安定な部分が、最近は見え隠れしている」
学生たちはキラちゃんを固定して、足や胴回りの長さなどを計測していきます。
学生たち
「24センチ…」

「車いすを使って大好きな散歩をさせてあげたい」それが、飼い主の山村さんの願いです。
松岡動物病院 藤野千賀子獣医師
「サポーターをつけても、イヌやネコは噛んだり引っ張ったりして、外してしまう。トライしてみればいい。この積み重ねが、もっといいものを生み出す。すごく期待している」
キラちゃんのための車いす製作スタート「作っては改良、作っては改良」

キラちゃんのための車いす製作が始まりました。計測データをもとに3Dプリンターで部品を作り、金属の加工は手作業で進めていきます。
広島国際大学 上間真奈美さん
「まずは大きさ。ぴったりではダメ」
広島国際大学 前田奏咲さん
「飼い主が入れやすいようにする」
初めての車いす製作。1つ1つの作業に苦戦します。
広島国際大学 三宅奉文さん
「あまり削ると強度が落ちそう」
ネジ穴を1つ合わせるのも大変な作業です。
広島国際大学 平井晴菜さん
「ちょっとしたズレでかみ合わない。そこの調節が難しい」
広島国際大学 三宅奉文さん
「そのたわみのせいで強度が下がって、使用中に折れてケガをしてしまう可能性もある」
広島国際大学 山田哲生講師
「全部がオリジナルパーツなので、どうしても不具合は生じてしまう。作っては改良、作っては改良」
トライアンドエラーくり返し、手探りで正解を探す日々

キラちゃんにも何度も協力してもらいながら、学生たちは試行錯誤を重ねます。
(車いすを装着されて、ジタバタ嫌がるキラちゃん)
広島国際大学 山田哲生講師
「逃げ出そうとする…」
広島国際大学 平井晴菜さん
「たぶん苦しいと思う」
広島国際大学 上間真奈美さん
「キラちゃんが、上半身を支えられる状態ではないので改善が必要。金属部分とハーネスを、前にもっていこうと思う」

25年12月から始まった車いす製作。みんなで作業に没頭しました。
広島国際大学 上間真奈美さん(沖縄県出身)
Q、年末年始は沖縄に帰った?
「帰っていない」
Q、年始の広島は雪が積もったがどうだった?
「人生初の雪。1人で外に出て写真を撮りまくった(笑)」
広島国際大学 前田奏咲さん(愛知県出身)
「彼女は『見て見て!きょうの朝、雪が積もってたんだ~』と言って、はしゃいでいた」
季節は冬から、春になりました。
車いす完成 キラちゃんのサポートはここから始まる

広島国際大学 上間真奈美さん
「今からフィッティングで緊張している」
2月下旬―。ついに車いすが完成しました。ハーネスの位置などをミリ単位で調整し、いよいよ装着です。
(車いすを装着されて足を動かすキラちゃん)
必死に足を動かすキラちゃんに、飼い主も声をかけます。
飼い主・山村光明さん・純子さん
「おいで!」
しかしこの日、自力で歩く姿を見ることはできませんでした。
飼い主の山村さんは、車いすでのリハビリを続けたいと話します。
それでも見えてきた少しの光

飼い主・山村純子さん
「まだ慣れてないので、実際に歩くことはできなかったが、散歩が元々好きな子なので、その光が少し見えたような気がして楽しみ。心から感謝。ありがとうございます」
広島国際大学 山田哲生講師
「トライアンドエラーをくり返しながら、課題をクリアする。その達成感は次につながる。こうした機会をいただけたことに感謝してほしい」
学生たちのキラちゃんへのサポートは、始まったばかりです。
広島国際大学 上間真奈美さん
「これから慣れて実際に装着するにあたって、改善点も見えてくると思うので、まだ今後も向き合っていきたい」
広島国際大学 前田奏咲さん
「病気などで会話が困難な人もいる。コミュニケーションの取り方を、動物から学ぶことだってある。今後に生かしていきたい」
自宅で車いす歩行の練習を重ねるキラちゃん

キラちゃんは自宅で車いすで歩く練習を続けていますが、まだ歩くことはできていません。
広島国際大学の山田哲生講師によりますと、車いすに慣れて歩き始めるのに半年ほどかかる動物もいるということです。
警戒心が強い性格の場合、車いすが歩行をサポートしてくれるものだと自覚するのに時間がかかります。個体差があるため、飼い主の継続的なサポートが必要です。
「義肢装具士」の人材不足 社会背景は?

ペットの長寿化が進み、治療やリハビリなど動物医療のニーズが高まり多様化しています。
一方で、義肢装具士の知識や技術を動物にまで生かしきれていない実状があります。「義肢装具士」になるには、大学や専門学校で専門知識を学び、技術を身につける必要があります。しかし、定員割れなどを理由に全国で募集廃止が相次いでいます。
国家資格として義肢装具士が対象とするのは人間で、動物は含まれていません。
広島国際大学の山田哲生講師は「業界として人材不足が課題となる中で、まずは人間のサポートが最優先になる。そのため体の不自由な動物にまで、十分なサポートが行き届いていない」と話します。
広島国際大学は、こうした状況の中で、動物義肢装具研究会の取り組みは先進的だとしています。これまで治療が難しかった動物の運動機能回復や、生活の質向上につなげたいと考えています。
広島国際大学 動物義肢装具研究会による車いす製作は研究費でまかなうため、依頼者は無償で譲り受けることができます。(学生の卒業研究などに協力を求められる場合があります)
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