3月上旬、春の陽気に包まれた公園。RCCで働く筆者(30代)は、穏やかな休日を過ごしていました。ただその1日の終わりに、まさか救急車で運ばれることになるとは夢にも思っていませんでした。

きっかけは、花粉症の症状を抑えるために飲んだ「家族の常備薬」です。

「用法・用量は守ったはずなのに、なぜ?」

激しい動悸と吐き気に襲われる中、救急隊員に指摘されたのは自分でも驚くほど”盲点”だった事実でした。

穏やかな休日が一変

異変は帰宅後に始まりました。友人家族と公園で遊び、夕方自宅に戻ると、酷いくしゃみと鼻水…。例年、花粉症に悩まされ、かかりつけ医で花粉症の薬を処方してもらっていました。しかし、このときはまだ病院に行けていませんでした。

「市販薬でとてもよく効く薬がある」と友人からの勧めを思い出し、家族の薬箱を探してみると、その薬を発見。過去に夫が他のアレルギー症状のためにドラッグストアで購入し服用していたものでした。

花粉症でも服用される一般的なアレルギー薬で、注意書きや用法用量を読んでも問題なかったため、定められた量を服用しました。

しかし、しばらくすると、穏やかだった休日が一変する事態が起こりました。

服用から30分後…突然体調が急変し

30分後、夕食をとっていたときです。突然、ドキドキと動悸がし始めました。血の気が引き、意識が遠のく感覚や吐き気もあり、トイレに座り込みました。

意識が朦朧としながらも記憶を辿りました。

「体調は悪くなかった。いつもと違うこと…私は何をした…?」

思いついたのは薬しかありません。

病院へ行こうと考えましたが、発症から1時間ほど経ったその頃には、全身が震え歩くことも難しくなっていたため、やむを得なく救急車を呼ぶことに…。

救急車の中で告げられた“盲点”

到着した救急隊員に夫が状況を説明。思い当たる要因として、服用した薬も渡してくれていました。血圧や心拍数を図られながら病院へ運ばれている途中、救急隊員から言われた言葉に、耳を疑いました。

「飲んだお薬ね、使用期限が1年以上切れていましたよ」

“用法”“用量”“使用を控えた方がいい人の一覧”まで確認したものの、“使用期限”は見落としていました。

「症状と直接的な関係は無いかもしれないけど、今後薬を服用する際は必ず気をつけるように」と救急隊員に指導を受けました。

病院へ到着し、血液検査や心電図の検査をしましたが異常無し。2時間ほど点滴を受けて様子を見ていると症状は落ち着き、帰宅することができました。

なぜこれほど激しい反応がでたのか。専門家に話を聞くと「誰にでも起こり得る可能性がある」とのことでした。

原因は薬?誰にでも起こりうるリスクとは

救急搬送にまで至った症状はなぜ起きたのか。広島県薬剤師会の吉田亜賀子常務理事に詳しく聞きました。

「今回のようなケースは誰にでも起こる可能性があります」

吉田常務理事によりますと、薬には症状に効く「主成分(有効成分)」に加え、錠剤を溶けやすくする成分や、甘みを加えて飲みやすくする成分など、様々な成分が含まれています。

広島県薬剤師会の吉田亜賀子常務理事

筆者のケースについては、この成分のうちどれかが体質に合わず、非常に強い反応が出た副作用ではないかと分析しました。

体質の他にも、飲んだ時の体調や、飲み方(例:水で飲んだかジュースで飲んだか、食後に飲んだか空腹時に飲んだか)、飲んだ時の状況(例:他の薬も服用している)なども影響するといいます。

「決して珍しくはない」副作用が出たときの対応は

市販薬によって副作用が出ることは「決して珍しい事ではない」と吉田常務理事は話します。

では、もしも副作用が出たら私たちはどう対応すればいいのでしょうか。

吉田常務理事
「誰か頼れる人と一緒にいるのであれば症状の出方によっては様子を見てもいいかもしれません。ただ、もしも1人でいる時に異変を感じたら救急車を呼ぶことをお勧めします。症状が急に進行して、意識が無くなることもあるかもしれません。例えばタクシーに乗って病院へ向かっている途中に意識が無くなってしまってもいけませんから」

その上で、体質に合わないと分かった薬は、「その後は、服用しないことが重要」と強調します。

「ハチに2回目に刺されると危ないと言われるのと同じように、2回目の方が過剰に反応し、アナフィラキシー(呼吸困難などを引き起こす強いアレルギー反応)が起きる可能性があります」

2人に1人が「期限切れ」を服用している現実

第一三共ヘルスケアが、全国の20~60代の男女500人を対象に行った調査(2025年12月)によりますと、2人に1人(48.2%)が「期限切れの薬を飲んだことがある」と回答しました。

また、薬を常備していると答えた人の2人に1人が、常備薬の見直し(使用期限や効果のなどの確認)をしていないことが分かりました。
※出典:「ルル」常備薬に関する実態調査(第一三共ヘルスケア)

そもそも、薬の使用期限はなぜ定められているのでしょうか。

広島県薬剤師会 吉田常務理事
「薬は空気や光にふれることで、少しずつ成分が分解されていきます。有効成分が分解されて効き目が悪くなってしまうこともあります。さらに、分解されていくうちに有害な物質に変わってしまい、人の身体に悪影響を及ぼしてしまうこともあります」

覚えておきたい使用期限の目安

吉田常務理事は、箱などに記載されている使用期限は、あくまでも「未開封」の状態と指摘します。「開封後」は以下の目安で管理が必要になります。

●瓶入の薬:開封後6か月(空気に触れるため)
●シート個包装:箱に記載されている使用期限まで
●液状の薬:開封後10日前後(糖分が含まれていて菌が繁殖しやすい)
●目薬:1~2か月(沈殿物、変色、においが出たら使用しない)

市販薬はとても身近で便利な存在で、吉田常務理事も「セルフメディケーションに力を入れてもらうことは、非常に良いこと」と話します。

ただ、その効果を最大限、そして安全に発揮してもらうために、覚えておきたいポイントがあります。

▽市販薬を購入する時は薬剤師に相談することが望ましい
▽市販薬を服用するときは必ず説明書を読み、用法用量を守る
▽他の薬と合わせて飲まない
▽お茶やジュースではなく、水かぬるま湯で飲む
▽半年に1回は薬箱の中を見直す

花粉が舞うこの季節を安心して乗り越えるために、今一度、薬との正しい付き合い方を見直してみるといいかもしれません。