広島ドラゴンフライズの司令塔、寺嶋良が帰ってきた。
3月8日、越谷アルファーズとの一戦。
序盤からアグレッシブに相手ディフェンスを切り裂き、自ら得点を奪うだけでなく、正確なキックアウトでチームのオフェンスを加速させた。
終わってみればチーム全員で遂行力を維持し、後半も緩めることなく勝利を掴み取った。
この試合、ファンの目を釘付けにしたのは、第3クォーターに決めた3ポイントシュートだ。
前日まで「3ポイントが入らない」と吐露していた寺嶋だったが、この日は見事に3ポイントを連続で沈め、今季最多の18得点を記録した。
「昨日とは打ち方の感覚が違った。とにかく一旦止まって、ピタッと止まって打つ。動きの勢いを全て一旦ゼロにするイメージで打った」
アップの段階から「真っ直ぐ打つ」ことだけに集中し、フォームを再構築した。
さらに、小寺選手やエバンス選手ら仲間たちが「打たせよう」とスクリーンをかけ、スペースを作ってくれたことが、彼の背中を押した。
前日まで3Pシュートは29本放ち、成功は4本だった。
「ここで1本で終わってしまうと、これまでの苦労が…と思った。何本も決めなきゃいけないという思いだった」
執念で沈めたシュートの数々は、苦しいリハビリ期間を支えたプライドの証明でもあった。
大怪我を経て、コートに戻ってきた寺嶋。
しかし、その足の状態は決して万全ではない。
「膝の状態は、感覚的には60、70%くらい。でも、数字にしたら多分50%くらいしか戻っていないんです」
衝撃的な告白だが、本人の表情に悲壮感はない。
筋力が戻りきっていない分、着地の衝撃をどう逃がすか、どう体を使いこなすかという「感覚の技術」でカバーしている。
その裏には、なりふり構わぬ努力があった。
元横綱・白鵬氏の専属トレーナーの著書を読み込み、現在も月に一度は東京へ治療に通う。
私生活では冬の寒さから膝を守るため、薬局で購入したサポーターを常に着用し、冷えを徹底的に排除した。
さらには、精神的な救いも求めた。
「本当に治らないんじゃないかと不安になった時、奥さんと二人で岡山のお寺へお祓いに行きました」
科学的なアプローチと、神頼み。
その両方を尽くすほど、彼はこのコートに帰ることに懸けていた。
レギュラーシーズンも残り20試合を切り、チームはチャンピオンシップ(CS)進出を追いかける立場にある。
追い込まれた状況下で、寺嶋が最も重要視するのは「核を崩さないこと」だ。
「敗戦があったとしても、自分たちがやろうとしていること自体が崩れずにいられるか。どんな試合になっても、バスケットの核を崩さずにやっていきたい」
朝山HCからも「トーンセットをしてほしい」と託されている。
バイウィークの期間中、5対5の練習で一瞬も引かずにやり合ってきた自負が、今の寺嶋を支えている。
「今のディフェンスへの意識、リバウンドへの執着心をあと19試合続けていきたい」
苦悩を乗り越え、精神的にも一回り大きくなった寺嶋良。
彼の「真っ直ぐな」シュートが描き出す放物線が、広島ドラゴンフライズをさらなる高みへと導くことを期待したい。




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