24年前に広島県福山市の住宅で女性が殺害された事件の裁判員裁判で、検察側は被告の男に対して懲役15年を求刑しました。
2001年2月、福山市明王台の住宅で女性(当時35)が腹部を果物ナイフで突き刺されるなどして殺害された事件。
未解決のまま20年が経過した2021年、福山市の無職、竹森幸三被告(70)が逮捕・起訴されました。
28回に及ぶ公判前整理手続きの末、1月30日に初公判が開かれました。
車いすに乗って法廷に入った竹森被告は、起訴内容について「記憶に無いから分かりません」と述べました。
この裁判の争点は、現場に残された血痕のDNA型が竹森被告の型と同じと言えるかどうかです。
検察側は証拠として、遺留品の靴下に付着していた血痕のDNA型の鑑定結果などを提出。
ただ、その中には「竹森被告の型と一致している」と断言できない箇所も含まれていたということです。
それに対し、弁護側は「血痕のDNA型には竹森被告の型とは明確に一致しない部分も存在している。DNA型が一部でも一致していないのであれば原則、同一とはいえない」として無罪を主張しました。
2日目、検察側の証人として出廷したDNA型鑑定の専門家は遺留品の靴下に付着していた血痕について、「一部は経年劣化で鑑定が困難だったと思われる」とした上で、「竹森被告のDNA型が含まれている可能性が高い」と証言しました。
また、「血痕と被告のDNA型が明確に一致しない部分も存在している」という弁護側の主張に対しては「血痕に複数人のDNA型が含まれている可能性が高い」と指摘。「被告のDNA型が大部分を占めるため、その他の人を特定することはできない」と話しました。
3日目、逮捕後の取り調べでいったん自白したものの、その後は一貫して否認してきた竹森被告。
この日の被告人質問でこう断言しました。
(弁護側の被告人質問)
「令和3年10月に逮捕されてから勾留が続いていますが、言いたいことはありますか?」
A.訳の分からないやった覚えのない事件に対して3年数か月監禁されていることが理解できない。早く出たいです
検察側は、事件当日の「記憶」について聞きました。
(検察側の被告人質問)
「事件当日、どこで何をしていましたか?」
A.釣りが好きなので、メバルを釣る『釣り場』の確認に行っていました
さらに被害者の遺族の代理人を務める弁護士がこう問いかけました。
(被害者遺族代理人の被告人質問)
「傍聴席にいる遺族に何か言うことはありますか?」
A.ございません
被害者遺族の意見陳述では、被害者の実の母が法廷で思いを述べました。
事件があったのは2001年2月6日、裁判が開かれた6日は娘の24回目の命日であるとした上で、
「なぜ娘が殺されなければならなかったのか・・・
なぜ娘なのか・・・
最後に娘はなんて言っていたのか・・・
お願いだからなにか教えてください」と涙で声を震わせながら訴えていました。
また、長女(当時9ヶ月)と在宅中に被害にあった娘に対し、
「子どもを守るためによくがんばったね・・・
怖かったね・・・
つらかったね・・・
痛かったね・・・
無念だったね・・・」と語りかけました。
これまでの裁判を踏まえ、検察側は「遺留品に付着していた血痕は竹森被告の血液である」と指摘した上で「20年間出頭せず、反省の態度も無い」として懲役15年を求刑。
一方、弁護側は、「竹森被告の血液であると断言するのには疑問が残る」として無罪を主張しました。
判決は12日に言い渡されます。
科学的かつ高度な専門的知見が必要な捜査手法である「DNA型鑑定」。
その結果について裁判所がどのような判断を下すのか、注目が集まります。
【検察側の主張】
・遺留品に竹森被告の血液が付着していた
⇒DNA型鑑定の専門家が「血痕に竹森被告の血液が含まれている可能性が高い」と証言
・凶器となった果物ナイフを竹森被告が所持し得た
・現場に残された靴跡の大きさが竹森被告と同じ
以上から竹森被告が犯人であると主張。懲役15年を求刑
【弁護側の主張】
検察側の「凶器を竹森被告が所持し得た」に対して、
事件当時に同型の果物ナイフが相当数流通していたことから、犯人と被告の条件が「矛盾しない」という程度にとどまる
「靴跡の大きさ」に対しては、
靴のサイズだけでは条件が「矛盾しない」とすら言えない
⇒事実上の争点はDNA型関係の結果のみだ
DNA型鑑定について、
・「含まれる可能性が高い」という証言は専門家の見解に過ぎず、鑑定結果は完全には一致していない
・完全に一致していないにもかかわらず、被告の血液と断定するのは「疑わしきは罰せず」という刑事裁判の原則に反する
以上から竹森被告は無罪
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