広島県内の路面電車やバスなどで使える交通系ICカード"PASPY"(パスピー)が、二か月後の3月29日にサービスを終了します。サービス終了後、メインで導入される新乗車券システムは、"MOBIRY DAYS"(モビリーデイズ)と"ICOCA"(イコカ)に二分される状態に… どう使い分けていくのがよいのか、取材しました。
2008年に運用を開始した、広島県内の多くのバス路線や路面電車などで利用が可能な交通系ICカード"PASPY"は、2018年にはJR東日本の"Suica"など、全国の交通系ICカードでも利用ができるようになったほか、定期券を購入すれば区間内を走る他社のバスにも乗れる「共通定期券制度」が導入されるなど、進化を遂げてきました。
しかし、次の設備更新にはおよそ35億円がかかり、今後も7年ごとに更新の必要があることから、維持が難しいとして3月29日にサービスを終了します。
"PASPY"の終了後は、事業者によって新乗車券システム"MOBIRY DAYS"をメインとする事業者と、JR西日本のICカード"ICOCA"をメインとする事業者に別れることになりました。
広島電鉄などは去年から、新乗車券システムの"MOBIRY DAYS"の運用を開始しました。
広島電鉄新乗車券システム推進部 大上 明紀 部長
「"MOBIRY DAYS"であればクラウドサーバーを使うので、機器更新の必要が無く、将来的には安価なシステムとなっていく」
設備の維持にかかる費用が安くなる見込みのほか、独自のシステムのため、新たなサービスの開発や提供がしやすくなる点から、導入を決めたといいます。
"MOBIRY DAYS"は、クレジットカードか銀行口座と連携した専用のアプリで、表示するQRコードをかざして乗り降りするシステムで、専用のICカードでも利用ができます。ただ、"MOBIRY DAYS"のシステムは、"ICOCA"など、ほかの交通系ICカードには現状、対応できていません。
そこで、"ICOCA"などを広島電鉄で利用する場合、"PASPY"の廃止後は、簡易型の読み取り機が新たに設置されることになりました。電車やバスを降りるとき、タッチすることで利用が可能ですが、機能には制約があります。
一方で、広島バスや広島交通、JRバス中国などは、鉄道との乗り継ぎが1枚のカードで済む点や、県外から来る乗客が全国の交通系ICカードを不自由なく使える環境を維持したいといった点で、これまでも"PASPY"のカードリーダーで使えていた"ICOCA"をメインで導入することとなりました。
各事業者の準備が進む中、"PASPY"廃止まで残り二ヶ月を迎えた本通りバス停では、まだ多くの人が"PASPY"をカードリーダーにタッチしていました。
広島バスによりますと、ICカード利用客のうち、今月時点で"PASPY"を使う乗客は約65%、ICOCAは約25%、Suicaなどの他府県ICカードが約10%となっています。ICOCAに切り替える客も増えているそうですが、まだほとんどの乗客がPASPYを使っていることがわかります。
PASPYを使う乗客
「(新しくなると)バス会社によって使い方も違うので、ちょっと不便だなというのは思っています」
ICOCAとPASPYを使う乗客
「アストラムとバスの乗り継ぎなので2枚使っています。使い分けるのにときどき間違ったりするので、1枚で使えていた方が便利でした。PASPYがなくなるのは残念です」
ICOCAを使う乗客
「乗る度にカードが違うって言うのは困るので…JRとか一緒に使えるから便利だから」
▼まとめ
《広島電鉄・芸陽バス・備北交通・ボンバス》
"MOBIRY DAYS"をメインで導入しています。
"ICOCA"は使用可能ですが、機能には制約があります。
→・"PASPY"のような10%割引はなし
・定期券利用は不可
・簡易型機械のためタッチは降車時のみ
・均一運賃でない路線の場合、乗務員に乗車バス停を伝える必要がある
広島電鉄によりますと、"MOBIRY DAYS"の端末で"ICOCA"などの交通系ICカード(10カード)が使えるようになるか、検討をしているということです。
《広島バス・広島交通・JRバス中国》
"ICOCA"を3月30日からメインで導入します。
"MOBIRY DAYS"は、"PASPY"が終了する3月30日の段階では、導入が間に合わない路線があります。
▼広島バス
広島電鉄などと共同運行する「エキまちループ」「まちのわループ」と、一部の市内線の計75台には、"PASPY"終了翌日の3月30日の導入を目指しているということです。ほかの一般路線には2025年度中に導入予定だということです。
▼広島交通
「まちのわループ」一部の郊外路線の計13台には、"PASPY"終了翌日の3月30日の導入を目指しているということです。ほかの一般路線には2025年度中に導入予定だということです。
▼JRバス中国
「クレアライン」には、"PASPY"終了翌日の3月30日の導入を目指しているということです。雲芸南線(高陽~広島市中心部)には2025年度中に導入予定で、東広島市・呉市を走る路線には導入の予定はないということです。
《フォーブル・江田島バス・中国バス・鞆鉄道・井笠バス》
"ICOCA"を導入する予定です。
バス各社は、3月下旬に窓口が大変混雑すると予想しています。"PASPY"をまだ使っている方は、少し早めに今後どの乗車券システムがよいか考えてみてはいかがでしょうか? また、"PASPY"の払い戻しは2年後の2027年3月31日まで受け付けているので、可能な場合は時期をずらして窓口に来てほしいとしています。
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