年が明けてもコメの価格高騰が続いています。今はスーパーの店頭で5キロ袋3500円~4000円ですが、関係者によると4月以降、4000円を越えるのではないかということです。品薄感から、取引き価格が上がり続けています。
そんな中、農村では今年のコメ作りに向けた準備が始まりました。コメ不足が伝えられる中、増産となるのか?コメどころの一つ、広島県世羅町で取材しました。
世羅町にある地元JAの支店です。年明けのこの日、今年のコメ作りを前に地区ごとに農家への説明会が開かれました。
JA尾道市世羅営農センター 佐藤清之主幹
「温度的には35℃以上超える日が続くと高温障害になるんですけど、ぜひ水管理をしっかりしとく。夜、冷たい水を入れる方がイネの温度が下がります」
去年のコメ不足の一因になった夏の猛暑対策などの説明に出席した農家は真剣に話を聞いていました。
年が明けても高騰を続けるコメの価格。背景には今年の夏もコメ不足になるのでは…という憶測があります。
県やJAなどで作る協議会も安定供給のために増産を求めています。農家は、どう考えているのでしょうか?
農家
「まあ、例年通りですね」
「例年と一緒ですよ。量は少ないですから」
参加者の多くが中小の個人農家とあって、増産を考える人はいないようでした。
農家
「ようけ作りゃ、機械が大きゅうなるしね。機械が高うて戻らんでしょ(もうけが出ないでしょ)。その割には燃料代が安うならんしね」
農家
「面積を増やしても結局、また草を刈る面積が増えるっていう」
柴田和広記者
「一方、大規模農業法人の中には今年、主食用のコメを大幅に増産するところがあると聞き、訪ねました」
世羅町上津田の農業法人「こめ奉行」です。社長の娘の重田(しげた)取締役が取材に応じました。
こめ奉行 重田弥生取締役
「作付面積に関しては50ヘクタールから65ヘクタールに増やす予定にしております」
田んぼを案内してもらいました。
重田取締役
「ここは、やめられる法人さんの田んぼを受け継いで、主食用米を令和7年産から作る田んぼです」
ここは元々、今年、解散を予定している近隣の農業法人が耕作していた田んぼです。今年増やす15ヘクタールのうち11ヘクタールはこの法人から引き継ぐもので、残り4ヘクタールは家畜のエサ用の飼料米の生産をやめて主食用に転換します。
重田取締役
「儲けるぞーという感じではなく、地域を守りつつ、いうところは大きいかも知れないですね」
ただ、ほかの法人の田んぼを引き受けた背景には、コメの価格高騰で会社の体力をつけたことがあるようです。
重田取締役
「おコメの価格が上がることってありがたいことだなあ、という風には思ってます。いつも以上に利益が確かに出たところはあるんですけど」
重田取締役
「これは、こめ奉行で生産したおコメとお客さんから集荷して帰ったおコメです」
「こめ奉行」では、コメの生産だけでなく、近隣の農家のコメも集荷して、独自のルートで卸し業者に販売しています。
地域では高齢化などでやめる農家が相次いでいて去年、コメの価格高騰で得た利益は、地域の農業を守るために使うということです。
重田取締役
「今から増えていくであろう農地、そこに対しての設備であったり施設であったり、そういうことに投資して行きたいなあってことに未来への投資、これから増えていくであろう仕事量に対して、ちょっと余剰に人を雇って、というのを投資していける年になったんじゃないかなと思ってます」
ただ「こめ奉行」の取組みも地域全体で見たら増産とはいかないようです。
重田取締役
「ほかの人が主食用で作ってたものをただ私たちが主食で作るだけんで、いい意味での現状維持をするために我々が増やしていくという感じです」
「こめ奉行」にとって、コメの価格高騰は若い人に「働きたい会社としてみられるようになった効果」もあり、求職者が倍増したといいます。
ただ、本題である「県内のコメが増産となるのか?」については不透明です。県内の各JAでは今、苗の注文を受け付けていて「来月には、状況が見えてくると思うが今は分からない」ということです。
関係者の見方で共通しているのは「大規模法人は増産するだろうが、個人農家でやめる人もいて、多少増えるくらいではないか」ということです。
国は消費者のコメ離れを前提に需給見込みを立てていて、この1年、供給が需要を上回ると予測しています。しかし、本当に実態に合っているのか疑問も残ります。
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