「すぐそこだから、抱っこしておけば大丈夫…」
小さい子どもと一緒に車に乗るときに、こう言われたことはないだろうか。
記者の私も、実際に言われたことがある。生後2ヶ月の子どもをつれて祖父母の自宅に行く約束をしていた日、祖父が突然、車で迎えにきてくれた。
「寒いけぇ迎えに来たで」
しかし、車にはチャイルドシートがない。せっかく来てくれたのに申し訳ないが、私が自分の車で向かう旨を伝えると…。
「ちょっとなら抱っこしてシートベルトしとけば大丈夫じゃろう」
しかし、乗るわけにはいかない。
6歳以下の子どもはチャイルドシートを着用することが、法律で義務づけられているからだ。
JAF(日本自動車連盟)の2024年の調査では、6歳未満のチャイルドシートの着用率は全国で78%…。100%にはほど遠い。
年齢別に見ると、成長するにつれて着用率が下がるのも特徴だ。
▼年齢別のチャイルドシート着用率
1歳未満…91.7%
1歳~4歳…80.7%
5歳…57.9%
都道府県別に見ると、着用率1位は愛知県の91.7%。2位は岐阜県(90.6%)3位は富山県(89.5%)と続く。ワースト1位は、沖縄県の54%だ。ワースト2位は石川県(62.5%)、ワースト3位は宮崎県(63.4%)となっている。
2024年8月、福岡市で路線バスと軽乗用車が衝突し7歳と5歳の姉妹が死亡する事故があった。
警察によると、2人は後部座席でシートベルトを着用していたが、チャイルドシートは車に載っていなかったという。
JAFによると、事故が起こった際にチャイルドシートを使用していなかった場合、正しく着用している場合に比べて致死率が約4.2倍になるというデータがある。
子どもがチャイルドシートを付けていない状態で事故になってしまった場合の動画を、JAFが公開している。
時速55キロで走る車が壁に衝突した瞬間…。
JAFの実験動画より
運転席の大人はシートベルトで固定され、エアバッグがクッションとなっているが、後部座席の子どもは体が投げ出されて頭を強く打ち付けているのが分かる。
一方、同じ条件でチャイルドシートを着用していた場合。体が大きくゆさぶられているものの座席に固定され、頭が車内の座席や硬い部分に接触することはなかった。
JAFの実験動画より
画像提供 JAF
JAFはチャイルドシートやジュニアシートの正しい設置・着用に加え、年齢にとらわれない使用が大切だと呼びかけている。
シートベルトは一般的に身長140cm以上を対象に設計されているが、これは広島県内の平均身長でいうと10歳くらいにあたる。
JAF広島支部 西原大介さん
「年齢だけでなく、身長に合わせてチャイルドシート・ジュニアシートを使ってもらいたい」
子どもの場合、衝突時にシートベルトが首や腹部を圧迫する恐れもあるという。
JAF広島支部 西原大介さん
「構造上、シートベルトは『鎖骨や腰骨で支える設計になっているので、小さい子どもは『チャイルドシート』や『ジュニアシート』で高さを調整して正しい位置に取り付けてもらいたい」
正しく着用すれば事故の衝撃の軽減だけでなく、パワーウインドウに手や頭を挟んでしまう事故も防ぐことができる。
チャイルドシートの着用が義務化されたのは2000年…。祖父母より前の世代の多くが子育てをしていた頃は義務化されていないため、今の子育て世帯とギャップが生まれてしまうこともある。
年に数度の帰省のためにチャイルドシートを買うのはもったいないと考える人は、交通安全協会や一部の自治体などでレンタルすることもできる。
大切な命を守るため…。たとえ「すぐそこ」、「帰省の間だけ」だとしても、小さい子どもと車に乗る際には必ずチャイルドシートを着用することを家族皆で認識しておきたい。
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