わたしたちの暮らしに欠かせない路線バスの運転手不足が深刻になっています。担い手を探そうと、広島県バス協会は今月、運転手の就職フェアを開きました。
バス事業の魅力を知ってもらおうと、1日に開かれた”ひろしまバスまつり”。今回、初の取り組みとしてバス運転手の就職フェアも同時に開催し、10社が参加しました。
10社のうちの1社、広島県北部を中心に運行している備北交通では、運転手がおよそ10人不足しています。
備北交通株式会社 総務課長 名越一馬さん
「私みたいに事務職で入った人も、大型二種免許をとらせたりして、運転手不足を穴埋めをしているという状態。大変厳しい状況にあります。『大型免許を取ってから来てください』というような感じで、個人に取ってもらっていた時代が長く続いていたんですけれども、かつてとは全然状況が違います」
広島バス株式会社 労務部長 田中精さん
「ある程度入社もいただいているのですが、もともとの欠員が大きかったものですから、まだまだ充足にはちょっと…」
広島市を中心に運行する広島バスは、ことし3月から初任給を3万4500円アップ。採用数も徐々に増加しているそうですが、それでも、あと12人ほどの運転手が必要だといいます。
就職フェアに足を運んだ人は、さまざまなバス会社の説明を聞いて、どう思ったのでしょうか。
タクシー運転手から転職を検討中 21歳男性
「給料面でも高くて大きな車を運転できるという意味で、そこが違うなと思いました」
運送業から転職を検討中 50代男性
「昔からバスには乗りたかったけど、昔はハードルが高い職業だったから。現役の運転手さんが会場に居て、その人と話ができて、だいぶ気がラクになったというのはありますね」
就活中の大学生 20歳男性
「労働時間が長いって聞いたりするので、そこが不安ですかね。週休2日制で福利厚生もしっかりしていると聞いたので、すごい安心しました」
広島県バス協会によりますと、県内の路線バス運転手は半分以上が50歳以上で、30歳以下の運転手はわずか3%ほど。広島市の調査では、市内の路線バス8社の運転手は、2032年には、2022年に比べて14%減ると試算されています。
バスの運転手不足は、路線の廃止や減便などに直結し、わたしたちの暮らしにも大きく影響する問題です。運転手の声を聞いて人材の流出を防ぎ、安定的な確保につなげるべく、広島市やバス事業者でつくる協議会はことしの秋、広島市を走る現役のバス運転手271人にアンケートを実施しました。
◆質問1.バスの運転手のどこに働きがいを感じる?(複数回答)
・人流を支える社会的意義:48.2%
・乗客の感謝の声:47.4%
・大型車両を運転するかっこよさ:27.0%
・会社への貢献:15.3%
・そのほか:14.2%
→半数近くが”社会的意義”と”乗客の感謝の声”を挙げる
◆質問2.カスタマーハラスメントへの不安は?
・とてもある:42.8%
・ややある:34.7%
・ほとんどない:19.9%
・まったくない:2.6%
→不安を抱える運転手が4分の3に
◆質問3.待遇面に満足している?
・満足:7.7%
・やや満足:11.8%
・普通:17.0%
・やや不満:28.0%
・不満:35.4%
→”やや不満”や”不満”が約6割に
不満を持つ運転手が多い”待遇面の向上”や、近年の燃料費の高騰や物価高騰(車両費・修繕費など)に対応するため、10月、広島市中心部を走るバス事業者各社は、中心部のバス均一運賃を来年2月に現在の220円から240円に引き上げる方針を示しました。
この方針について利用者はどう感じたか、広島市が実施したインターネットアンケートの結果は、2年前に運賃を改定したばかりということもあり、「理解できない」「どちらかと言えば理解できない」との声が56%を占めました。
ことし、路線バスはもともとの運転手不足に加え、退勤から出勤までの休息時間の増加や残業時間の規制といったバス運転手の働き方改革、いわゆる”2024年問題”で、都心部や中山間地域を問わず、減便などの影響が出た地域が多くありました。
生活の足を守るライフラインとして今後も維持するためにはどうしたらよいのか。事業者の一層のアピールや説明、行政のサポートはもちろん、私たちも”あって当然”の存在だった”路線バス”が岐路に立っているという意識を持つ必要がありそうです。
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