広島市の神楽の定期公演で外国人の来場者数が過去最多を更新しました。外国人の人気を支えているアメリカ人の女性を取材しました。
広島市中心部で週に1回、鑑賞できる神楽…。地元の人や観光客に楽しんでもらおうと県内の神楽団が交代で舞を披露しています。
観客席で目立つようになったのは外国人の姿…。この日も、100人以上が神楽を堪能しました。
アメリカから
「すばらしくてきれいだった!」
「これまでに神楽を見たことはなかったけれどパフォーマンスにとても感動した」
県民文化センターによりますと外国人の来場者数は2014年度の開演以降、右肩上がり…。一時は新型コロナの影響でゼロになったもののSNSでの発信などを強化したことで来場者数は回復し今年度は、3570人と過去最多を記録しています。
外国人の人気が高まっている理由の1つは…?
ひろしま神楽定期公演 砂田充教プロデューサー
「何を言っているのか分からないということで面白さや理解度が半減すると意見を多々いただき、セリフを英語で出し始めてから大きく流れが変わったかなと」
去年から始まった“英語の字幕”の投影です。
フランスから
「神楽はすべて日本語だけど、字幕のおかげで理解しやすい」
アメリカから
「日本人(演者の)感情も伝わってくる。役に立つ」
英語の字幕を担当したのはアメリカ出身でフリーランスの翻訳家のレイチェル・ニコルソンさんです。8年前、友人から外国人向け神楽の英訳の確認作業を任されたことがきっかけで正式に翻訳を担当するようになりました。
レイチェル・ニコルソンさん
「伝統芸能はすごくかしこまったイメージってあるじゃないですか。ピシッとしてあまり音を立てずに。神楽は全然そうじゃなくて、お客さんと舞台に上がってる舞い手一体になって楽しめるもの」
これまでは県内の観光や原爆に関する翻訳をしてきましたが初のエンターテイメントに胸が躍ったといいます。
レイチェル・ニコルソンさん
「どうやってこの感情を伝えようかなと工夫しながらやってすごく楽しかった」
これまでに翻訳した演目は100種類以上にのぼります。しかし、神楽ならではの難しさもありました。
レイチェル・ニコルソンさん
「日本の和歌で対決をする場面が出てきて、和歌が創作的に作られているので意味がわからなくて・・・」
例えば、「天神記」という演目に登場する和歌・・・。
『東風吹かば にほひおこせよ梅の花 主なしとて春を忘るな』
「東風(春の風)が吹いたら、主人がいなくても春を忘れずに梅の花を咲かせ、香りを届けてほしい」。太宰府に左遷された菅原道真が京都の自宅の梅を恋しく思い歌ったものです。
レイチェルさんは、和歌の意味を調べたり、詳しい人に聞いたりして、英語にしました。
英訳『My plum blossom tree,send your scent on the east wind.
Don't forget to bloom in spring even if I am not there.』
また、日本語で『左大臣』は『minister of left』のように、英語は日本語と比べて文章が長くなるため、字幕を投影するスライド数が1演目に対して100を超えたものもあるそうです。
さらに、文章とのみ向き合って英訳するだけでもいけません。
例えばこちらの神が2人の武将に刀を授けるシーン。
レイチェル・ニコルソンさん
「剣は1個差し上げてるのか2個差し上げてるのかこれ(文章)だけだとわからないじゃないですか。2人にあげてたので、これは複数形でSWORD“S”にしないといけないのでここにメモして…」
翻訳のため公演会場に足を運んだり歴史や背景を学んだりする機会が増え気づけば神楽の大ファンに…。英語の字幕にも変化が現れているそうです。
ひろしま神楽定期公演 砂田充教プロデューサー
「昔の口上(セリフ)の翻訳と同じ演目でも今、翻訳する英訳と全く違うものができあがっているのでレイチェルさんの中で理解度が進みこの演目はこういう演目だからこう訳そうというのが出てきて工夫が見られる」
神社など屋外で行う神楽も外国人観光客に広められたらと考えています。
レイチェル・ニコルソンさん
「ファンサービスがより一層すごいんですよ、神社とかでやると。口から火が出るっていうすごい迫力のあるのは外でしかやれないので。火を噴いている大蛇を私も今年初めて見たんです。夏祭りと秋祭りで結構感動して」
これまでは旅行中に知ってもらうことが多かったという神楽…。
今後はより多くの外国人に神楽を目的に広島に来てもらうことを目指します。
レイチェル・ニコルソンさん
「もっともっと世界の人たちに日本の伝統芸能といえば『神楽!』という風になっていけばうれしい」
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