広島大学宇宙科学センターの稲見華恵准教授らを含む国際共同研究チームは、宇宙が誕生して間もない時代の銀河から、星を作る材料となる「冷たい分子ガス」を世界で初めて直接検出することに成功したと発表しました。
この成果は、初期の宇宙にあった銀河が短期間で巨大化した理由に迫り、いわゆる「宇宙の夜明け」の謎を解き明かす重要な手掛かりとなります。
研究論文は2026年6月11日付の英国王立天文学会誌「MonthlyNoticesoftheRoyalAstronomicalSociety」に掲載されました。

ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)/L. Rowland et al./ESO/J. Dunlop et al. Ack.: CASU, CALET)
宇宙初期の銀河はどうやって大きくなった?
約138億年前の「ビッグバン」によって生まれた宇宙ですが、近年の望遠鏡による観測から、宇宙誕生から10億年も経っていない時代に、すでに非常に大きく明るい銀河が存在していたことが分かってきています。しかし、それらの銀河が「どのように短期間で急成長したのか」は、これまで大きな謎とされてきました。
銀河が成長するためには、星を生み出す材料となる大量のガスが必要です。特に「冷たい分子ガス」は星を形成する直接的な燃料に相当します。しかし、初期の宇宙では、宇宙放射が現在よりも強く、この「冷たい分子ガス」を見つけるのは非常に困難。これまで直接観測した例はありませんでした。
世界初!131億年前の銀河から「星の燃料」を直接キャッチ
そこで研究チームは、地球から遠く離れた、今から約131億年前(宇宙が生まれてから約7億年後)の時代にある「REBELS-25」という銀河に注目。アメリカの「VLA」(=カール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群)とチリの「アルマ望遠鏡」という2つを組み合わせて観測しました。

ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)/L. Rowland et al.
その結果、この銀河の中に、一酸化炭素の分子が放射する特定周波数の電波を捉えることで、「冷たい分子ガス」を観測。さらに「REBELS-25」内部のガスの温度や密度を詳しく推定できた、ということです。
初期宇宙の銀河には、星を形成するガスがすでに大量に存在し、非常に効率的に形成を進めていたことを裏付ける重要な証拠として注目されています。
研究者のコメントと今後の期待
広島大学の稲見准教授は、今回の発見について次のようにコメントしています。
「近年の観測によって、初期宇宙の銀河は、私たちがこれまで考えていたよりもはるかに速く成長していた可能性が見えてきました。今回の発見は、その背景に大量の星形成の材料となるガスが存在していたことを示す重要な証拠です。一方で、単に“燃料”が豊富だっただけなのか、それとも星形成を加速する特別な物理過程が働いていたのかは、まだ大きな謎として残されています。今回の成果は、その解明に向けた新たな一歩になると期待しています。」

ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)/L. Rowland et al.
今後の展開は?
今後は、さらに多くの銀河を調べることで、こうした大量のガスを持つ銀河が宇宙初期にどれくらい一般的だったのかを明らかにしていく必要があります。現在は望遠鏡のパワーアップ(性能向上)や、さらに新しい次世代の望遠鏡の計画も進められており、将来的には「宇宙で最初の銀河がどのように生まれ、どのように現在の巨大な銀河へと育っていったのか」という、宇宙の歴史の根本的な仕組みが解き明かされると期待されています。
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