「2人に1人ががんになる」と言われる現代。もしあなたや、あなたの大切な家族が突然「ステージ3」のがんだと告げられたら、どう生きますか――。
乳がん治療を乗り越え、自らの経験をもとに「がんになっても夢や人生を諦めなくていい社会」を目指して新たな一歩を踏み出している、広島市在住の一人の女性がいます。彼女を支えたかけがえのない存在、そして彼女が社会を変えたいとの思いから開発した「ある小さなマーク」について取材しました。
自覚症状はゼロ。突然告げられた「ステージ3A」の乳がん
広島市内で記者会見に臨んでいたのは、一般社団法人「Re.Born」の代表を務める中村茜さん(47)です。
がんについて広く知ってもらうイベントのPRのためにマイクの前に立ちました。

「自分の安心のために、検査や検診に行ってみようと思ってもらえるような、一つのきっかけになったらいいなと思っています」
中村さん自身が乳がんを宣告されたのは、4年前、43歳のときでした。
妹が乳がんを経験していたため、30代半ばから毎年欠かさず検診を受けていたという中村さん。胸のしこりなどの自覚症状は全くありませんでした。
「前の年もちゃんと検査に行って『特に異常ないですね』と言われていたので、2022年、今年も大丈夫だろうと思って検診に行きました。そうしたら、実はがんの疑いがあるということで……」
こうして告げられた病名は、「ステージ3A」の乳がんでした。
中村さんは10年前に不慮の事故で夫と死別。当時は、女手一つで中学2年と小学6年の息子を育てている真っ最中でした。
「死への恐怖というよりは、とにかく治療をしてまた長く生きよう、子どもたちのためにまだ生きなきゃいけない、という意識が強くありました」
髪が抜け落ちるショック 自ら「セルフ写真館」で記録した理由
告知の2ヶ月後に入院し、抗がん剤治療を開始。右胸の全摘出治療を受けました。闘病生活の中で、最もつらかったのは「髪を失う瞬間」だったと振り返ります。
「一番つらかったのは、やっぱり髪の毛がシャワーで流したときに、ずっと抗がん剤治療の影響で流れ落ちてくるあの瞬間。一番やっぱり悲しくて、すごくショックで涙が止まらなかった」

しかし、中村さんは、髪がひどく抜け落ちた真っ只中、自ら「セルフ写真館」へ足を運び、その姿を写真に残しました。
「一番ひどく抜けたときが一番ショックだったんですけど、もうなくなったらなくなったで、『がんになったから、今度これを世の中のために生かさなきゃ』と思って。最終的にはもう開き直りじゃないですけど」
中村さんを支えた 子どもたちの優しい言葉
中村さんの闘病は現在も続いています。再発予防のための抗がん剤やホルモン剤治療の影響で、更年期障害による疲れやすさ、胸や下腹部の痛みなどの副作用と今も向き合っていて、治療期間はトータルで10年に及ぶ予定です。

そんな闘病の日々を支えているのは、2人の息子たちの存在でした。
「がんになったときも、髪の毛がなくなっても『ドライヤー要らないね』とかいうぐらい、逆に笑かしてくれたり(笑)」
家事のサポートもしてくれたといいます。
「(手術で)やっぱり重たいものが持てなかったりとか、手がやっぱり上がりにくいということで、息子たちが洗濯物を運んで干してくれるのを手伝ったりとかしてくれました」
家族の支えもあり、再び立ち上がった中村さん。「この闘病経験を、今度は誰かのために役立てたい」。その強い思いが、一つの形になりました。
見えない生きづらさを解消する「小さなマーク」
中村さんは、周囲に治療中であることを知らせる「がん治療中キーホルダー」を開発しました。

「抗がん剤で髪がなくなっても、今ちょっとおしゃれなウィッグがすごく多かったり、おしゃれでつけている人もいるので、一見すると治療中なのか分かりません。だから、電車などで優先席に座りたいと思っても、元気そうに見えてたら、『何で座るの?』と思われてしまうこともあるじゃないですか。座ってても、実は治療してるから、『すいませんけど、しんどいとき座らせてください』って言えるような環境だったりとか、何か"優しさの循環"が生まれたらいいなと思って作ったものです」
キーホルダーには、乳がんの啓発活動を示すピンクと、がん全般を示すラベンダーの2種類の色があります。裏面にはQRコードがあり、ウィッグや保険など、がんになった時に役立つ情報にアクセスできるようになっています。
「がんになっても夢や人生を諦めてほしくない」
中村さんは、仲間を増やしながら活動を続けていきます。
「社会生活を送りながら、やっぱり治療するってすごくまだまだハードルが高いなって思ってるんですよ」「がんになったから何かを諦めるのではなく、がんになったからこそ、生活スタイルの見直しやどういった形で共存していけて自分たちの人生を過ごせるかっていうことの新しい選択肢が与えられるような、あの諦めではない人生を構築できたらなって思ってます」


提供:中村茜さん

提供:中村茜さん

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