広島県南部の瀬戸内海に浮かぶ江田島の切串港(江田島市)と、県庁所在地の広島港(広島市南区)を結ぶ航路が、6月から運賃を値上げします。背景には、航路をめぐる厳しい状況がありました。

切串港と広島港を結ぶ「上村汽船」の航路は、陸路では約1時間半、50km以上の道のりを、片道30分で結んでいます。

しかし、9年前の2017年には年間約46万人が利用していた航路の乗客数は、去年、約36万人にまで落ち込みました。

乗客減少の要因は 追い打ちをかける原油高

コロナ禍以降の移動需要の縮小に加え、乗客が減った一因とみられるのが、江田島市の深刻な人口減少です。国勢調査によると、2005年には2万9939人だった人口は、去年初めて2万人を割り込んだ1万9744人(速報値)となり、20年間で3分の2に減っています。

さらに追い打ちをかけるのが、昨今の中東情勢の緊迫化に伴う原油高です。動力源となる重油の価格は10年間で2倍以上に上昇。石油情報センターによると、中国地方のA重油の価格は、2016年3月時点で45.3円でしたが、2026年3月には123.7円まで上がりました。最近の情勢悪化で、価格の先行きはさらに不安定となっています。

中東情勢の影響は、燃料だけではありません。

塗料は4割、溶剤は倍に 中東情勢の影響は原油以外にも

上村汽船 上村隆彦社長
「船のペンキ、塗料代など、他の資材的も値上がりしているんですよ。きょう(17日)説明に来たメーカーが、塗料が40%値上げ、シンナーに至っては100%の値上げを言ってきています。その値上げ価格も7月までで『以降またどれくらい上がるかは分からない』と」

船体の底を守るため、年に1度塗り直す塗料や溶剤も、中東情勢の悪化などが原因で大幅に値上げされました。

「もう会社が持たない」運賃値上げへ

今回の情勢悪化の前から、年間で約3000万円の赤字が出ていた上村汽船では、運賃の値上げを決めました。これまで大人片道470円だった運賃は、来月から約2割高い570円に改定されます。

上村汽船 上村隆彦社長
「苦渋の決断ですね。実際に20年あまり値上げはせずに、私たち自身頑張ってきたつもりなんですが、今回はとてもじゃないけど、もう会社が持たない」

今回の情勢悪化の前から、年間でおよそ3000万円の赤字が出ていた上村汽船では、運賃の値上げを決めました。これまで、大人片道470円だった運賃は、6月から約2割高い570円に改定されます。

利用する乗客の声は

運賃の値上げについて、乗客に話を聞きました。

月に数回利用する乗客(広島市在住)
「江田島に住む両親が高齢者なので、実家に食材を持って行く。値上げは仕方が無いかなと思いますね、燃料も上がっていますし」

週に3回程度利用する乗客(江田島市在住)
「仕事が午前中で終わって、家に帰るところです。値上げはしょうがないんじゃないですか。今の価格は他の航路と比べたら安いと思いますよ。値上げよりも無くなるほうが怖い」

地域の足に影響を及ぼしている人口減少と国際情勢。上村汽船は、今後、重油や資材の供給が不安定になった場合、減便する可能性もあるとしています。