激甚化する気象災害。2014年の広島土砂災害、2018年の西日本豪雨では、広島県で多くの命が奪われました。

線状降水帯によって短時間に大量の雨が降り、被害が拡大するケースは、全国で相次いでいます。

大雨などによる災害発生の恐れが高まった際に、気象台などから発表される「防災気象情報」。この運用が、5月から大きく変わります。

「防災気象情報」とは? ”複雑で分かりにくい”現在の課題は

気象庁などが発表する「防災気象情報」は、大雨や土砂災害、洪水など災害の危険を知らせる情報です。

一方で、「警戒レベル」は市や町などが発表する避難情報です。「災害発生の危険度」と「取るべき避難行動」を住民が直観的に理解できるように、まとめられています。

この2つの情報は密接に関わっています。「防災気象情報」が「警戒レベル」に相当する情報として、紐付けられています。

【現在の課題】
①「特別警報」でもレベルがまたがっている
(例)「大雨特別警報」=レベル5相当/「高潮特別警報」=レベル4相当

②情報名に統一感がない
(例)レベル4・・・「氾濫危険情報」/「土砂災害警戒情報」/「高潮特別警報・高潮警報」など

③表に空欄がある
(例)「洪水害」・「浸水害」にはレベル4相当の情報がない

現在の運用では、「どの情報がどのレベルに紐付いているのか分かりづらい」という課題があります。

5階建てのホテルに例えると・・・

◆4階に空室(洪水害・浸水害)がある一方で、Wブッキングの部屋もある(高潮)

◆このホテルを利用しようと思ったら、部屋名が難しくて自分がどの部屋に泊まればいいのかが分からない など

複雑なこの情報体系を、分かりやすく整理するのというのが今回のポイントです。

新たな防災気象情報 ポイントは? 5月28日から提供開始

新たな防災気象情報災害のカテゴリーは、4つに分けられます。

◆河川氾濫・・・一級河川などの大河川の氾濫
◆大雨・・・低地の浸水/大河川以外の氾濫
◆土砂災害・・・急傾斜地のがけ崩れ/土石流
◆高潮・・・海水面上昇/波の打ち上げによる浸水

【新運用のポイント】
①情報名称にレベルの数字をつけて発表・統一感を持った名称に
レベル2=「〇〇注意報」/レベル3=「〇〇警報」など統一感を持った名称になります。レベル表記を頭につけたのが正式名称で、例えば大雨だと「レベル5大雨特別警報」が1つの情報名になります。

②レベル4相当の情報に「危険警報」を新設
「避難指示」にあたる、警戒レベル4に相当する情報として、「〇〇危険警報」が新設されます。

これにより、「レベル」と「情報名」でどの避難行動を取ればいいのか、分かりやすくなります。

ただ、変わるのは名前だけではありません。今回は「土砂災害」に関する情報が、どのような運用になるのか具体的に確認します。

**新たな防災気象情報「土砂災害編」 **

広島地方気象台 立神達朗次長
「これが5月下旬から予定している、警戒レベルに相当する警報・注意報の名前。最初の数字で、警戒度が分かるという形になっている」

広島市豪雨災害伝承館で開かれた説明会。気象台の職員が、新しい防災気象情報について解説しました。

新たな情報体系では、「河川の氾濫」・「大雨」「土砂災害」・「高潮」の4つについて、5段階の警戒レベルの数字と、警報などの名称を組み合わせて発表します。

例えば土砂災害の場合、「レベル3土砂災害警報」という名称で発表されます。また、「警戒レベル4」の避難指示にあたる情報として、「危険警報」を新設。気象庁などは来月28日から提供を始める予定です。

説明会の参加者(女子高生)
Q、防災気象情報が変わることは知っていた?
「知らなかった。レベルの数字で見せてもらった方が、危機感も分かりやすくありがたい」

別の参加者(男性)
「当面の間は、逆に混乱するかもしれない」

土砂災害の恐れがある場所が、全国で最も多い広島県。気になるのが「土砂災害」に関する情報の運用です。

「レベル3相当」「レベル4相当」発表基準は

これまでは、「レベル3相当」と「レベル4相当」にそれぞれ別の発表基準が設けられていました。一定の基準に達すると見込まれる場合には、「レベル3相当」の情報が発表されていました。

しかし今回、発表基準が見直されたことで、「レベル4土砂災害危険警報」の基準に到達すると予想される場合にのみ、「レベル3土砂災害警報」が発表されることになります。

つまり、土砂災害の危険性が高まっているエリアでは、高齢者などが避難を開始する目安になる「レベル3相当」の情報が、これまで以上に重要な意味を持つことになります。

広島市豪雨災害伝承館 高岡正文館長
「受け手が自分や家族の命を守ることに対していい情報。ただ、覚えることが目的ではない。避難行動に結びついてくれると一番いい」

これまで、災害が起こる度に見直しがくり返されてきた気象情報や避難情報。国の検討会にも参加した気象災害の専門家は―。

静岡大学防災総合センター 牛山素行教授
「何か災害が起こると、『〇〇情報が分かりにくかった』『〇〇情報が遅れた』という声が出てくる。せっかく覚えたら全然違うものになったという状況が、数年おきにくり返される状況は望ましくない」

静岡大学の牛山教授は「社会に情報が浸透するには時間がかかる」と指摘。その上で将来的には、よりシンプルな運用になると考えています。

静岡大学防災総合センター 牛山素行教授
「『警報』や『危険』など、文字で危険度の段階を示していくのは、もう限界がきている。『数字』はどういう人にとっても、直感的に分かりやすい情報なのは間違いない。いずれは『数字を主体とした情報体系』に段々と収斂していくのではないのか」

RCCウェザーセンター 気象予報士解説「土砂災害に関する情報」

【ポイント①:警戒レベル4相当の名称】
<廃 止>土砂災害警戒情報
<新運用>レベル4土砂災害危険警報

【ポイント②:発表基準の見直し】
これまでは「レベル3相当」と「レベル4相当」でそれぞれ基準が設けられていました。

しかし、これからは「レベル4相当」の基準に到達すると予想される場合にのみ、「レベル3相当」が発表されます。

つまり、「レベル3土砂災害警報」が発表されたら、まもなく「レベル4土砂災害危険警報」に切り替わるという運用になります。

<レベル3土砂災害警報 発表基準>
「レベル4土砂災害危険警報」の基準値に到達が予想される**「3~6時間前」**に発表

<レベル4土砂災害危険警報 発表基準>
「レベル4土砂災害危険警報」の基準値に到達が予想される**「2時間前」**に発表

発表基準を見直すことで、「レベル3相当」の発表回数が大幅に減ることになります。

これまでは、「レベル3相当」どまりの回数が数多くありましたが、今回からは、「レベル4相当」への”予告的”な意味を込めた発表になります。

雨量や土の中に含まれる水分量にもよりますが、「1時間程度」でレベル4相当に切り替わる可能性があります。

「警戒レベル4」と「警戒レベル5」では世界が違います。

「レベル5」はすでに災害が発生しているか、切迫している状況です。こうなると避難が、かえって危険に可能性があります。

警戒レベルで、「レベル4」までに「危険な場所から全員避難」とされているのはこのためです。

土砂災害に関しては「レベル3」が発表されたら、まもなく「レベル4」に切り替わると思って、事前に備えておき、当日に落ち着いて行動することが重要です。

土砂災害が多い広島にとって、これは重要なポイントです。

まもなく大雨シーズンです。防災気象情報を有効に活用するためにも、ハザードマップなどで、まずは身の回りの災害リスクを知っておくことが大切です。

新たな防災気象情報は、5月28日に提供開始の予定です。