4年の空白期間を経て、再びマイクの前へ。60歳のこのタイミングで、もう一度、実況アナウンサーの道を歩みはじめたRCC中国放送・長谷川努アナウンサーの胸のうちに全3回で迫ります。

60歳の春

球場の管理室で鍵を借り、放送席に鍵を開ける。自分で電気を点け、スコアシートに選手名を記入する。ここでの実況が放送されることはない。
実況デビューを前に、新人アナウンサーならば通った道である。

長谷川努アナウンサー、60歳。1989年に中国放送に入社し、佐々岡真司投手のノーヒットノーランや清原和博選手の500号ホームラン。さらには、鈴木誠也選手の2試合連続サヨナラホームラン。「やっぱり神ってるじゃないか」のフレーズは、野球ファンに強烈な印象を残した。

しかし、管理職業務のウエイトも増し、2018年を最後に、スポーツ実況の現場から離れていた。
あれから8年。「もう一度、カープ戦の実況を」という思いは、なかった。

「実況から離れて4年くらいは、プライベートでも野球を見ることはなかったです。純粋に野球を見ることができなくて。テレビで見ていても、カメラワークやスイッチングまでもが気になって、純粋に野球を見ることができませんでした。ようやく、ここ数年はファンの気持ちになって、カープが勝って喜び、一喜一憂していました。野球ファンの楽しみ方でした」(長谷川努アナウンサー)

プライベートも一変していた。午前中は資料作成に追われ、自宅でも野球中継を見ていると「家族は声をかけるのも気を遣う」ような状況だった。ナイター中継に合わせた勤務形態も変わり、家族で食卓を囲むことも多くなった。

たしかに、職場で見せる表情も柔らかくなり、情報番組などでも新たな一面を見せ始めていた。しかし、その人生のレールは急カーブに舵を切ることになる。

実況卒業から4年。戻るつもりはなかったと語る長谷川アナウンサーを再チャレンジへと向かわせた言葉とは?第2回「『上手く実況しなきゃいけない』一度は放送席から離れた実況アナが還暦で実況再デビュー 人生を変えた会話とは」に続く。

▽ 長谷川 努(はせがわ・つとむ)
1965年9月2日生まれ。1989年、中国放送に入社。現在は、RCCラジオで毎週日曜日あさ6時30分~『長谷川努の音楽大好き』(土曜夕方4時再放送)や日曜午後1時15分~『野球の時間だ!最速Veryカープ』に出演中。趣味はキャンプ、レコード鑑賞。