4年前、広島県が「不適切な盛り土」と公表した広島市安佐南区上安町の盛り土で、対策公事が進んでいます。

場所は、アストラムラインの上安の駅から直線距離なら2km足らずのところにあります。安佐動物園に行く道を挟んだ反対側で、産業廃棄物の最終処分場が広がっている谷側になります。8日に開かれた住民向けの現地見学会を同行取材しました。

現地見学会には、ふもと住民4人が参加しました。一番近い道路から盛り土は全く見えませんが、10分ほど歩けば扇形の盛り土の裾にあたる要部分に到着します。

「不適切盛り土」が放置できないワケは…

「不適切盛り土」が発覚するきっかけになったのは、5年前に静岡県で発生した熱海土石流災害です。大雨の影響で土石流がふもとの住宅などに流れ込み、建物136棟が被害を受け28人が死亡しました。

違法に作られた盛り土が、被害拡大の原因だったことから、全国的な調査が実施され、広島市安佐南区上安町にあるこの盛り土も、「不適切な盛り土」として浮かびあがりました。

盛り土の大きさは、面積がおよそ1万6千㎡、体積はおよそ15万4千㎥とみられていて、上部には産業廃棄物の最終処分場が重なっています。

しかも、この盛り土は、誰が何を埋めて作ったのか、所有者が誰なのかがわかっていません。

3年前の現地の様子は…

広島工業大学 森脇武夫教授(2023年6月20日取材)
「上からの地表水でちょっとガリ浸食っていうんですけど、浸食されて、盛り土の表土が少し流出していますね」

3年前、盛り土では、途切れたパイプが数多く見つかりました。両サイドは浸食が進んで樹木の根がむき出しになっていたり、小規模な崖崩れが発生していたりしました。

広島工業大学 森脇武夫教授
「できるだけ盛り土の中に水を入れないようにするのが、盛り土の維持管理の鉄則なんですけれど、その維持管理が適切にされてない」

浸食部分はどうなった?水の維持管理はどうする? 

2026年4月8日、盛り土の高さはおよそ90mあって、取材時は一番低い部分の近くで水平ボーリング工事が進行中でした。穴を開けるのは、直径4センチの排水管を盛り土の中に通すためです。

岡本幸記者レポート
「この排水管は、水平に50m伸びています。全部で9本あります。盛り土の中全体に溜まった水を集めて流すための仕組みです」

排水管は、扇型に広がる盛り土に合わせて、放射線状に設置されています。雨が降った後などに集まる地下水を排出し、盛り土の中に水が溜まらないようにします。

広島市農林整備課 滝口将司主任技師
「基本的には地下水というのは、どこから流れてくるかよくわからないものもあるんですけど、とにかくここは調査した結果、地下水が雨の時に上がりやすい場所だということがわかったので、その際に速やかに水を抜くためにこうやっている」

盛り土の対策工事では、▼排水管設置のほかに、▼シートを敷いて水を防ぐ、という方法も取られています。

山の中のかなりの範囲に敷かれたシート

岡本幸記者レポート
「ここは盛り土の下にあたる部分です。上の方から崖崩れが起きていて、すでに表面が浸食していた場所には、耐候性シートというものが貼られました。降った雨は中に染みこまず、このシートの上を流れることになります」

約1000㎡に設置される耐候性シートは、紫外線に強い素材で、耐用年数は5年だということです。

広島市農林整備課 壇上忠久森づくり担当課長
「広島市の方で経過観察を常時やっていきますので、それによって補修等が必要になれば、必要に応じて検討していきます」

そのほか対策工事としては、▼小規模な崖崩れが起きている部分には植物のタネが仕込まれた土嚢が積まれ、▼壊れたパイプは撤去されます。ただし、壊れているかどうかが判断できないパイプはそのまま残されます。

工事が完了するのは、5月29日だということです。

見学した住民は…

上安産廃から安全安心を守る市民の会 坂本裕事務局長
「第一歩だと思いますね。私素人なんでわかりませんけど、あの華奢な構造でという第一感はあるんですが、ただ、よそで経験のある工法だいうことを説明を受けましたので、専門家の方がそういう言われるんだから、それはそっちの方が正しいだろうなと。まぁそういう意味では一歩前進だと思ってます」

上安産廃から安全安心を守る市民の会 世話人 水橋建三さん
「当座の対応のような気がするんですよね。この山は、10年・20年でなくなるわけじゃなくてここに何十年も、それから住む方がたくさんいらっしゃるわけですよね。その方が、引き続きこういうちゃんとした対策をちゃんと継続して取れていけるのかどうなのかというのは、工事を見て感じましたね」

対策工事費はおよそ3000万円。一旦は市が立て替えている状態で、盛り土の所有者や盛り土を作った人が特定されたら請求する、ということです。その調査は現在進められていて、広島市は、今年度内の特定を目指しているということです。

現場は山の中、でも住宅地からの距離はわずか

改めて現場を見てみますと、大きな規模の産廃処分場の一部とその谷にあたる方向が盛り土になっていて、全体の量は15.4万㎥あると見られています。こんな大きなものが、誰が作ったかわからない、という状態が続いています。

下から見ると山の稜線に隠れて全く見えませんが、距離にすると、アストラムラインの上安駅から1.7kmほどです。

一方、熱海市の土石流災害の現場を見ると、土石流発生源は違法に作られた盛り土で、その中には産業廃棄物と見られるゴミが混ざっていました。

そこから5万5千㎥の土砂が流れ出て、1.8kmほど下まで被害が出ました。

単純に比べることはできませんが、その距離感を考えると、上安町の盛り土を放ってはおけない、と感じる人も少なくないのではないでしょうか?