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「全部おさまって、過去の話にはならないなと思います」。27年にわたりアトピーとともに生きてきた櫻木直美さん(54)。自身の経験から立ち上げたオーガニックコットンブランド「marru(マアル)」を広島で営んでいます。櫻木さんが今、目指しているのは”完治”ではありません。どう眠り、どこで無理をしないか。日常の選択を積み重ねる中でたどり着いた、静かな付き合い方があります。
(全3回のうち3回目。『50代で再び訪れたアトピーの“激しい再燃”』から続く)

「治そう」より日常を整える

30代の頃は食事療法を徹底し、自分を追い込んだ時期もありました。しかし、「体質である以上、症状がゼロになることはない」。そう実感してからは、意識の矛先が変わりました。

櫻木さんは、「日常を整える」ため3つのポイントをあげています。

1、夜11時から2時の「肌の時間」に眠る
かつては日付をまたぐのが当たり前でしたが、今は午後10時を過ぎると「もうこんな時間!」と寝る準備を始めます。睡眠を、出ない状態を保つための土台として位置づけています。
2、腸を元気に保ち、滞らせない
「アトピーと腸は直結している」という感覚から、食物繊維やサプリメントを取り入れています。厳しい制限ではなく「排出を滞らせないこと」を基準にしています。
3、「もう限界」という体のサインを見逃さない
月の半分を出張に費やしていた生活を見直し、働き方を変えました。無理をしていたと後から気づくのではなく、立ち止まる勇気を持つようにしています。

ネットの海ではなく、生身の「共感」に救われ

アトピーと長く付き合う中で、櫻木さんが繰り返し語るのが「誰と出会ったか」の大きさです。

夜中に掻きむしるわが子に、つい「掻いちゃダメ!」と怒ってしまう。そんな自分を責めていた時、同じ悩みを持つ親たちの「私だけじゃなかった」という言葉に救われました。

「あのママも今頃、起きてるかな」。夜中に手を握りながらそう思えるだけで、心はずっと軽くなりました。

インターネットの情報ではなく、生身の人が「私もなんよ」と言ってくれる。その呼吸を取り戻させてくれた経験は、現在広島で続けている、悩みを持つ人が顔を合わせて話す場「添うの場」へとつながっています。

「過去の話にはならない」からこそ

「アレルギーは、大きな病気になる前に気づかせてくれるもの」。そんな言葉を腑に落としながら、櫻木さんは今日も日常を積み重ねます。

「なかなか全部おさまって、過去の話にはならないと思います」

そう静かに語る櫻木さん。アトピーは過去の話にはならないけれど、だからこそ、今日どう眠るかを大切にする。27年の時間は、櫻木さんの暮らしと、ものづくりの確かな軸を形づくってきました。

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第1回:
「かゆい」は決して軽くはない 生後3か月の娘が血を流した夜の孤独な涙 アトピー闘病のなか母を救った“共感の力”
第2回:
50代で再び訪れたアトピーの“激しい再燃” 顔から汁がにじむ絶望 「何を着てもかゆい」救いとなったのは自ら作った“寄り添う下着”
第3回:
「アトピーは完治を目指さない」27年かけて辿り着いた“無理をしない日常”  睡眠・腸活・心の持ちよう…「治そうとしない」ことで楽になれる付き合い方