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広島県の中部や東部で、養殖のカキが7割から9割と大量に死んでいる問題です。県内最大の生産地、県西部でも水揚げが始まっているところがあります。現状を取材しました。
廿日市市の宮島を望む大野地区。江戸時代からのカキ養殖の老舗、島田水産です。県内全体の約7割の生産量を誇る県西部。大野地区では先週から水揚げが始まっています。

現在、水揚げされているのは「3年もの」と呼ばれる、3年育てた身の大きなカキです。ただ、こちらでも最近は例年3割から5割のへい死がみられ、今シーズンは県中部から東部にかけての状況ではないものの、例年以上のへい死がみられるといいます。
島田水産 島田俊介会長
「今年の状況は、死んでいるのもあるし、中には生きているものもあるが、(へい死は)だいたい7割、8割。よくて7割」
島田さんは、へい死は年々増えているといいます。夏が長くなって水温の高い状態が続くため、カキの産卵期間も長くなり、体力を失ってしまうことが要因の一つでないかとみています。
島田水産 島田俊介会長
「ここ最近、夏が長くて10月でも産卵している状態なので、通常9月で産卵は終わるが、10月でも種が付着する状態なので、体力を使って死んでしまうのかなと思う」

島田水産では今シーズン、カキ小屋や贈答用として提供するカキは、例年の量を確保できているといいます。今後は原因究明を求めるとともに、新たな養殖方法も考えていく必要があると話しています。
島田水産 島田俊介会長
「自然相手なのでどうしようもないところもあるので、それにあわせて養殖していかないと、研究しながらしていかないと。国が原因を調べてくれると思うが、やっているのは自分たちなので」
一方、今シーズンのカキのへい死について、流域圏環境再生センターの山本民次所長は、「海の底にできる貧酸素状態」と「風向き」が原因だと、結論づけています。
流域圏環境再生センター 山本民次所長
「貧酸素の水っていうのは酸素がないわけですから、広島の真ん中あたり、20m、30mの深さのところの海底の生物はほぼ死ぬんですよ。で、要は、貧酸素の水が風向きが変わると岸辺にガバっとくる時がある。それが今年の現象です」
広島大学の名誉教授でもある山本所長は、長年、カキなど貝類の生態と海底の環境について調査を続けています。

山本所長が東広島市安芸津の干潟で計測しているデータからは、9月28日から、急速に酸素濃度が下がったことがわかります。
流域圏環境再生センター 山本民次所長
「大体はずっと平均値だったのが、ここの9月下旬からぐーって下がって0に近いです。こんな浜の近くで、酸素のない水が出るってことは、ほとんど普通はないですよ」
山本所長は、通常は、深い海の底にある貧酸素状態の水の塊が、この時、浅い部分にまで一気に押し寄せたとみています。

要因は、9月27日以降、2週間以上にわたって、吹き続けた北風です。
通常は、寒くなるにつれて、南風と北風のバランスが徐々に変わることにより、貧酸素の水塊は混ざってなくなります。

しかし今年は、北風が続いたために、暖かい上の水が沖に押されて、冷たい下の水が貧酸素状態の塊のまま、カキが養殖されている浅いエリアまで押し寄せた。というわけです。

流域圏環境再生センター 山本民次所長
「風ってどうしようもないですからね。これコントロールできないので、何コントロールできるかというと、貧酸素をなるべく減らすということしか我々にはできない」
この「貧酸素水塊」は、海底のヘドロの中で微生物が有機物を分解する過程で発生した硫化水素が、海中の酸素を奪ってしまうためにうまれるもので、山本所長の調査では、高度成長期よりも今の方が高い頻度で発生しているということです。
Q.じゃあ、もうその今年みたいな状況が今後も生まれうる?
流域圏環境再生センター 山本民次所長
「うる、うる。生まれうる状態です。今回みたいな大きな被害じゃなくても、毎年貧酸素なので、エビ、カニ、貝、それからゴカイみたいな海底に住む生物はもう全滅してんですよ、はっきり言って」
山本所長は、海底のヘドロ内に溜まる硫化水素が、海水中の酸素を奪ってしまう前に、硫化水素を無害な硫酸イオンに換える焼いた牡蠣殻などによる取り組みで減らしていくしかない、と山本所長は話しています。

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