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「朝食抜きなんて話にならない!」「眠らないでどうやって成績を上げるの?」――。広島市中区の基町高校で今、生徒たちのパフォーマンスを上げるための、少し変わった授業が始まっています。受験、部活、そして日々の充実のために、生徒たちが学んでいるのは、誰にとっても欠かせないけれど、つい後回しにしがちな「最高の睡眠と栄養の摂り方」でした。

なぜ、高校がこのような授業を始めたのでしょうか? そのきっかけは、学校の「保健室」にありました。
基町高校の緒方千賀子養護教諭は、こう語ります。
「保健室に来る生徒の中に、『眠れなくて困っている』『朝起きれない』など、眠ることに対して訴えてくる子たちがやはり多いんです」
この切実な声を受け、基町高校はおととしから睡眠に関する講演会を開くなど、積極的に取り組みをスタート。昨年は不登校などの問題を抱える生徒を対象に睡眠に関するカウンセリングを実施しました。
そして今年、「睡眠の効果をより多くの生徒に実感してほしい」と、希望者を募り、睡眠スキルなどを学べる授業=「Ignis School」を開講。結果、学年を問わず多くの生徒が集まりました。
この日の授業のテーマは「効果的な栄養の摂り方」。講師を務めるのは、上級睡眠健康指導士の保田厚子さんです。
保田さんはまず、生徒たちに強いメッセージを投げかけます。
「朝食べないという方、もうお話にならないです。朝食べないのに受験で成功したいとか、パフォーマンス上げたいとか、いやいやもうそれは虫のいい話でね」

そして、最高のパフォーマンスを引き出すためには「質の良い睡眠」が不可欠であることを解説。そのために特に大切な栄養素として、タンパク質、ビタミンB群、そして鉄やマグネシウムの重要性が紹介されました。
保田さんは生徒たちに、知識だけでなく「体感」することの大切さを訴えます。
「睡眠ってやってみるしかないんですよ。きょうの栄養にしても、自分がやってみて体感する。そこでご自身がつかめるはずなんです」

授業に参加した1年生の大坂修吾さんは、成績を上げたいという一心で参加を決めた一人です。
「高校に入ってから、得意だと思っていた教科の点数が伸びなかったり、部活でもみんなの方が上手で…。改めて睡眠というのに目を向けて取り組んでいこうと思いました」
授業を終え、放課後はグラウンドで暗くなるまで野球部の練習に打ち込みます。夜7時半すぎ、帰宅後の夕食時には、さっそく家族との会話に「睡眠と栄養」の話題があがりました。
「摂らんといけん物質は大体一緒らしい。タンパク質とかビタミンBとか、あと鉄もとらんといけんらしい」

大坂さんの両親も、この取り組みに賛同しています。
母・奈津子さん
「社会人になっても睡眠を確保するというのが大変になっていると思うので、今のうちからそういうことを意識してもらうことに対してはありがたいかな」
(父・智宏さん)
「自分で聞きに行くっていうのが、身になるのかなと思って。学校でこういうことを開いてもらえるのは助かると思います」
大坂さんは、夜10時半ごろには布団に入り、7時間程度の睡眠時間を確保するよう心がけています。
「部活でも勉強でも今はみんなよりも劣っている状態なので、そこは脱出できるように。今の自分よりも超えていけるように、頑張りたいなと思います」

高校生が睡眠スキルを学ぶ意義について、睡眠の研究を続ける広島大学の林光緒教授も大きな期待を寄せています。
「高校生はまず、睡眠時間が圧倒的に足りないんですよね」 「記憶は睡眠中に定着するんですよ。その睡眠を削ってしまうと、記憶の定着も悪くて、勉強しても勉強しても成績が上がらない。だから高校生に対しては、睡眠教育って言うのがすごく重要なんです」
質の高い睡眠は、学力向上、スポーツパフォーマンス、メンタルヘルス全てに直結する、まさに「最強のスキル」と言えるでしょう。
基町高校の緒方教諭は、この取り組みを「広島市内の高校にも広げていきたい」と考えています。
「睡眠のことで指導に悩む学校は多いと思う。一緒に睡眠のことを考えていくような活動が広がって行ければなと思っています」
基町高校から始まった「パフォーマンスを上げる授業」が、これからどのような広がりを見せるのか。今後の広がりから目が離せません。

メラトニンを作るために必要な栄養素は?
睡眠のスイッチの役割を果たすのは「メラトニン」。このホルモンを作るためには、▽タンパク質▽ビタミンB群▽鉄▽マグネシウムが必要です。
鉄が不足するとうまく眠りに入れず、眠りの問題を抱えやすいそうです。
また、部屋の照明の選び方も重要です。青白い寒色系の光だとブルーライトをしっかり浴びてしまうため、メラトニンが抑制されてしまいます。個室の電気スタンドや天井灯などは、暖色系の光を選びましょう。
広島大学の林教授は、パフォーマンスをあげるために▽十分な睡眠時間の確保▽平日・休日問わず生活リズムを一定にすることが大切だと話します。
高校生であれば、8時間以上の睡眠時間を確保することが望ましいということです。
また、休みの日にはつい寝だめをしがちですが、生活リズムが崩れることで、時差ぼけのような状態になってしまいます(社会的時差ぼけ)。休みだからと言って、夜更かしして、朝ゆっくり起きるのではなく、できるだけ起きる時間を一定に保ちましょう。

授業風景

睡眠スキルなどの授業が行われる基町高校

授業風景

野球の練習をする大坂さん

大坂さんの部屋に貼られた1日のスケジュール

授業風景

今後の展望について語る基町高校・緒方教諭

パフォーマンスを上げるために必要なこと
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