PR
これは戦後、お好み焼を広島のソウルフードに育て上げた“みっちゃん”こと井畝満夫さんの物語である。
場面は満州に戻ります。
1945年8月8日、ソ連は日本に宣戦布告し、大軍勢で満州への侵攻を開始しました。満州はまたたくまにソ連の占領下に置かれました。
8月15日、日本敗戦。しかし終戦後も戦争は終わりませんでした。
「蒙古軍には何をされるかわからない」「ナタを持った現地人が追いかけてくる」・・・両親と子供5人、みっちゃん一家は家を捨てて逃避行に出ました。南へ。とにかく南へ。ソ連兵の目を避けて、夜道を歩き続けます。
ある晩、一家は小学校に辿り着きました。中を覗くと、校舎は逃げ惑う日本人でいっぱいでした。みっちゃんたちは仕方なく別棟の化学室で眠りました。
夜が明けて外に出ると誰もいません。校舎に隠れた日本人の大半はソ連兵に見つかり、連行されてしまったのです。
逃避行の最中、みっちゃんはたくさんの悲劇を見ました。病死、餓死、虐殺、集団自決。怒り狂う現地人。足手まといとして捨てられる老人、赤ん坊。恐怖と狂気に取りつかれた人たち。
妹)「うわーん、うわーん、おかあさーん、おかあさーん!」
男A)「誰じゃ、うっさいガキをほったらかしにしとるのは。早う黙らせ。敵に見つかってしまうぞ!」
男B)「そんなガキ殺してしまえ。どうせこの先、生きて帰れんわ!」
父)「みつお、フミコの口をふさげ!」
みっちゃん)「え、俺が?」
父)「早う。早うせえ!」
妹)「お兄ちゃん・・・んぐぐぐ」
父)「死ぬときは、家族みんなで一緒に死のう」
みっちゃん)「おやじ・・・」
一家は家族7人、誰一人欠けることなく引き揚げ船に乗り、日本に帰ってきました。そして生まれ故郷の広島へ。しかしそこは原子爆弾で破壊され、荒野同然でした。
ホッとする間もなく、今度は裸一貫、ガレキの街で生き抜くための戦いがはじまりました。
■作・演出 清水浩司
■朗読 二階堂 和美


PR
新着記事
ランキング
※毎時更新、直近24時間のアクセス数を集計しています。
PR
コメント (0)
IRAWアプリからコメントを書くことができます!!