災害時にペットを理由に避難をためらう人は少なくありません。飼い主とペットが一緒に避難する「同行避難」について考えます。

スタッフ
「レインコート着てきたの~」

参加者
「雨が降っているので」

大雨シーズンに備え5月下旬、広島県動物愛護センターで開かれたのはペットの「同行避難訓練」です。

参加者
「どう逃げたらいいのか、どういう準備が必要なのか勉強になったらいい」

「同行避難」は災害時に飼い主がペットと一緒に避難することで、国も推奨しています。イヌやネコ、鳥類などの小型動物が対象で、広島県内には同行避難が可能な避難所は、およそ1500か所あります。

同行避難の1つ目のポイントは「焦らず安全に避難すること」です。

参加者(男性)
「尻尾が下がっている」

ペット災害危機管理士 上野貴子さん
「不安そう。抱っこしていると両手が塞がるのでコケないでください」

室内飼育の場合雨の日は散歩などを避ける飼い主も少なくなく、ペットが雨音や道路状況に慣れていないことがあります。

参加者(男性)
「ありゃ…止まっちゃった。みんなに囲まれていいね~」

記者
「雨の中の避難はどうですか?」

別の参加者(男性)
「やっぱり大変。本番のようで貴重な体験」

同行避難は人間だけの避難より時間がかかるため、より早めの行動を心がける必要があります。

ペット災害危機管理士の上野さんは、普段から雨の日に外出する練習も効果的だと話します。

ペット災害危機管理士 上野貴子さん
「普段散歩し慣れている場所ではないし、傘を開く音や傘に当たる雨音で、ドキドキしている犬がいた。災害時はもっと厳しい状況になる。荷物も増える」

同行避難は避難所に到着して終わりではありません。

避難所の”手続き”と”しつけ”の重要性

2つ目のポイントは「受け付け」です。

避難所スタッフ(訓練)
「避難に関してこちらに記入をお願いします。上に飼い主、下に犬の情報を記入してください」

避難所によって異なりますが、鑑札番号や接種したワクチンの種類・時期など、飼い主はペット情報の提出を求められることがあります。

参加者(男性)
「初めて書いたが難しい」

参加者(女性)
「結構大変」

実際の避難所でも、この受付に手間取る飼い主は少なくないといいます。

ペット災害危機管理士 上野貴子さん
「皆さん時間がかかっていた。突然書けと言われると難しい項目がたくさんある。
(記者 すぐには出てこない)そうだと思う。それを宿題と思って、調べ直すことをしてもらいたい」

防災バッグなどの中に、ペット情報のメモをあらかじめ入れておくなど備えが有効です。

被災地の避難所では、人間とペットが過ごす場所は別々に分けられます。ほかの避難者の中には、アレルギーや動物が苦手な人もいるためです。

最も重要な3つ目のポイントは「しつけ」です。

クレート内に入る犬
「あ~すごい!」

避難所でペットはクレートと呼ばれるケージ内で、飼い主と離れて過ごすことになります。しかし…。

クレートに入ることを嫌がる犬
「嫌だ~嫌だ~」

クレートに入ることを嫌がる別の犬
「ハウス!ハウス!あら…逃げた…」

クレートに入ることを嫌がったり、中で吠えたりしてしまうペットも少なくありません。ペットがクレート内でストレスなく過ごすためには、普段からの練習が必要です。

ペット災害危機管理士 上野貴子さん
「家の片付け、行政手続きなどに行く際に、四六時中犬を抱っこしたままにはいかない。飼い主のそばを離れられなくなっている犬などは、避難所内にいることが難しくなるかもしれない」

実際の避難所では、こうしたペットの鳴き声やにおいなどが原因のトラブルは少なくありません。

7年前の西日本豪雨で被災した熊野町でも…。

西日本豪雨の教訓 ”同行避難意識したハード整備”と”防災訓練”

大原ハイツ自主防災会 松田秀則会長
「みんなしんどい。これからの生活どうなるの?というのが一番心配だった」

松田さんは当時1か月以上、避難所で生活をしました。被災者が体育館などで過ごし、動物たちは廊下などにいたといいます。

大原ハイツ自主防災会 松田秀則会長
「出入りするときに、においの問題が起きて移動してもらった。ペットも家族なので、納得いかないところもあるだろうが、基本『人』。かわいそうだが、そっちが優先になってしまう」

熊野町はこうしたトラブルを教訓に、避難してきたペットを屋内で隔離収容できる施設を、災害後に3か所整備しました。それぞれイヌ20匹・ネコ10匹が専用の部屋で過ごせますが、全国的な整備は進んでいません。

熊野町 三村裕史町長
「ペットを飼っている世帯は多いが、そうではない世帯もある。同じ避難者として尊重しないといけない」

熊野町はハード整備と並行して、防災訓練にも力を入れています。6月8日には同行避難訓練を実施しました。

参加者(女性)
「(記者 こういうイベント初めて?)2回目。関心は高い。熊野町は以前怖いことがあったので…」

別の参加者(女性)
「こういう場に慣れておくのはいいこと」

ペット災害危機管理士の上野さんは、災害時に躊躇せず「同行避難」できるように、基本的なしつけや健康管理など、日頃の備えを大切にしてほしいと訴えます。

ペット災害危機管理士 上野貴子さん
「過去の災害でも、ペットがいるから避難しなかったという人がいる。それで尊い命が奪われたこともあるので、動物がいるから避難しないではなく、動物も一緒に避難することをしてほしい」

「飼い主」と「ペット」のいのち守る”同行避難” ポイントと課題まとめ

梅川千輝 気象予報士(RCCウェザーセンター)
災害時に飼い主がペットと一緒に避難する同行避難は、国も推奨しています。避難をためらうことで、飼い主の安全が脅かされる可能性があります。

対象はイヌやネコ、鳥類などの比較的小型な動物で、大型動物や特定動物などは受け入れ不可となっています。

同行避難が可能な避難所は、広島県内に1500か所あり、県防災Webなどで確認できます。受け入れ体制などは避難所によって異なるため、注意が必要です。

避難所では「人」と「ペット」は別々の場所で過ごします。

ペット災害危機管理士の上野さんは、デイキャンプなどペットにとって非日常空間で、飲食や排泄をさせてみること。普段ペットと一緒に寝ている場合は、別々に寝る日を作り、飼い主と離れて過ごす練習をしておくなど、普段からの備えが重要だと話していました。

また、避難所にクレート(ケージ)などは置いてないケースがほとんどなので、飼い主が準備して避難する必要もあります。

避難所への避難だけが全てではありません。避難所が心配という方は、緊急時にペットを預けられる親族や知人、事業者などをあらかじめ探しておくと、安心につながります。

西日本豪雨のときは、民間のペットショップなどが一時預かりのサービスをしていました。

発災直後は「人」への対応が優先されます。ペットの命を守れるのは、飼い主だけだと改めて感じました。飼い主は災害に備え、こうした情報を事前に知っておくことが大切だと思います。