日本政府は18日、核兵器禁止条約の締約国会議へのオブザーバー参加を見送ることを正式に表明しました。核廃絶に取り組む被爆者や市民団体は、政府を批判する一方で、自ら主体的にこの会議に提言を出そうと活動していました。
東京都内で、2日間にわたって開催された「核兵器をなくす国際市民フォーラム」。国内外から、およそ900人が参加しました。
核兵器をなくす日本キャンペーン 田中熙巳代表理事)
「素晴らしい集会になっていて、それがこれからこの1年の大きな運動になっていって、その中で、締約国会議にもう少し日本政府がしっかりやれるように」
フォーラムでは、3月3日から開催される核兵器禁止条約第3回締約国会議への提言づくりも行われました。中心となったのは、広島を拠点に海外の核被害者の調査や援助に取り組む研究者や専門家たち。テーマは、会議の主な議題の一つ、「核被害者の援助」についてです。
明星大学 竹峰誠一郎教授)
「この核被害者援助とか、環境修復とか、国際協力に取り組むっていうのは、核兵器がこの80年間存在し続けてきた結果、生み出されてきた、まぁ負の遺産とも言える、核兵器が遺してきた問題と向き合うことなんですよ、と」
実は、締約国会議への提言は、政府だけでなくオブザーバー参加する市民団体からも可能なのです。
参加者
「どこかに一言でも、(高知県などの)船員達のことも日本の被害としてあるんだってことを単語1個でもあると嬉しいなって…」
明星大学 竹峰誠一郎教授
「ヒロシマ・ナガサキだけじゃなくて?」
参加者
「はい」
日本が受けた核被害として、2度の原爆投下だけでなく、冷戦期の核実験で遠洋漁業の船員たちが被ばくしたことにも触れることにしました。
核兵器をなくす日本キャンペーン 渡部朋子理事
「かなり、なんか市民サイドの文章になったみたいな気がして良かったな、と思ってます」
フォーラムでまとめた内容は、市民団体の集合体である、「核兵器をなくす日本キャンペーン」からの提言として、提出されます。
核兵器をなくす日本キャンペーン 田中熙巳代表理事)
「放射線被害に限定されていると。それ以外の被害はまだ考慮されていないという風に」
提言では、各国でヒバクシャを支援する法整備の参考にしてもらおうと、日本の「被爆者援護法」にも触れました。
核兵器をなくす日本キャンペーン 川崎哲専務理事)
「(日本政府が)こういう援護策をしている、という情報提供をするだけで、世界中の核実験の被害国、そういう人達にとっては大変参考になるんですよ」
「本来は、政府がきちっと情報提供すべきだと思ってます」
市民団体の専務理事を務める、ICAN国際運営委員の川崎哲さんは、「提言には、広島・長崎の経験を基に、世界のヒバクシャを支援してきた活動が活かされている。締約国会議で必ず役に立つ」と強調します。
核兵器をなくす日本キャンペーン 川崎哲専務理事)
「こういう話は、本当に具体的な話で、そういう(ヒバクシャを支援する)グループを支えることが、本当の意味での被害者援助になるのだということで、そういう具体的なものが書かれて、出されて、参考にされる、そういう流れだと思います」
核兵器をなくす日本キャンペーン 渡部朋子理事)
「やはりきちんと、広島の市民目線、あるいは日本の市民目線の提言をきちんと出したい。私たちが政府を引っ張りたい!もうそれにつきます。何やっとるんね!と思ってるからね」
「条約」というと、国同士が一般人からかけ離れたところで結ぶもののように感じられますが、今回のような、一般市民が関与する場面を目の当たりにすると、次の時代を作っていくというダイナミズムが感じられました。
「核兵器禁止条約」は、ある意味、まだ生まれたてのフワッとしたもので、その具体的な中身や、中身がが決まるまでのステップが明瞭ではありません。だからこそ、市民が条約を育てていくことができる、とも言えると思います。
NGOには、政府のような投票権はありませんが、会議にオブザーバー参加ができ、そこでは発言も可能だし、提言することもできます。日本政府が「オブザーバー参加すらしない」としても、私たちには市民の声、被爆者の声を届けるチャンネルがある、ということです。
今回、核兵器をなくす日本キャンペーンが提出した、「被害者援助」についての提言は次の6つのポイントです。
全体的には、「当事者が参加できる仕組みづくりをしましょう」ということ。しかも、国際信託基金が設立されるまで時間がかかるとしても、(1)~(5)は、すぐにでも始められること。「決定するまで動かない」のではなく、「できることから始める」ことを求めています。
なお、核兵器をなくす日本キャンペーンが提出した提言は、2種類。「核被害者援助について」と、「条約の普遍化に向けて」。公式HPで公開されていますので、興味のある方は、ご確認ください。
新着記事
コメント (0)
IRAWアプリからコメントを書くことができます!!