宇井賢二郎 館長
「普通に考えてゼロから水族館造りました。最後水族館閉じました。7年でやりました…激動でしょうね」
2017年、広島市の郊外に親子連れが手軽に行けるマリホ水族館が完成。水族館があったのは郊外のアウトレットモールです。
建設費は8億円ほど。1日およそ500人を集客していました。年間パスポートが好評で、この小さな“遊園地と水族館”は子どもたちにとって欠かせない場所でした。
今後、敷地にはサーキットなどが作られ、乗り物関連の施設ができる予定です。
来館者はー
子ども「推しはサメとクラゲです」
母「子どもが魚も種類を覚えたりしてきて興味もってきたところだったので身近になくなるっていうのは寂しいです」
飼育スタッフは7名。この水族館で働くために広島に移住してきた人ばかりです。
宇井館長も横浜から単身、広島へ。新しく水族館を作るため、各地の水族館での豊富な経験を持つ宇井館長に白羽の矢が立ちました。
宇井賢二郎 館長
「水族館をイチから造るという機会が人生の中であるか?と言われたらない。仕事がすごくできる人でも縁がなければプロジェクトに携わることはない。すごくワクワクしましたね…。
こんな短時間で水族館を立ち上げて、閉館まで片付けまでした人間がいるか?って言ったらいないですよ。こんな思いを他の人にさせるのもね。そういう意味で自分でよかったかな。こんな思いをほかの人にはさせられない。」
掃除をはじめとする雑用は、館長含めた全員の仕事です。ただ、スタッフで飲みに行ったりはしないそうです。
宇井賢二郎 館長
「行かないですね。ワシが行かないですから」
記者
「スタッフと距離をおくワケは?」
宇井賢二郎 館長
「自分で動いて自分で学んで…。やっぱり自分で得たものって忘れないんで。」
スタッフ金丸仁美さん
「館長は、ちょっと堅い部分がありますけどすごく尊敬しています(笑)。魚の餌やりは醍醐味なので、若いスタッフにやらせてあげたいって…。潜水作業とか掃除とかはされるんですけど餌やりはしないんです。」
2024年12月1日、マリホ水族館、最後の日がやってきました。
宇井賢二郎 館長
「きょうで水族館はおしまい。残念ながら…。いつも言うように“最終営業日だから”っていうことはない。各自いつも通りいい仕事をすればそれでいい。がんばりましょう」
スタッフ金丸仁美さん
「はじめから、開館の日から言われていることなんです。いつも同じ状態、いつもお客さんに満足できるものを届ける…。きょうは最後の日ですけど、きょうが特別じゃない。」
最後でも、特別じゃない…。
一方で、なかなかそうもいきません。
金丸さん、最後の日課です。
スタッフ金丸仁美さん
「開館当初から日付を毎日書いているんです。最後ですよ。これ泣いちゃうかも…。来ていただいた方には、人生で一回のマリホ水族館かもしれませんし、それでどれだけ心に印象を残すじゃないですけど、思い出として残してもらえるのかっていう思いで書いています。」
閉館から2日後。移動先の水族館スタッフのチカラも借りて、およそ1週間で150種5,000匹ほど、水の中の生き物の引越しです。
宇井賢二郎 館長
「もうごめんなさいですね。本来なら最後まで面倒をみる前提で仕事をしている。その前提でここに連れてきたわけですから…。責任放棄だといわれても弁明はできません。」
生き物たちは無事に新天地へ。
一方で、スタッフは…。
スタッフ金丸仁美さん
「この先ですか?決まってないですけど生き物に携わる仕事がしたいです。家族が広島にいるので、他の水族館を求めて違う県に行くぞ!みたいなのができないんです。広島で何か探していくかな。」
スタッフ吉田稜さん
「まだ転職活動中です。私の意志としては水族館を小さい頃から目指していたので、このまま続けたいなっていう思いがあります。
難しいんですけど、楽しさの方が勝っているんで…。モチベーションを保って続けて成長したいなっていう思いがあります。」
直接、スタッフへ激励の言葉をかける姿はありませんでしたが、館長の想いは…。
宇井賢二郎 館長
「技術を持っている、知識を持っている人間に育っているのであれば、それぞれに自然と道は拓けてくるでしょうから…。
ここでしか通用しない技術なんて小さいですよ。面白くないじゃないですか。どんな仕事においてもやっぱりその場所でしか咲かない花じゃしょうがない。どこに行ってもしっかり咲く花でいてほしい。どこ行ってもやれるよ。」
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