今年のビッグイベントの一つが、マルミミゾウの出産・・・ご存じでしたか?
■ゾウの種類
そもそもゾウって、とっても貴重なんです。東南アジアにいるアジアゾウと、アフリカ大陸にいるマルミミゾウ、サバンナゾウがいます。その中でも、マルミミゾウは最も絶滅の危険度が高いとされていて、飼育下でも、わかっているのは世界で3頭しかいません。
■ゾウの繁殖は難しい!
ゾウの繁殖は、日本の飼育下では、140年ほどの歴史の中で流産、死産を含めてもおよそ40例のみ。アフリカ大陸のゾウに限れば、13例の出産で無事に育っているのは、8頭のみ。マルミミゾウの出産は国内初になります。
■注目のカップル メイとダイ
今回のカップルは、現在、広島市安佐動物公園で飼育されているメスのメイとオスのダイ。出産予定は今年の夏~秋ですが、妊娠1年を経たここまででも、すでに奇跡的なことなんです! これまでの軌跡とこれからの期待、取材しました!
■月に1度のエコー検査
お腹のエコー検査は、月に1度。メイは、朝からご飯ヌキで挑み、3人の飼育員から、好物のリンゴなどをもらいながら、獣医3人がかりで診察されます。
ゾウ担当 栗原龍太さん
「私たちもそのゾウのエコー画像を見るっていうのが初めてなので、これが何かねっていうのをみんなで話しながら、ああじゃあない、こうじゃないって言いながら見ているところなんですけども」
■メイとダイの軌跡
マルミミゾウのメイは、2001年にこの園にやってきました。現在、推定26歳のメスです。マルミミゾウと判明した2008年以来、同じ種としての繁殖が検討されてきました。
同い年のダイが、秋吉台サファリパーク(山口県)やってきたのは、3年前の6月。マルミミゾウ繁殖プロジェクトが、ぐっと進んだ時でした。
ゾウ担当 栗原龍太さん
「ゆくゆくはメイと同居させて2世を産んでくれたらいいなと思っているので、その時にはまた子どもを見に来てもらえばと思う」
■マルミミゾウ繁殖プロジェクト
大きな動物同士がケンカをしてしまうと非常に危険なため、ダイとメイのお見合いは慎重に行われました。ただ、攻撃性もなく相性は悪くない、とわかってからも、ダイはなかなか、メイのテリトリーに踏み込めません。
阿部勝彦園長
「ダイくんがこっちに来れないという状況で1年が過ぎて、これ、(繁殖までに)いつまでかかるだろうということでしたけど」
Q.なんで来れなかったんですか?
「あそこにね、見えない壁があるみたいで、ダメなんですよ」
ゾウ担当 佐々木直行さん
「ダイが臆病な面もあるのと、ちょっと頑固な面があるのかなという風に感じてました」
一方、メイの方は、かなり積極的にダイに近づきます。
阿部勝彦園長
「メイちゃんはへっちゃらで、(ダイのテリトリーに)入っていって、ご飯が置いてあると、それをパパパッと食べて、ダイくんがアタックというかね、こうやってくると、ハイハイって言って、こっちにメイちゃんは逃げていく」
Q.食い逃げじゃないですか?
「そうそう、食い逃げですよ」
■同居のチャンスは年に3~4回?!
メイとダイが同居できるのは、メイの発情期のみ。見た目ではわからないメイの発情期は、週に1度の血液検査から、およそ100日ごとに数日間しかないとわかっていました。
そんな貴重なチャンスの中、ヤンチャなメイと慎重派のダイは、出会いから1年半・・・。2023年12月の2日間で、2回の交尾が成功しました。
ゾウ担当 佐々木直行さん
「それまでの同居の時にも、(ダイが)メイに対してすごくアプローチしたりとかっていうのが多くなってきたのと、あとダイを外に出す時に大体餌を用意してるんですけど、その時には餌に行かずにすぐにこちらのゲートの方に」
Q.食い気より色気?今日は先にメイに会いたいということ?
「だと思います」
■ゾウの妊娠適齢期って?
一般的に、アフリカゾウは15歳くらいから、栄養状態のいい飼育下では10歳くらいから妊娠可能だと言われています。メイはこのとき、推定24歳。高齢出産のリスクを減らすためには、早めの妊娠が期待されていました。
ゾウ担当 佐々木直行さん
「メイはちょっと嫌なことがあるとすぐこっちへ逃げてしまうんです。で、そうなるとダイは行かれないので、全然接触できないとなると、それでは埒が明かないので。で、そういったダイの行動を見て、もしかしたら今日がメインの発情のピークかなっていう時に、思い切ってメイをこっちの部屋に入れて閉めて、そこで交尾がうまくいったんですね」
獣医師 野々上範之さん
「本当に交尾できるタイミングで一緒にできるかは、担当者さんの本当ある意味カンと技術っていうところがあって、今回すごいなと。正直、同僚ですけど、本当にすごいなと思ってますね」
■妊娠の予感
次の発情期となった3月、メイはダイのちょっかいをするりと交わしました。ダイもメイに以前ほどの関心を示さないことから、妊娠の可能性とも考えられました。
阿部勝彦園長
Q.メイがダイにそっけない?
「そうですね、期待してしまうんですけど」
■様々な方法で妊娠を確認
岐阜大学で実施されている、血中ホルモン濃度の調査でも、4月には、妊娠の兆候がみられました。
安佐動物公園として、「メイの妊娠」を正式に発表したのは2024年8月。エコー検査で、お腹に袋状のものを確認されたからでした。
繁殖が難しい動物だけに、獣医師の野々上さんは、期待しすぎないよう注意していました。
獣医師 野々上範之さん
「どちらかというとネガティブな、最悪に備えたいと思う方の獣医なので、これ病気だったらどうしようってドキドキしながら」
9月のエコー検査で、背骨や肋骨が見えて初めて、やっと確信したそうです。
獣医師 野々上範之さん「やっぱりその時が1番興奮しました。これ、ちゃんと赤ちゃんの形してるなってのが目に見えた時ですね」
■奇跡的?! メイとダイの相性
一般的に、交尾したからといって、すぐ妊娠するわけではありません。しかし、この2頭の相性は抜群でした。
阿部勝彦園長
「2日連続でね、交尾はしたんですけど、それで妊娠というのはね、本当にすごい、もう本当に奇跡的だと思いますね。それはびっくりしました」
■国内初の出産に向けて
ゾウの妊娠期間は、20~22か月。ただ、マルミミゾウの出産について、詳しいデータはなく、今後も注意が必要です。
獣医師 野々上範之さん
Q.もう全然大丈夫だっていうことではないんですか?
「全然ないですね。そもそも象が流産が多い時期っていうのが、妊娠の15か月と17か月っていう報告があります。そうすると、多分今年の3月だったり5月ぐらいに・・・」
動物園のスタッフは、ヒトが手出しできることは少ないが、何か起きたときの変化を見逃したくない、と言います。
ゾウ担当 佐々木直行さん
「本当に月並みではありますけど、無事に生まれてくれるのと、あとはメイがちゃんと子どもを自分の手で育ててくれるっていうのが1番の願いですね」
獣医師 野々上範之さん
「本当祈るような。このお正月も初詣で、そればっかりお願いしてきたので」
メイの出産は今年8月から10月、とみられています。マルミミゾウの出産は国内初で、今後も日本で、マルミミゾウが見られるかどうかは、メイとダイにかかっている、とも言えます。
■クラウドファンディング
安佐動物公園が開始した、妊娠・出産・育児を支えるためのクラウドファンデング(1月24日まで)は好調で、最終目標の2400万円を達成しました。(放送後更新)
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