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みみコミ💬奥田元宋・小由女美術館「熊田千佳慕の世界展」開催中!

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radiko:田口麻衣noみみコミ | RCCラジオ | 2024/12/15/日 16:30-16:45
内容:『「熊田千佳慕の世界展」―愛するからこそ美しい』
出演者:奥田元宋・小由女美術館 学芸員 渡邉憲司さん

三次市の奥田元宋・小由女美術館では、企画展『「熊田千佳慕の世界展」―愛するからこそ美しい』を開催中です。熊田千佳慕とはどんな人なんでしょうか、またどんな作品があるんでしょうか。詳しいお話を、学芸員の渡邉憲司さんにうかがいました!

熊田千佳慕 (神奈川県立博物館「J.H.ファーブル展」の会場で 1989年)

早速ですが、熊田千佳慕とはどんな人なんですか。
昆虫や草花を徹底的に観察し、超細密な水彩画で描く画家として有名な方で、主に児童向けの絵本や自然を紹介する本の挿絵を描いてきました。名前を知らなくても、絵はどこかで見た記憶がある、という人が多いタイプの画家ですね。
また、自然や生き物をこよなく愛し、命は生まれた時も散りゆく時もそれぞれの美しさがある、そうした姿を絵に描き表し続けています。「自然は美しいから美しいのではなく、愛するからこそ美しい」という言葉に、熊田千佳慕さんの本質が集約されていると思います。

素敵な言葉ですね!
代表作が「絵本 ファーブル昆虫記」。どんな絵本か教えてください。
フランスの昆虫学者ジャン・アンリ・ファーブルの代表作「昆虫記」にある昆虫の生態を絵画化した作品で、綿密な取材や資料検証に基づきつつも、ファンタジー好きである千佳慕さんの演出により親しみある昆虫の姿に仕上がっていると思います。とはいえ、筆先の毛を2,3本しか使わないとされる超細密描写と多彩な色遣いで、目の前で昆虫が動き出すかのようなリアルさを感じさせる描写となっています。
子ども時代は身体が弱くて虫や花とばなり遊んでいた千佳慕さんに、お父さんがファーブルについて話をしたところ、すっかりファーブル好きになってしまい、いつかファーブル昆虫記の絵を描きたいと思い続けていただけに、この絵本の挿絵は気合が入りまくっているのを感じます。

《バラのゆりかご》 1978-1988年 ©chikabo kumada

《リラの花まつりとキンイロハナムグリ》 1978-1988年 ©chikabo kumada

《恋のセレナーデ》 1991年 ©chikabo kumada

描写がとても細かいですね!そして色鮮やかで美しいです。
70歳の時に国際的に評価されたとのことですが、それまではどんな生活をしていたのですか?

23歳で日本工房に入社しデザイナーとして活動します。
戦後、デザイナーをしながら児童雑誌の仕事も手がけていましたが、当時の絵本事情が本人としては不満だったようで、子どもたちに上質の絵本を届けたいという思いが強くなり、勤め先をやめて絵本作家の道を歩み始めました。その作品はとても細かい描写のため、ひとつの作品を仕上げるのにとても時間がかかるので生活は苦しかったそうですが、「ファーブル昆虫記」をテーマにした絵本で70歳の時にボローニャ国際絵本原画展に入選し、一躍脚光を浴びて、時の人となります。
その後、個展の開催やメディアへの出演などを通して日本中の注目を集めながら、98歳で亡くなるまで制作を続けました。

もちろん絵も素晴らしいですが、添えられている言葉の数々も印象的ですね!

そうなんです。「今も現役だから、僕には老後が無い。ときめかなくなっちゃったら、おしまい」という言葉は、まぁ私も中年なのである意味勇気づけられますし、まだまだこれからと言われている思いがして、前向きになれる言葉ですね。千佳慕さん自身が70歳から注目を浴びて98歳で亡くなるまで活動を続けていたわけですから。
また、「神から許されたこの道をコツコツと歩き続けることが好きだ」という言葉も、細かい線を愚直に引き続けて、長い時間かけて作品を作り上げるモチベーションのように感じられて、近道するばかりが人生じゃない、と、これも勇気をくれる言葉だと思います。

「絵本 ファーブル昆虫記」のほかにも様々な作品が紹介されているんですよね。
昆虫記で描かれたヨーロッパの昆虫画にも、日本の自然の中で生きる昆虫を描いた作品や、その他の動物、そして草花を描いた作品もあります。

《真夏の夜の皮ぬぎ》 1976-1988年 ©chikabo kumada

《ミャーン》 1976-1988年 ©chikabo kumada

その他にも、リアルな自然の風景の中で、昆虫や動物が妖精・フェアリーといっしょに遊んでいるようなメルヘンな世界を描いたもの。
70年以上前に描かれた「不思議の国のアリス」の絵本原画。

《3月うさぎのいえのにわでは、3月うさぎとぼうしやとやまねこがお茶をのんでいました「不思議の国のアリス」》1951-1953年 ©chikabo kumada

日本での映画公開に際して絵本化された「オズの魔法使い」
そしてリアルな昆虫で冒険や戦いのシーンが描かれている「みつばちマーヤ」シリーズなどの絵本原画も、熊田千佳慕の独特のセンスが感じられます。

《ペピーのバラのやど「みつばちマーヤの冒険」》 1993-1996年 ©chikabo kumada

そのすべてにおいて、細密描写が隅々まで行きわたっていて、見ていて楽しさとともに緊張感も伝わってくる作品が170点以上ございますので、圧倒される空間になっているかなと思います。

どんな点に注目して観てもらいたいですか?
やはり特徴的な細密描写を体感していただきたいです。また、色を塗るというより線の集合で昆虫や草花の姿を構成した作品がほとんどという事で、熊田千佳慕さんの独特の技法を確認していただきたいと思います。
そして、自然とあらゆる命を分け隔てることなく愛して、無名時代から有名になって以降も変わらず実直に自分の絵を描き続けた熊田千佳慕さんの人となりを表す言葉も作品とあわせて展示していますので、作品と千佳慕さんのひととなりの両方を好きになっていただけたら幸いです。

70歳で「絵本ファーブル昆虫記」を出版して、98歳まで現役の絵本画家。そのエネルギーに感動しました!絵本というと子供向けかと思ってしまいますが、大人こそ見たい作品展ですね!

「熊田千佳慕の世界~愛するからこそ美しい~」

期間 1月13日(月・祝)まで開催。
場所 三次市 奥田元宋・小由女美術館
休館日 12月25日以外の毎週水曜日・12月27日から1月1日まで
入場料 一般1000円/高校・大学生500円/中学生以下は無料
問い合わせ 奥田元宋・小由女美術館 0824-65-0010

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