みなさんは「オストメイト」という言葉をご存じでしょうか。
病気や事故などによって、お腹に「ストーマ」と呼ばれる人工肛門や人工膀胱を持つ人たちを指します。国内には、およそ20万~30万人いるとされていますが、普段は装具の上から服を着ているため、外見からは分かりません。
そんなオストメイトへの理解を広げようと、ファッションの聖地・フランスのパリで特別なファッションショーが開催されました。仕掛け人の1人は広島の医師。そこに込めた思いとは?
パリのランウェイ モデル全員が当事者
6日、フランス・パリで行われたファッションショーには、西陣織をはじめとする日本の伝統工芸と、近未来的なアートデザインを組み合わせた華やかな衣装を身にまとい、国内外のモデルたちがランウェイを歩きます。

パリでのファッションショーの様子(提供:日本福祉医療ファッション協会)
モデルたちのお腹に目を向けると、素敵なデザインが施された袋のようなものが・・・。これはストーマパウチ。排泄物を受け止めるための医療用装具です。
今回、モデルを務めたのは、全員がオストメイトの当事者でした。
プロジェクトリーダー・矢野雷太さん
「本当にありがたいです。これによって、ストーマ、オストメイトという言葉を知る人が増えて、一緒に生活しているんだということを想像できる人が増えてくれるといいなと思っています」
「ばれたらまずい」から「誰もが知っている」社会へ
このイベントの仕掛け人の1人、プロジェクトリーダーの矢野雷太さんは、広島記念病院(広島市中区)の大腸外科や排便機能外来を担当する外科医です。

今回の企画は、「オストメイトが少しでも生きやすい世の中を作りたい」との思いから生まれたものでした。
矢野雷太医師
「当事者はオストメイトやストーマという言葉を知らない人だらけの中で生活するとなると、『ばれたらやばい』になるのではないかと。周りの人がストーマのことを知っている人ばかりという環境になれば、もっと生きやすくなるかな」
国内に20万人から30万人いるとされるオストメイト。しかし、装具の上から服を着るため外見ではわかりません。そのため、日常生活で周囲から誤解を受けることもあるといいます。
例えば、オストメイト対応トイレを利用する際、車椅子を使っていないことで、「順番を抜かして入る健常者」と間違われ、舌打ちされたケースもあるといいます。排泄物を捨てるために必要な設備は整えられつつあるものの、その仕組み自体が社会に十分認知されていないのが現状です。
「一度思い切りかっこよく見せる」 パリを舞台に選んだ理由
まずは関心を持ってもらい、正しく知ってもらいたい。そのきっかけ作りとして、矢野医師たちが舞台に選んだのが、ファッションの聖地・パリでした。

矢野雷太医師
「袋を付けて生活している人を見たことがあるっていう人が増えると想像できる人が増えると思うんです。そのために1回、思い切り、めちゃくちゃかっこよく見せると言うことがステップとして必要なんじゃないかなと」
衣装デザインとショーの統括を担当したのは、もう一人の仕掛け人である平林景さん。10人のモデル、ひとりひとりに合わせて衣装をデザインしました。
平林景さん
「その人に似合うパウチを考えてから服を作っていった。そのイメージのパウチがその人と思ってもらったら面白いかな」
本番直前、出演する車椅子の男性モデルは「わくわくで、緊張もしている。服とか靴とかそういうのと一緒に、おしゃれなものとして伝えられた」と意気込みを語りました。
「世界を一緒に変えよう!」堂々と歩いたモデルたち
「Let’s Change the World Together.It’s Showtime!」
平林さんの合図で幕を開けたランウェイ。カメラを構えた観客を前に、モデルたちは、音楽に合わせて堂々と、そして優雅に歩きました。

パリでのファッションショーの様子(提供:日本福祉医療ファッション協会)
最後に仕掛け人の矢野医師と平林さんも登場し、会場は大きな拍手に包まれました。
出演したオストメイトモデル
「オストメイトでもきらびやかな輝ける場があって、これからも生きがいを持てるようなショーでした」
出演したオストメイトモデル
「めっちゃ楽しかった。もうちょい長くやりたかった。まだ知らない人がたくさんいるから、これからも発信していきたい」
目指すのは「見せなくても理解される社会」
仕掛け人の平林さんは、「ファッションショーは、普段興味のない人にまず振り向いてもらうための仕掛け。そのための最高のショーはできたんじゃないか」と手応えを語ります。

ファッションショーの仕掛け人(左:矢野雷太医師/右:平林景氏)
そして、矢野医師は・・・
矢野雷太医師
「最終的に目指しているのは、『装具を見せなくても自然に理解してもらえる社会』。そのために今回は、あえて思いきり美しく見せたと。今回、そのステップになったんじゃないかなと思います」
生きやすい世の中にするために・・・私たちができること
ショーで矢野医師が着用していたTシャツの胸元には、「全ての障害が目に見えるわけではない」という言葉が刻まれていました。

目に見えない障害を思いやり、理解していける世の中に・・・。広島から世界へと放たれた発信は、私たち1人1人の「知ること」から始まります。
矢野医師たちは、11月3日、東京大学安田講堂で、ストーマなどをテーマにしたシンポジウム「STOMA Néo-ART Symposium」を開催。ストーマや排泄ケアの最前線で活躍する専門家とともに、「選択肢が増える社会」の実現に向けた議論を深めたいとしています。







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