厚生労働省などのまとめによると、2025年に自ら命を絶った小中高生は538人。統計のある1980年以降、最も多くなりました。また、月別で最も多いのは、学校が再開する9月となっています。
夏休みが明けて、こどもたちの命を守るために大人たちができること、すべきこととは。専門家に話を聞きました。

広島修道大学 健康科学部 水野君平准教授
「まず理解しなければならないのは、こどもたちにとって『死にたいくらい辛い思い』を親や学校の先生に伝えることはすごく難しいということです。
そのうえで、学校に行きたがらない、登校をしぶるということがあれば、それば学校生活に起因する悩みのサインだろうと思います」

子どもの7割が「誰にも打ち明けていなかった」最新の研究で分かったこと

最新の研究では、自殺未遂で搬送された子どもの7割以上が、「死にたい気持ちを誰にも打ち明けていなかった」ことが分かっています。SOSが自発的に出されない場合、どう対応すればいいのでしょうか。

水野君平准教授
「やはりこどもと色々な会話をするということが大切だと思います。食事や、例えば一緒にお皿洗いをするとき、一緒に遊ぶ時。何気ない会話をすることが、こどもの心の安定にも繋がりますし、何か伝えたいことがこどもにあれば、ポロっと言えるようなきっかけ作りにもなります。普段通りこどもと話したり、楽しんで過ごすなかで、気になる点があれば『どうしたの?』と声をかけてもらうことが良いのではないでしょうか」

家庭で注意すべきSOSのサインとは 専門家による具体例

こどもが悩みを言葉で表わさない、表せない場合、どういった点に注意するのが良いのでしょうか。

水野君平准教授
「(こどもが)イライラしている、頭痛や腹痛がある。または眠れない。深夜まで起きて睡眠時間遅いなど、普段と違う『違和感』に注意をしてください。『いつまでも夏休み気分』『新学期への切り替えができていない』などと考えがちですが、少し気にかけてもいいのではないかなと思います」

水野君平准教授
「夜遅くまで寝ない、ゲームなどに夢中になりすぎている。そういった場合は『ダラけてしまっている』というより、不安などから気を紛らわせているという可能性もあります」

SOSに気づいたら…「家族もひとりで抱え込まないで」

もしこどもの違和感に気が付いた場合、その家族も一人で抱え込まないでほしいと言います。

水野君平准教授
「こどもに対する不安を一人で抱えると、家族自身もすごく悩んで疲れてしまいます。家族同士で話したり、信頼できる他人や相談窓口に話をすることが、家族自身の心の持ちようとしてもいいでしょう。相談することで、別の視点から意見をもらうことで、思い過ごしだと分かることもあるかもしれません」

こどもによっては、家庭の状況が悩みの原因であるケースもあります。家庭だけでなく、地域社会全体でこどもを見守っていくことはできるのでしょうか。

水野君平准教授
「今の地域社会はかなり家庭と地域が切り離されているので、難しい部分は確かにあるんです。地域の大人が、第三者のこどもに声をかけるということも憚られる気持ちも理解できます。ただ、『なんだかこれは普通じゃないな』と感じたら声をかけてあげることは決して悪いことではありません。また、親が知り合いであれば、親に会ったときに『あの子、悲しそうな顔して家帰っていたよ』というように話をしてみるのもいいかもしれません」

他人のこどもは見て見ぬ振り? わたしたちができること

こどもの命を守るために、地域としてどうあるべきなのでしょうか。

水野君平准教授
「今こどもは名札を学校の外でしないですよね、防犯の意味ではとても大切なことなのですが『どこの小学校のこども』ぐらいのことは地域の人が分かるような、もちろん犯罪に巻き込まれないような良い関係だったら、良いんじゃないかなと思います。それからこども食堂など、こどもが地域の人とつながるような取り組み。限られた機会のなかでも、地域の人がこどもと繋がるということも、大事なのではないかと思います」

水野准教授は、地域の誰もができることとして、まずは「ゲートキーパー」の存在を挙げ、ひとりでも多く輪を広げていくことが大切だと話します。

誰でもなれる「ゲートキーパー」とは 4つの役割

水野君平准教授
「ゲートキーパーとは、特定の資格ではありません。悩みを抱える人に寄り添う思いを持った誰もがゲートキーパーになれるんです」

ゲートキーパーには4つの役割があるといいます。

水野准教授
「1つ目は、『変化に気づく』。様子がおかしい、違和感がある、落ち込んだ顔が続いている。そんなときに、声をかける。
次は『耳を傾ける』。自分の物差しで判断せず、その人が悩んでいることをしっかりと聞く。話してくれたことをねぎらうことが大事です。
3つ目は『支援先につなげる』。学校の先生やスクールカウンセラー、専門の医療機関などにつなぐ。自分だけで解決するのではなく、専門的な知見を持った人に、バトンをつないでいくことが大事。
4つめは『温かく見守る』。専門家につないで終わりではなく、寄り添い続ける。『何度でも相談に乗るよ』と声をかける」

けがをしたら「応急処置」、では心に悩みを抱えたら?

水野准教授はゲートキーパーの役割を「応急処置」に例えます。

水野准教授
「例えば、友達がけがをしたとします。捻挫や打撲したとすると、まずは応急処置をしますね。痛む部分を冷やしたり、固定したり。その後に、病院に連れていきますね。ゲートキーパーはそういうものと近いと思うんです。何か不調があるなとか、ちょっと変だなと感じたとき、まずは話を聞く。それから、自分で解決するのではなく、専門機関を紹介する。解決しようとするのではなく、『つなぐ』というのがゲートキーパーの役割なんです」

「生きる・生きない」を選ぶくらいなら、「学校に行かず命を守る」。

いま、悩みを抱えている小中高生に伝えたいこととは。

水野君平准教授
「こどもたちの生活の中で、学校はとても多くの時間を占めている。いまは、学校が世の中の全てであるかのように見えてしまうかもしれません。でも、人生の中で学校で過ごす時間はすごく短いわけです。辛いほど学校が嫌なのであれば、一旦行かないという選択をしてもいいのではないでしょうか。
何かしんどいことがあって『逃げられない』『変えられない』『どうすればいいか分からない』と感じたとき、つい『生きるか・生きないか』といった、極端な選択が頭をよぎってしまいがちです。
でも『生きる・生きない』ではなく、『どう生きるか』を考えてほしいなと思います。
学校に行くことが全てではない。大人だったら、例えば『すごく仕事が辛い』とか『もう仕事に行きたくない』と思ったら仕事を辞めて違う仕事を探す人だって多い。学校に行くのが辛いなら、行かない代わりに何をしようか考える。
『生きる・生きない』を選ぶくらいなら、『学校に行かずに命を守る』ほうが絶対に良いと思います。

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