去年、被爆80年の平和記念式典に出席した石破茂前総理と湯崎英彦前広島県知事。ともに政府、県のトップを務めた2人が対談し、核廃絶に向けた思いを語り合いました。

TBS 藤森祥平アナウンサー
「原爆投下から、そして終戦から今年で81年です。石破さん、今世界では本当に出口の見えない戦争が続いていて、核兵器をめぐる脅威、緊張は高まる一方です」

石破前総理
「めちゃくちゃな話になりましたよね。ロシアにしてもアメリカにしても、核保有国、国連の常任理事国が戦争を仕掛けるってのは、これ国連の秩序成り立たないですよね。我々が経験したことのない時代に間違いなくありつつある、そういう実感です」

藤森アナウンサー
「湯崎さんは県知事に就任された当時が2009年です。このまさにわずか15年余りで、これほどまでに世界を巻き込んだ戦争が状態化している、激変しましたよね」

湯崎前知事
「本当に様変わりしたと思いますね。元々はやはり『法の支配』をいかに構築していくか、強化していくかという世界だったのが、あっという間に逆転して。本当に怖い世界になってきたなと思います」

去年、石破前総理は平和記念式典で「核兵器のない世界」の実現を強調しました。一方でこれまで、安全保障の観点から「核共有」や「核の持ち込み」の検討を主張してきました。

石破前総理
「(日本の)周り中、核兵器だらけだからね。アメリカ1カ国だけの核抑止に頼っていいんですかと。それは決してそうじゃなくてね。『核の傘』ってよく言うんだけど、本当さしてくれるんですか。穴開いてないよね?という検証は常にしていかなければならないんです」

一方の湯崎前知事は、核抑止に頼らない安全保障のあり方を模索し続けました。去年の平和記念式典では「核抑止はフィクション」と訴え注目を集めました。

湯崎前知事
「核抑止とは『自分が(核兵器を)持っている、相手も持っている。使うと大変なことになるから、お互い使いません』と“思っている”ことなんですね。つまり、物理的現実性ではない。ということはそれは“フィクション”であるということなんです。その抑止が破られた時に、人類が終末を迎える可能性が非常に大きくある。それは耐えられないリスクではないか?ということ。それが核抑止の問題」

石破前総理
「今、湯崎さんのおっしゃった『何が起こるか分からんぜと、お互い打ち合ったら地球全体が何回滅んでも足りないぜ、そんな恐ろしいことはやめようね』という『恐怖の均衡』は相手が一定の理性を持っていることが前提なんですよ。だから独裁者の国、あるいは組織は恐ろしい。それに対してどうするんだということを、為政者としては嫌なことだけど考えざるを得ない」

湯崎前知事
「安全保障環境が厳しいという意見はあるが、日本が核共有、あるいは核の保有、核抑止の強化に一歩踏み込んで行ったときに、それに対する当然リアクションは出てくるわけですよね。より緊張が高まるのではないか」

核兵器を盾にした、ロシアによるウクライナ侵攻を機に、世界的に核抑止を望む声が強まりました。石破前総理は、ウクライナが旧ソ連時代に国内の核兵器を撤去し、NPTに加盟した「ブダペスト覚書」(1994年)に触れながら、核抑止の有効性について持論を語りました。

石破前総理
「もし仮に(ブダペスト覚書によって)ウクライナが核兵器を手放さなかったら、絶対にロシアはウクライナに手を出していませんよ。この問題をどう考えるんですかと、いうことですよね。綺麗事ならいくらでも言える。でもウクライナがそうだった」

これに対して、湯崎前知事は反論します。

湯崎前知事
「では、ウクライナが核兵器を持っていればよかったのか?ということになるわけですが、その議論を認めると、NPT(核兵器不拡散条約)体制は成り立たなくなる。『ウクライナが核兵器を持っていなかったから侵略された』のではなく、『ロシアが核兵器を持っているから誰もそれを止められなかった』ということなんです。

藤森アナウンサー
「今の視点はどうですか、石破さん」

石破前総理
「私はウクライナが核を手放さなかったら、ロシアは攻めて来なかったと思いますよ。で、ウクライナだって自分から使ったりはしませんよ。『ロシアが使ったら使うよ』ということが核を持っていれば言えたんだろうね」

湯崎前知事
「そうであれば、我々は北朝鮮の核保有も認めなければならない。イランの核保有も認めなければならない。でもそれは絶対に認められないということなんだと思うう」

核兵器の拡散を防ぐためのNPT再検討会議はことし、成果文書を採択できず決裂しました。11月には核兵器禁止条約の再検討会議が開かれます。ただ、唯一の戦争被爆国の日本は核兵器禁止条約には距離をとっています。

藤森アナウンサー
「石破総理(当時)のもと、日本は去年、核兵器禁止条約の締約国会議についてはオブザーバー参加ができないという形になりました。改めてどうお考えですか」

石破前総理
「これは参加できないかってのはだいぶん議論しました。でも参加することに意義があるのではなくて、参加して何が言えるんだいと、いうことでね。我々としてNPTというものの実効性:いかにして拡散しないかということを、唯一の被爆国としてまず注力しようと。日本が今すべきことは何なんだろうということで、(オブザーバー参加を)見送りました」

湯崎前知事
「実際にNPT、核禁条約の会合に出て感じたことは、日本に対する期待はものすごく大きいということ。核兵器廃絶に向けて日本は頑張ってるんだという姿勢を(世界に)見せて、各国と連帯をしていく。できることは貢献するということがすごく意味があることだと思う」

核廃絶に向けて日本がとるべき役割とは何でしょうか。最後に2人に聞きました。

湯崎前知事
「非核兵器国と連帯をして、日本として『力の支配』ではなく『法の支配』の重要性を説いていくこと。『法の支配』が危うくなっている今こそ、いかに守っていくかが重要だと思います」

石破前総理
「日本がこれまでにどれだけ平和に向けて努力をしてきたか、ということも伝えていかなければいかん。核抑止について日本が一番真剣に議論しているよねと思われる姿を世界に見せることではないでしょうか」