去年4月、広島県府中町の水分峡森林公園で、男性(当時52)の頭を木の棒で殴って殺害し、現金8万1000円などを奪ったとして強盗殺人の罪に問われている府中町の少年(17)に対し、広島地裁は29日、懲役20年の実刑判決を言い渡しました。

身長159cmと小柄な少年が起こした“強盗殺人”という凶悪事件。

その背景には「交際相手のパパ活」がありました。

事件に登場する4人関係性は?

事件の登場人物は4人。主導者である少年(17)、広島県海田町の男(19)=一審で強盗致死罪懲役18年=、愛媛県松山市の女(19)=恐喝の非行行為で少年院送致=、そして殺害された東京都の男性(当時52)です。

このうち、少年と男は2023年ごろに知り合った友人関係。少年と女は事件の3か月ほど前にSNSを通じて知り合い、広島と愛媛の遠距離恋愛をしていました。

また、女は2024年にSNSを通じて男性と知り合い、援助交際(いわゆる「パパ活」)を行っていました。つまり、共犯の3人のうち、男性と面識があったのは女だけです。

「お金を取るからパパ活相手を広島に...」

2025年3月下旬。少年は当時交際していた女が複数の男性と「パパ活」をしている事を知り、事件を企てます。

証人として法廷に立った女が、その経緯について語りました。

Q「少年からどのような事を言われた?」
A「『お金を取るからパパ活相手を広島に呼んで』と言われました」
Q「何人くらいに声を掛けた?」
A「10人くらいです」
Q「なぜ男性がターゲットに?」
A「連絡が返ってきた中で、一番早い日に来られる人だったからです」
Q「少年からの指示は?」
A「『管理棟の裏で男性のズボンを下ろせ。その様子を動画に撮って男性を脅す』と伝えられました」

女を使い、男性を広島に誘い出すことに成功した少年。男性が来広する4月12日までに周到な準備を重ねます。

凶器となった「木の棒」事前に現場周辺で...

被告人質問では、その準備が明らかになりました。

Q「どんな準備した?」
A「人を呼び、下見をし、道具を揃えました」
Q「誰を呼んだ?」
A「ケンカの強い先輩の男3人と、見張り役で女2人を呼びました」
Q「下見はどこで?」
A「水分峡森林公園の周辺です」
Q「どんなところを見た?」
A「周辺の防犯カメラを探したり、管理棟の裏に木の棒があるのを確認したりしました」
Q「道具は何を準備した?」
A「仮面のようなマスク、服、手袋です」
Q「女には何も準備させなかった?」
A「『包丁を買っておいてほしい』と頼みました」
Q「女は買ってきた?」
A「買ってきませんでした」

しかし事件当日、少年が協力を依頼した人物のドタキャンが相次ぎ、集合場所にやってきたのは男だけだったということです。

3人での犯行 狂う計画

事件当日、女は男性と徒歩で、少年は男の運転するバイクに乗って、それぞれ現場へ向かいました。

管理棟の横にあるベンチに腰掛ける女と男性。その様子を管理棟の裏から伺う少年と男。

当初は女が男性のズボンを下ろす計画でしたが、一向にその気配はありませんでした。

計画を変更し、木の棒を持ってベンチの前に飛び出した少年は「こんなとこで何しよるん?」「女の子襲おうとしとるんか」「金出せや」と男性を脅しました。

金を取れず暴行も 返り討ちに

脅されても金を出さない男性。

少年は男性に、殴る蹴るの暴行を加えますが、体格で勝る男性に押さえ込まれてしまいます。

見かねた男が、男性から少年を引き離し、そこから男性と男のもみ合いが続いたといいます。

その間、少年は木の棒で男性を殴るなどの暴行を加えていました。

少年「パニック状態に陥った」

うつ伏せのような状態で「助けて」「警察呼んで」などと叫んだ男性。

男はその上に馬乗りになり、財布を探すために、男性が背負っていたリュックサックを漁ります。

そのとき、少年が手に持っていた木の棒を男性に向かって振り下ろしました。

男性が叫んだ事で「パニック状態に陥った」と主張する少年。

「そこからの記憶があまりない」としつつも、
▽男に「殴れ」と言われて殴った
▽強さは覚えていない
▽必死なので特定の部位を狙った訳ではない
▽回数は2回。叩いた感触が印象的で覚えている
などと話しました。

裁判の争点と双方の主張は?

裁判の争点主な争点は3つ。
▽「少年の殺意の有無」
▽「保護処分とするべきか、刑事処分を科すべきか」
▽「刑事処分を科す場合はその量刑」

検察側は、木の棒(重さ1.5kg)で頭を殴っていることや、被害者の負傷の程度などから「少年が行為の危険性を認識していた」と指摘しました。

少年に殺意があったとして、強盗殺人罪の法定刑のうち「無期懲役」を選択したうえで、少年法に基づいて減軽し、懲役20年を求刑しました。

弁護側は、当初はお金を脅し取る計画だったことや、少年が「頭を狙った訳ではない」と発言したことなどから、少年に殺意は無かったと主張。

生育歴なども考慮して「少年院での保護処分」を求めたうえで、刑事処分の場合でも懲役10年が妥当と主張しました。

裁判所の判断は

そして迎えた判決の日。

広島地裁の國分進裁判長は「被害者が抵抗できない状態で後頭部を骨折するほど強く殴っていて、人が死亡する危険性が高い行為である」と指摘。

「少年は後頭部を狙って行為に及んでいて、危険性を十分認識していた」として少年に殺意があったと認定しました。

また、量刑について、「無期懲役刑に相当する」とした上で、少年法を適用し、有期懲役刑の上限で処するのが相当として、検察側の求刑通り「懲役20年」の実刑判決を言い渡しました。