4月に一般発売が始まったばかりの醤油。醤油って、普通は大豆と小麦で作るんですが、このブランドは、お米バージョンと蕎麦バージョンもあるんです。

仕掛け人は、広島県北広島町の女性。なんと、原料の大豆から自分で育てています。こだわりの現場を取材しました。

手作りの「醤油」って…どうやって?

・・・ゲコゲコゲコ・・・
カエルの大合唱が響き渡る北広島町。

醤油が仕込まれているのは、前田奈津枝さんの自宅です。

この日仕込んでいたのは、小麦の代わりに米を使った醤油。米は、近所の有機農家から購入しました。それを炒って粗めに砕きます。

自然生活農家 前田奈津枝さん
「米(で作った醤油)はすごい甘い香りがしておいしいです」
「穀類だったらなんでも作れるらしくて。昔はアワとかヒエとかでも作ってたという文献があるので」

大豆は、2種類をブレンド。柔らかくしすぎないのがポイントです。

自然生活農家 前田奈津枝さん
「メチャクチャ美味しいですね」

茹でたての大豆は甘く、まるで栗のようでした。

栗のようなホクホクの大豆 自家製なだけでなく厳選されて… 

自然生活農家 前田奈津枝さん
「これが脱穀前の大豆、刈り取ったものですね」

原料の大豆は、自宅前の畑で自ら栽培したものを使っています。毎年豊作で、去年は50kgほど収穫したそうです。

刈り取った枝から、豆のさやを外すのは手間がかかります。

一人で作業する奈津枝さんに、地域の方が足踏み脱穀機をプレゼントしてくれました。

自然生活農家 前田奈津枝さん
「こうすると、パッパッパッパッパ!一瞬で!笑」

大豆は3つのレベルに選別され、虫食いがあるのは鶏のエサになり、形が変形したものは味噌に使われます。そして、醤油になるのは「とびきりキレイな豆だけ」です。

自然生活農家 前田奈津枝さん
「醤油用は満丸でキレイなこういう大豆」
「なんで、(醤油用が)どんくらいできるか、ドキドキなんですよね、毎回選別しながら」

生産はまだまだ手探り!? そもそもどうしてここで醤油を?

小麦を栽培しているという畑にも案内してもらいました。

自然生活農家 前田奈津枝さん
「小麦が…ちょっとしか。これなんですけど。この列…」
Q.どれですか?
「これですこれです」

小麦は、すでに種を蒔いた分が成長中ですが、なかなか苦労しているようです。

自然生活農家 前田奈津枝さん
「撒いた種が結構虫にやられてて。ちゃんと保存しとかなきゃいけなかったなぁっていうのを、忘れてた!っていうのを2年に1回くらいやります」

広島市出身の前田奈津枝さんは、8年前、地域おこし協力隊として北広島町に移住しました。

特産品作りを模索する中で、「醤油」に注目。自分自身も栽培していた、身近な作物でできると知って、7年前から長野県の醤油作り名人の元へ通い、醤油醸造のいろはを教わりました。

手間がかかる仕込み作業 でもずっと楽しそう(笑)

北広島町での醤油の仕込みは、雑菌が繁殖しにくい冬からさくらの季節まで。

自然生活農家 前田奈津枝さん
「今まだアツアツ過ぎて、麹菌が付けられないので」

発酵に必要な麹菌が高温で死んでしまわないように、茹でたての大豆の温度を下げてから混ぜ合わせます。

Q.この作業で気をつけていることは?
自然生活農家 前田奈津枝さん
「そうですね、大豆に愛を伝えることでしょうか?」
(醤油伝道師みたい!)

さらに冷まして、麹菌が働きやすい温度になったら、台所に併設された発酵部屋へ。温度調節は自動、ではありません。

自然生活農家 前田奈津枝さん
「4日間、ずと、温度大丈夫かなって」
Q.気にし続ける?
「そうです、そうです」

麹(こうじ)を活かす絶妙な温度調整の後に…

4日間で、麹菌が大豆と米をしっかり醸したら、塩と水を加えて熟成させます。

玄関横には、熟成小屋もあります。

熟成期間は8か月以上。夏場に室温が50度近くまで上がることで、醤油の味に深みが出るそうです。

自然生活農家 前田奈津枝さん
Q.ずいぶん立派ですけど、この熟成小屋はどうしたんですか?
「これは作ってもらいました!地域のおじいさんに!」

奈津枝さんは、地域おこし協力隊を卒業してからも、北広島町内で醤油作りを続けています。

4月からは、「醤耀」(しょうよう)という名前で豊平どんぐり村のどんぐり荘で一般販売も始まりました。奈津枝さんが作る醤油は、JAS規格では「麹調味料」という扱いです。

そしてこの日は、小麦を育てている農園で、その小麦を使った醤油搾り体験のワークショップが開かれました。

参加者
「小麦が入っているのも知らなかったくらいですから、楽しみにしてきました」「それが自分たちでできるっていうのも知らなかったので、体験できるの、すごい楽しみです」

「醤油搾り体験」ができるなんて!

「醤油搾り体験」の会場には、奈津枝さんが、1年3か月熟成させたもろみと、それを搾る装置、「搾り槽(ぶね)」を持ち込みました。

この搾り槽は、長野県で使われていた昔ながらのものを完全コピーして、奈津枝さんが北広島町内の大工さんにお願いして復元されました。

自然生活農家 前田奈津枝さん
「二度付け厳禁で違う指にしてください。ちょっと味見てみます、始めの味を」
「うん!どうぞ!」

熟成されたもろみの樽からは、香ばしい匂いが立ちこめます。

参加者
「大豆は潰さないんですね」
自然生活農家 前田奈津枝さん
「そうなんです。味噌みたいにしっかり茹でないんですね」

お湯を加えて混ぜるたび、風味が増してまろやかに。

参加者は、味の変化を確かめながら進めます。

自然生活農家 前田奈津枝さん
「うん、おいしい!」
参加者
「あ、違う、だいぶさっきと。(まろやか)なってきた」

緩んだもろみを袋に入れている間に、旨味たっぷりの褐色の液体が現れました。

滴り落ちる「一番搾り」 そのお味は?

参加者
「来たよ、あ!あ!」
「来た来た、一番搾り!」

発見した参加者達から感激の声が上がり、味見をすれば再び感動の声が上がりました。

自然生活農家 前田奈津枝さん
「もう、醤油だけをごはんにかけると、『え?卵入れたっけ?』っていうくらいおいしいです。ワハハハハ」

締めくくりは、搾りたての生醤油(なましょうゆ)だけをごはんにかけて。販売しているものは、保存のために火入れをしますが、体験会ではその前に食べることができます。

みどりのゆびファーム 佐々木睦さん
「普通に食べてるお醤油の味だけじゃないものが、一緒にいっぱい入ってるよね。なんだろうね」

参加者
「もう完食です~!おいしかった! お醤油だけの時もごはん食べきってしまいそうだった」
「おかずがいらない!」
「おいしい!」

できたての醤油のおいしさと、自分たちで作る楽しさが伝わって、あちこちで地域ごとの醤油造りが広がること。それが、奈津枝さんの野望です。