住民
「数字見てそんなバカなっていう」
「もうショック。こんなに溜まってるのかと思って」
超高濃度のPFASが検出されたのは、川の水でも、井戸の水でもなく…住民の血液からでした。彼らが暮らすのは、2024年、飲用水としては全国で最悪のPFAS濃度が検出された地域です。一体、何が起きているのでしょうか?
京都府立大学 原田浩二教授
「極めて異常な事態とも言えます」

川の水や地下水から高濃度のPFASが検出された、というニュースはこれまでに何度もお伝えしていますが、今回は、血液から。にわかには理解できないほど高い数値ですが…どういうことなんでしょうか?
血液から超高濃度PFASが検出 この地域で何が起きているのか?
今回取材した、高濃度PFASが検出された人たちの居住エリアは、広島県東広島市八本松町宗吉。実は2年ほど前、地下水から全国で最悪のPFAS濃度が検出された地域でもあります。

地図をもう少し広い範囲で見てみますと、すぐそばにアメリカ軍の弾薬庫があることがわかります。当事者の方々の不安というのは相当なものですが、現場で何が起きていて、これからどうすればいいのでしょうか? 取材しました。
2025年11月、東広島市八本松町宗吉の住民らが意を決して行ったのは、採血でした。自宅の井戸水から高濃度のPFASが見つかって、1年9ヶ月が経っていました。
検査を受けた住民
「おいしい水だったから、特に。水道を使ってるんだけど、飲み水は井戸水飲んでたんです。だからすごいショックですよね」
「やっぱり数値的には出ると思います」
2024年2月、地域の井戸水から、指針値の300倍、1Lあたり15000ngという飲用水として全国最悪の汚染が確認されました。
東広島市 高垣広徳市長
「1万5千(ng/L)という大変高いレベルが出ているということなので、希望される方の健康診断についても、検討していく必要がある」
PFASってどういうもの? 全国で相次ぐ「指針値超え」
1万種類以上あると言われる有機フッ素化合物=PFAS(ピーファス)のうち、「PFOS(ピーフォス)」と「PFOA(ピーフォア)」については、発がん性が指摘されていて、国際条約で製造や輸入が禁止されています。
日本では現在、水道水の暫定目標値も河川の指針値も共に、1Lあたり、PFOSとPFOA合わせて50ngとしています。
PFASの検出は、近年全国で相次いでいて、その原因は様々です。

今回の場合、汚染検出地域のすぐ上流に、アメリカ軍の川上弾薬庫があります。
岡本幸記者
「住民が住んでいたエリアからほんの数分歩いたところ、200mほど離れたところに、川上弾薬庫があります。そしてあの丘の向こうには、かつて米軍が泡消火剤の使用を認めたヘリパッドがあります」
アメリカ軍が認めた「使用」 住民が求めた「血中濃度」
アメリカ軍は、2024年、弾薬庫敷地内にあるヘリパッド周辺で、1991年から2009年にわたって、PFASを含む泡消火剤を訓練で使用してきたことなどを認めました。
一方、東広島市は、PFASが指針値を超えた井戸水の飲用中止を呼びかけ、水道敷設などを勧めると共に、希望者には健康診断を実施しました。しかし、血液中のPFAS濃度の検査については、「住民が希望しても実施はしない」という方針でした。
東広島市 高垣広徳市長
「血液検査をして(PFAS濃度が)高かった時に、ある意味、不安を煽るだけではないかというようなご意見も聞いています」
何度要望しても実施されないことから、2025年秋、住民は、自分たちで検査機関を探し、費用を負担して、血中濃度検査を実施しました。

血液中のPFAS濃度について、日本では指標となる値はありませんが、アメリカの学術機関が示した健康影響へのリスクが高いとされる目安は、7種のPFASの合計値で1mLあたり20ngです。
検査を受けた住民
「やっぱり怖い。それ(PFAS)がどんな働きをするか、やっぱり想像すると怖いけど、知る権利はあると思うんですよ」
「自分の身体のことを知っておきたい」 結果は衝撃の濃度
およそ1ヶ月後に判明した住民13人の血中濃度は、想像を絶する値でした。アメリカの学術機関の指標なら、12人が高リスクということになります。なかでもAさん・Bさんは、指標の110倍を超えていました。

住民Aさん(83)
Q.これをご覧になった時は?
「まぁびっくりも通り越します。どうしていいやらもわからないし」
83歳のAさんは、47年前からこの場所で暮らし、2024年まで生活の全てに井戸水を使ってきたそうです。それは、指針値の300倍を検出した井戸水でした。
自身の血中濃度にショックを受けたAさんですが、「知らなかった方が良かったか?」と尋ねると、「そうでもない。ある程度高いのは覚悟していた。これを知っておくことが後々のためになるはずだ」と答えました。費用面の負担があったことから、同居する夫は血中濃度検査をしていませんが、同程度だと推測しているそうです。
Aさんは30年以上前から子宮や肺、大腸、腎臓など様々な病気をして、一緒に住む夫は前立腺癌や胆石などを患っています。
住民Aさんの夫(87)
「井戸水については、1日も早く安全な水を取り戻してもらいたいんですよね」
実際に、これほど高濃度のPFASが市民の血液中から検出されていることについて東広島市の反応は…?
東広島市健康福祉部 中村保部長
「大変我々としても深い関心と懸念を持って受け止めているところでございます」
専門家も驚く現状 今やるべきことは・・・?
京都府立大学 原田浩二教授
「血液1mLぐらいにおいては大体10ngぐらいであるというのが普通なんですね」
PFAS研究の第一人者である京都府立大学の原田浩二教授は、血液からここまで高い値が検出されるのは、極めて異常だと指摘します。
京都府立大学 原田浩二教授
「元々地下水が非常にこういった高濃度になってるということ自体も、非常に稀な事例だと思っております。その結果、今回非常に高い血液中PFAS濃度が見られたということで、やはりこれは私としても、ここまで非常に強い汚染があるというのは初めての経験になります」
住民が気にする健康へのリスクについては…。
京都府立大学 原田浩二教授
「血液中の脂質の上昇であるとか、肝臓の障害、そして免疫機能等に影響を及ぼすというようなことが、指摘されてきているところであります。そういった疾患が、今後起こらないようにする必要があるんではないかと思います」

飲用地下水から、全国で最悪の汚染が発覚して2年。汚染源は、未だ特定されていません。
住民13人が、数万円の自己負担をしてでも、血中濃度検査をしたのは、
▼まずは「自分の身体のことを知っておきたい」ということと、
▼「今すぐ対策や結論がなくても、
データを活用して今後に役立ててほしい」、ということ。
一方、なぜ東広島市が血中濃度検査をしないかというと、「国の方針が決まっていないから」ということです。環境省は健康影響研究を北海道大学など4大学に委託して、2024年6月から最長3年で共同で行われています。

原田教授によりますと、「PFAS汚染は広がる可能性がある。なるべく早く発生源を特定し、対策を講じる必要がある」とのことでした。
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