PR
山に囲まれた土地に117万人が住む広島県広島市。平地が少なく、山を切り開くなどして造成された団地の数は160以上にものぼります。その1つ「あさひが丘団地」では、入居が始まってから50年が経ち、少子高齢化という課題に直面しています。今後、団地が持続していくにはどうすればよいのか。現状を取材しました。
広島市唯一の動物園「安佐動物公園」にほど近い、広島市安佐北区の「あさひが丘団地」。“安佐”町の“日”浦地区に作られたことから名付けられたこの団地は、旧安佐町農協が計画し、1975年12月、4世帯17人の入居から始まりました。
入居開始時からの住民(70代女性)
「1976年、動物園に夫と子ども2人と来たんです。そうしたら団地にアドバルーンが上がっていたのが見えたんです。後日、家を双方の両親とともに見学して『農協さんがやることだったら大丈夫じゃけえ』とゴーが出たので、その年の10月10日に入居しました」
団地の入居が始まってから50年を迎え、6日には記念イベントが開催。多くの露店が並び、にぎわいを見せました。団地内のホールでは式典も開催。広島市の松井一実市長や地元住民など約200人が参加しました。
松井一実広島市長
「一定の年齢を重ねる。そうすると空き家が出る。地域の方々が少なくなる。折角ここまで作り上げた団地を、ぜひ、次の世代へどう引き継ぐかということを皆様の手で考えていただきたい」
入居開始から50年経ったあさひが丘には今、少子高齢化という課題が突きつけられています。
あさひが丘の人口は、入居開始後の3年で爆発的に増加。最盛期の1994年頃には8900人ほどが住んでいましたが、そこから人口は徐々に減少に転じました。現在は約6000人が暮らしています。

一方で、65歳以上の高齢者の数は、最盛期の1994年は762人でしたが、2024年には2798人と3倍以上増えています。同時期に入居した人々が歳を重ねて一気に少子高齢化が進み、現在のあさひが丘の高齢化率は45.6%。広島市全体の26.6%と比べ、かなり高い水準となっています。

高齢化が進み、介護施設に入ったり亡くなったりする人が増えることで、団地は空き家の増加という課題にも直面しています。現在、空き家は団地内に100軒以上。家財のある空き家が多く、売却や解体がうまくいかないケースが多いそうです。
そこで自治会は、団地内で「空き家相談員」を養成し、住民からの相談に応える取り組みを始めました。
あさひが丘連合自治会 尾田豊機会長(82)
「2人暮らしの方が多いが、2人の場合はそんなに家財も要りませんから、断捨離して軽くなっていただきたい。我々もそうですけれども、いつ施設に入るかわからない、体調を壊すかわからない、そうなったときに子どもさんやお孫さんが困らないように」
尾田自治会長は、空き家を放置しないことが、団地を次世代に引き継ぐ重要なポイントだと話します。
あさひが丘連合自治会 尾田豊機会長(82)
「空き家を解体して、更地にして、新しい家を建てれば、需要はいくらでもあるんです。団地を見たらわかると思うんですけれども、新しい家がどんどん建ってるんです」

あさひが丘では、新築の一軒家が物件によっては2000万円を切る価格で販売。この3年間で約50軒の新たな住宅が建ちました。
入居開始時からの住民(70代女性)
「私が住んでいるところは、お亡くなりになられたら皆さん平地にされるんですよ。そして新しい家が建ったらすぐ若い人が入ってきてくれます。すごく良いことだと思います」
若い世代にとって、あさひが丘の魅力は何なのでしょうか。
他地域出身の住民(30代女性)
「幼稚園、小学校、中学校が同じ地区にあって、地域のおじいちゃんやおばあちゃんが見守ってくださっているから、小さい子が居ても安心して学校に行かせられるし、子育てもしやすいなと思います」
少子高齢化は進んでいるものの、着実に次の世代へのバトンパスが始まったあさひが丘。まちづくりに詳しい専門家は今後の団地のモデルケースになると話します。
呉工業高等専門学校 神田佑亮教授
「同時に同じ世代が住んでしまうと、団地全体が同時に歳をとってしまうので、今後は団地の中で住まわれている方々の年代を同じところに固めない工夫が必要になってきます」

ほかの団地も同様の課題に直面する可能性があるなか、あさひが丘のように、団地の住み替えを促進するスキームづくりが重要だと話します。
呉工業高等専門学校 神田佑亮教授
「大人と子どもという世帯で住んでいた家を早く次の世代に渡してあげるように、家あるいは土地含めた不動産をうまく流通を円滑にしてあげるような、次の方に売って使って貰えるような流れをスムーズにやっていく仕組みづくり、あるいは、ビジネスのモデルを作っていくことが大切になってくると思います」
広島市に160以上ある団地。団地を1世代で終わらせないための取り組みが求められています。







PR
新着記事
ランキング
※毎時更新、直近24時間のアクセス数を集計しています。
PR
コメント (0)
IRAWアプリからコメントを書くことができます!!