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これは戦後、お好み焼を広島のソウルフードに育て上げた“みっちゃん”こと井畝満夫さんの物語である。
みっちゃん)「ほんまに何もないのぉ・・わし、こっからどうすりゃええんじゃろ」
今から80年前の広島、廃墟の街に一人の若者が降り立ちました。
男の名は井畝満夫(いせ・みつお)。通称みっちゃん。
日本の敗戦で満州から引き揚げてきたみっちゃんは、道路工事など肉体労働で日銭を稼いでいましたが、とても生活していけません。
そんな中、父の井三男(いさお)さんがお好み焼の屋台をはじめると言い出しました。
父)「みつお、おまえも手伝えぇや」
みっちゃん)「ええ、わしもやるんか!?」
屋台を出したのは中央通り。盛り場で働くホステスさんが主なお客です。
父)「みつお、わし体がしんどいけぇ、店たのむわ」
みっちゃん)「はぁ?わし昼間に道路工事やりよるんで!」
なんだかんだ言いながらも、親の言うことには逆らえません。みっちゃんは工事の仕事を終えた夕方から店に立ち、深夜までお好み焼を焼き続けました。しかしお店は繁盛しません。
みっちゃん)「なんでうちの店、客が来んのんかいの」
客)「美笠屋(ミカサヤ)いう名前が悪いんよ。だってミカサヤいう顔じゃなかろうが」
みっちゃん)「しょうがなかろうが、この店おやじがはじめたんじゃけえ。わしはこんなんやりとうないのに・・」
女性客A)「みっちゃん、ビールおかわり」
女性客B)「みっちゃん、お好み焼いて」
女性客C)「みっちゃん、お金ここに置いとくで」
女性客D)「みっちゃーん、早うしてぇや」
みっちゃん)「ほうじゃ、店の名前、みっちゃんにしよ。それがええ。よーし、今日はからここはみっちゃんや!」
思い立ったらすぐ行動に移すのがみっちゃんのいいところです。名前を変えたとたん人が集まりはじめたのだから、お店の雰囲気に合っていたのでしょう。
井畝満夫の店だから、みっちゃん。さあ、お好み焼のみっちゃん、いよいよスタートです!
■作・演出 清水浩司
■朗読 二階堂 和美
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