ふりかけ市場価格の推移(富士経済調べ)
マーケット調査会社・富士経済の調べによると、国内のふりかけ業界の販売量と販売額について前の年との比較したデータを見ると年々伸びていることがわかります。物価高の中で、家計を支える救世主にもなるのでしょうか?100年以上にわたって「ふりかけ」を手がける広島の老舗メーカーを取材しました。
白山貴浩記者
「リーガロイヤルホテルの和朝食になります。おいしそうな料理が並んでいます…テーブルには、ふりかけが置いてあります」
リーガロイヤルホテル広島では、去年の夏から、田中食品のふりかけ『旅行の友』を朝食メニューに採用しています。
リーガロイヤルホテル広島
日本料理鯉城 吉川環女将
「観光客に喜んでいただけるかなと、レトロ缶がかわいかったので」
昭和初期の「旅行の友」スチール缶
昭和初期の『旅行の友』のスチール缶です。現存するふりかけの資料としては国内最古とされています。
田中食品 田中孝幸社長
「これが、旅行の友。戦時中、兵隊が持って行ってた当時の缶々です。陸海軍御用品との文言まで入ってます」
『旅行の友』は1904年、田中食品の前身で呉市にあった田中商店の田中保太郎氏によって生み出されました。「持ち運びが容易で、日持ちする、栄養価の高い食品」を旧海軍から求められ、醤油で味付けした魚粉を乾燥させて作ったといいます。あの戦艦大和にも搭載されていたそうです。
田中孝幸社長は保太郎氏のひ孫に当たります。
田中食品 田中孝幸社長
「企業理念の『子を思う親心』という、当時の兵隊さんを助けた栄養の部分ですけども、健康になるためにどういった素材がいいかっていうところと、やっぱりおいしい味をどう実現するかっていうのは、かなりこだわって考えてます」
廿日市市にある広島工場を訪ねました。
田中食品 開発部 平本良太 さん
「こちらが原料を選別している部屋になります」
人の目による原材料の最終選別が行われていました。田中食品では、現在170種類のふりかけを販売していますが、そのほとんどが、この工場で製造されています。
田中食品 田中孝幸 社長
「物価高の中で、毎日食べる食事の中で、金額を抑えてですね、より栄養価の高いものを食べ続けるっていう中で、ふりかけが選択されているのではないかなという風に考えてます」
工場では、自分の好きなふりかけを作る『ふりかけ作り体験』を行っています。
見学に訪れていた園児
(ふりかけ好きな人?)
「はーい」
「タマゴ・シャケ・野菜」
「ノリ」
「めんたいこ」
ふりかけは、子ども以外のさまざまな世代で支持されていると話します。
田中食品 田中孝幸 社長
「年配の方は、ソフトふりかけって言って、ちょっと水分値の高いもので、イカ、昆布とか梅、ひじきとか、そういったものを買われたりとか。一方で、このデジタル化が普及してSNSで、サラダとか料理にかけたりっていういろんな使い方が広がっていって需要が増えているのではないかと」
田中社長は、新商品の開発に長く関わってきました。中でも、「広島ふりかけシリーズ」は、地元の食材にこだわり抜き、寝る間も惜しんで開発したそうです。
田中食品 田中孝幸 社長
「(ふりかけ開発は)早くトレンドを先取りしすぎてもダメ、10年ぐらい経って伸びてくる商品もありますし。1回自分が生み出した商品をやめずに、ずっと育ててくっていくことが大事。この間には赤字を切ることもあるんですけども、やっぱり自分が思いを込めて作って、この後は時代の環境にうまくはまるかどうかを常に考えます」
海外向けの商品開発にも力を入れています。日本のアニメをきっかけにヨーロッパを中心に『おにぎりブーム』が起きているといいます。
田中食品 田中孝幸 社長
「ドラゴンボールとかの中で、おにぎりとか出てですね、興味を持って、食べてみたいと」
こうして生まれたのが『世界の友』です。各国の食品規制に対応するため着色料や保存料を一切使っていません。安心安全なふりかけとして国内では赤ちゃんの離乳食の味付け用にも利用されているそうです。
世界の友を使ったアレンジレシピを紹介してもらいました。調理方法は、ゆでたピーマンにごま油、そして“世界の友”を混ぜるだけです。
田中食品開発部 安永留美 さん
「ごま油…はい完成です(簡単ですね)ふりかけをかけただけとは思えない仕上がりになってます。調理時間を時短したいという主婦は多いと思う。さっと味付けできるというお声をいただいています」
白山貴浩記者
「こちら、田中食品のアンテナショップ『旅行の友本舗』では、巻くふりかけを使ったおにぎりが販売されています」
客「シャケを巻いてる?」
店員「シャケで巻いてる」
客「可愛いな」
こちらはシート状のふりかけ「巻くふりかけ」です。開発には、20年以上を費やしたそうです。
田中食品 田中孝幸社長
「温度1度違っても、湿度が何度違っても、もう状態が全部バラバラになって…失敗が積み重なって、ようやく完成して、今、国内と海外に向けて発信をしているところ」
「旅行の友」の誕生から121年。田中食品はさらに、ふりかけの進化を目指します。
田中食品 田中孝幸社長
田中食品 田中孝幸社長
「旅行の友を食べて、健康になってほしいという思いがあるんですけども、骨密度をより高めるとか、あとは、今、認知症のと方も増えてるので、ふりかけを食べることでちょっとでも遅らせるっていう、そういったいろんな派生をした商品を考えていきたい」
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