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【巨大地震で下水道が止まったら】能登半島地震の被災者も困惑した“災害用トイレ” 全国で「常備している人」は約2割にとどまり

最大震度7を観測した石川県の「能登半島地震」。災害関連死を含め、500人以上が亡くなった。被災地では、元の生活を取り戻せない人たちも少なくない。今年1月1日に発生した震災から1年を迎える。そこで得た教訓を改めて考えたい。

発災から1週間後、筆者は、JNN取材団の一員として、震度6強の揺れに見舞われた能登半島の先端・珠洲市(すずし)に現地入りした。

石川県珠洲市 2024年1月8日撮影

木造家屋が屋根から崩れ落ち、水分を多く含んだ新雪が覆いかぶさる。あまりの悲惨な光景に、被災者にどのような声をかけたらいいのか言葉を失う。道路のアスファルトはそこら中で砕け、液状化により広範囲で断水。いまもなお、復旧していない地域は多い。

個人的に苦労したのは、避難所の「水洗トイレ」が使えなかったこと。道の駅のトイレでは、小便・大便が溢れ、異臭が漂っていた。無造作に転がるトイレットペーパー。身体から何も出したくない。劣悪な環境を前に、食欲が減る一方だった。

どんな非常事態でも、必ず我慢の限界が来る生理現象。家族や親戚が集まる正月だからこそ、**「災害用トイレの備え」**が必要だ。

個室にガムテープ「袋を開いて便器にかける」日常とかけ離れた“災害用トイレ”の手順

石川県珠洲市の飯田小学校。3学期の授業が始まる予定だった2024年1月9日、教室は避難所に使われていた。床には布団が敷かれ、ストーブの周りで被災者が身を寄せあう。

この時点で、学校再開の目途は立っていなかった。地元の町内会長は、避難所の生活において、ある悲痛な面を訴えていた。

「トイレが一番大変。一人ひとりに袋を持ってもらい、まとめてゴミとして出す」

トイレの個室は、緑色のガムテープがバッテンに貼られていた。入口には「災害用トイレ」の手順が書いてあった。

「災害用トイレ」の手順
・切り取り線で切る。最後にヒモとして使う。
・袋を開いて、便器にかける。
・大便をする。ふいた紙もいれる。
・切り取り線をヒモとして使ってしばる。
・黒ゴミ袋に捨てる。

言わずもがなだが、レバーを引いて水を流すだけの水洗トイレとはワケが違う。トイレを我慢する人が増え、食事や水分を取らず体調を悪化させる場合もある。

「災害用トイレ」は日常生活に浸透していない。それを裏づけるデータがある。

4位は「トイレットペーパー」約45% 自宅の防災用品トップ10に「災害用トイレ」は?

NPO法人「日本トイレ研究所」は2024年10月、全国の20歳から69歳までの男女1113人に「災害時のトイレ衛生に関する意識調査」を行った。

自宅に備えている防災用品の上位は、「飲料水」「懐中電灯」「食料品」「トイレットペーパー」「モバイルバッテリー」が4割超だったのに対し(※複数回答可)…、

第1位 飲料水  58.5%
第2位 懐中電灯 57.2%
第3位 食料品  46.0%
第4位 トイレットペーパー 45.4%
第5位 モバイルバッテリー 41.4%
第6位 ウエットティシュ  40.2%

第7位 軍手       39.4%
第8位 カセットコンロ  35.2%
第9位 歯ブラシ     32.8%
第10位 ラジオ      30.1%

「災害用トイレ」は全体の2割で、20項目中14番目だった。準備しているのは、30~40代の女性が多かった。

第11位 薬       29.5%
第12位 手指消毒剤   26.9%
第13位 下着      24.0%   
第14位 災害用トイレ  21.1%
第15位 生理用品    20.0%
第16位 備えていない  16.6%
第17位 ヘルメット   13.7%
第18位 消毒剤     7.9%
第19位 おむつ     6.4%
第20位 その他     1.4%

天気予報で得られる大雨情報などと比べ、予測が極めて困難な地震災害。防災意識が高い人でない限り「災害用トイレ」の準備は後回しになる。優先順位が下がるのは致し方ない。

また、断水で自宅のトイレが使えなくなった場合の利用場所は、「避難所トイレ」が最多の24.6%「備蓄している災害用トイレ」が17.9%「公園・公衆トイレ」が16.5%と続いた。「野外で用を足す」も11.6%いた。

悪臭しにくい「マンホールトイレ」平和公園・マツダスタジアムでも整備

石川県珠洲市から、直線距離で550キロ離れた広島県の広島市。

南海トラフ巨大地震が起きた場合、県内では最大震度6強の揺れ・最大2m近くの津波が想定されている。広島市を含む沿岸部では、能登半島の被災地と同様、液状化リスクが高い。

平和公園東側の遊歩道に整備「マンホールトイレ」が20基

こうしたなか、広島市は**下水道に直結する「マンホールトイレ」**の整備を進めている。マンホールの上に、簡単な便座やパネルを設ける仕組み。汲み取り式のような悪臭がしにくいメリットがある。

広島市内で初めて「マンホールトイレ」が設置されたのは、2006年。その後、平和公園・マツダスタジアム・小中学校など計200基以上が取りつけられ、2024年は公立高校の24基が加わった。能登半島地震を受け、地元住民の防災意識も高まっているという。今後も新たな設置場所が予定されていて、それぞれで下水道ルートの耐震化に着手している。

普段見かけるマンホールよりかなり小さめ

一方で「マンホールトイレ」が訓練以外で使われた実績は、現時点でゼロ。広島市下水道局の担当者は「大規模な災害が起きた時、どのように使ったらいいかを訓練で知ってほしい」と話す。

「飲料水・災害用トイレは最低3日分用意」能登半島を教訓“災害への備え”

巨大地震が起こった場合、高い確率で下水道が止まります。「飲料水」と「災害用トイレ」の準備は最低3日・できれば1週間分用意しておくことをお勧めします。(※筆者の体験に基づいたものです)

避難所の小学校で水を支給する陸上自衛隊員

水はあらゆる場面で必要となります。飲み水だけでなく、手など汚れた場所を洗い流す・身体を拭く・歯を磨くなど多岐にわたります。能登半島地震の場合、風呂・シャワーに、少なくとも1週間は入れなかった被災者がほとんどだったと思います。また、冬場の空気は乾燥しているため、のどが乾きやすくなります。

避難所生活が長期化すると、新型コロナウイルス・インフルエンザなどの感染症にも気をつけなければいけません。身体を清潔にしておくためにも、消毒液・ウエットシートなどを効果的に使いましょう。

防災用品は、子どもやお年寄りの人数・避難所で過ごすかどうかによって変わってきます。巨大地震はいつどこで起きるか分かりません。いま一度「災害の備え」を話し合ってみてください。

裏山から崩れた土砂が家屋に直撃

被災者に炊き出しする陸上自衛隊員

道路には大きな陥没

倒壊のおそれがある家屋

津波の痕跡 防波堤を超えた海の砂

避難所となった飯田小学校

朝8時のラジオ体操

農業用ビニールハウスで避難する人も

家屋の倒壊で母親亡くした娘

ため池の水を飲み水にする浄水装置

3学期の授業を再開した直小学校

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