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正月太りは遺伝子に刻まれた本能? “早食い”は控えて“味変”にも落とし穴 正月太り対策や解消法を肥満研究のスペシャリスト・広島大学 藤田教授に聞いてみた

ことしも残すところあとわずか。忘年会が一段落したのも束の間、次は、お正月に新年会…。次々とやってくる楽しいイベント、避けられない暴飲暴食、その先に待っているものは何か。

そうです、**『正月太り』**です。

多くの人が「今年こそは体型キープ」と強く意気込みますが、この時期特有の雰囲気の中で提供される「豪華な料理」や「おいしいお酒」の誘惑に勝てる人はそう多くありません。

そんな年末年始の敵、『正月太り』の原因や対策、そして解消法を、肥満のメカニズムなどについて研究している広島大学医学部の藤田直人教授に聞きました。

そもそも正月は太るもの?

広島大学 藤田直人教授

そもそも、なぜお正月は太ってしまいがちなのでしょうか。

藤田教授は**「正月は太るべくして太るもの」**と話します。諸説ありますが、これには人類が狩猟採集民族だった頃からの遺伝子が影響している可能性があるということです。

人類が誕生した700万年前、寒くなって食料の調達が難しくなる『冬』を乗り越えることは極めて困難でした。

そこで、寒くなる前にたくさん脂肪を蓄え、その脂肪をエネルギー源として冬を乗り切ろうとする種族が現れたといいます。

その戦略が功を奏した結果、「寒くなる前に脂肪を蓄える種族」が冬を乗り越えることが相対的に多くなり、そうでない種族は淘汰されていったとされています。

藤田教授は「脂肪を蓄えることで冬を乗り越えた種族にルーツがある現代人は、『寒くなるとたくさん食べる』ことが遺伝子に刻まれた本能的な行動ともいえる」と話します。

そのうえ、お正月は食料品売り場に豪華な食材がたくさん並んでいて購買意欲が高まったり、イベントなどで豪華な料理が提供されたりと、ついつい食べたくなる機会も多くなります。

つまり、寒くなることによる本能的な食欲と、豪華な料理が並ぶ環境による食欲。この2つが重なるため、お正月は食べる量が増え、必然的に太ってしまうのです。

少しでも正月太りを抑えるために…

必然的に太ってしまうお正月。その影響を最小限にするには「食べる量を減らす」しかありません。

藤田教授は、本能に抗って食べる量を減らすためには「3つのポイント」を押さえると良いと言います。

1つ目は**「ゆっくり食べること」**。

食べることで血糖値が上がったり、脂肪が取り込まれたりすると、「レプチン」というホルモンが分泌されます。

「レプチン」には食欲を抑える効果があり、脳に作用すると「満腹です」という指令が身体に出されます。しかし、分泌されてから脳に作用するまでに少し時間がかかります。

早食いをしてしまうと、脳に作用する前にたくさん食べてしまうので、それを避けるためにもゆっくり食べた方がいいのです。

2つ目は**「お酒はほどほどに」**。

お酒に含まれるアルコールには、脳の神経を麻痺させる効果があり、脳は麻痺すると分泌されたレプチンを感じ取りにくくなってしまいます。

そのため、たくさん食べても満腹感を得られにくくなり、結果的に食べ過ぎてしまうのです。

「味変」の落とし穴

最後は**「味変をしないこと」**。

満腹感は「味覚」からも影響を受けます。

例えばお腹が空いた状態から甘い物を食べ続けたときに得られる満腹感は「これ以上『甘い物に含まれる栄養素』はいらない」という体からのサインになります。

このタイミングで酸っぱい物に味変すると、体はまだ『酸っぱい物に含まれる栄養素』については欲している状態なので、満腹感が消えてしまいます。

「デザートは別腹」という言葉があるように、満腹になるまで食事をしても、デザートはすんなり食べられてしまう理由がこれです。

つまり、味変する度に満腹感が振り出しに戻ってしまうのです。

「ゆっくり食べる」、「お酒はほどほどに」、そして「味変しない」。

この3つのポイントを押さえて必要以上に食べてしまうのを防ぐことが、正月太り対策の近道だということです。

それでも正月太りしてしまったら?

どれだけ食べる量を抑えようとしても、ついつい食べ過ぎて太ってしまうことはあります。

藤田教授は「運動でエネルギーを消費するのが有効」としつつも、「一度付いてしまった脂肪を運動で一気に落とすことは難しい」と話します。

では、少しでも効率的に脂肪を落とすためにはどうすれば良いのでしょうか。

それには、運動を「種目」「強度」「時間」「時刻」「頻度」「期間」の6つの要素に分けて考えれば良いといいます。

まず、**「種目」**についてはウォーキングやジョギングなどの有酸素運動が脂肪を消費しやすいとされています。

2つ目の**「強度」**については、あまり「しんどいな」と感じず、息切れせずに長時間続けられる程度の運動が良いとされています。

ハイペースで走ったり、ウェイトを使った筋トレをしたりといった、ハード過ぎる運動では体内の糖が優先的に消費されるため、脂肪を消費しにくくなってしまいます。

3つ目の**「時間」**は長ければ長いほど良いですが、連続して長時間運動することが難しい場合は、時間を分けて運動しても問題無いとされています。

例えば、1時間ジョギングをするのと、20分のジョギングを3回するのとでは脂肪消費に差は無いといいます。

運動する時間はいつ?期間は?

4つ目の**「時刻」**は朝食前の運動が有効とされています。

朝食前は体内の糖が枯渇しているため、脂肪が優先的に消費されやすい状態だということです。

5つめの**「頻度」**は多ければ多いほど良いです。

週に1回の運動だと大きな効果は望めないので、週に5回以上運動することが理想です。

最後の**「期間」**ですが、数ヶ月単位で少しずつ減らしていく計画を立てる事が望ましいです。

お正月で一気に太ってしまった分、一気に体を絞りたいところではありますが、一ヶ月で体重を5%以上減らすことは健康面で問題があるといいます。

藤田教授は、「そもそも『冬を乗り切るために脂肪を蓄えるようになった』経緯から、人間の身体は脂肪をすぐに消費できるようにはできていません」と話します。

お正月についてしまった脂肪は2~3ヶ月かけて春までに落とすのが良いとされています。

以上のポイントを押さえて運動し、効率的に、そして健康的に脂肪を消費することが藤田教授おすすめの正月太り解消法になります。

◇藤田 直人(ふじた・なおと)
広島大学医学部 保健学科 教授 保健学博士
健康障害を予防・改善する運動の開発を目的に研究。特に、肥満や2型糖尿病などの肥満関連健康障害に対する運動の有効性などを検証する。

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