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「お客さんの笑顔とスタッフの生活を守っていきたい」広島市の大規模陥没で被害の美容室が再開「地域が再びにぎわう日まで…」不安と葛藤の40日間に密着

広島市の大規模な陥没事故は、発生から1か月あまりが経ちました。現場周辺では今も一部で立ち入りが規制され、復旧工事が続いています。現場近くにあって営業を休止していた美容室が先週、およそ1か月ぶりに再開しました。再開までの日々を追いました。

広島市西区観音本町の美容室「ASUNARO」です。

ASUNARO観音店 福地三鈴 店長
「お電話、ありがとうございます。ASUNARO観音店です。ゲートがある『そこでASUNAROに行く』と言えば開けてもらえる。ご不便おかけしますが、よろしくお願いします」

11月5日、40日ぶりに営業を再開しました。

看板を設置するASUNARO 福地康夫 オーナー
「わかりやすいですかね?」
(記者 これがあれば入ってもいいとわかる)
「やっと営業再開にこぎつけて、きょうからまた気分新たにできる」

9月26日に広島市西区で発生した大規模な陥没事故。そのわずか数十メートル先で店を構えているのがASUNAROでした。店舗もひび割れなどの被害を受け、休業を余儀なくされました。

別店舗で間借り営業 送迎サービスしながら対応

ASUNAROは市内で2店舗構えていて、「庚午店」を間借りして営業することになりました。

庚午店で電話対応するスタッフ(10月3日)
「大変ご迷惑をおかけしています。まさにその危険区域の中ある観音店は…。庚午まで送迎させていただく」

「観音店」の客はスタッフが車で送迎します。

普段は観音店に通う女性
「迎えに来ていただいた。真っ白い髪をしているよりいい。少し落ち着かない他店でやってもらうのは」

ASUNARO観音店 福地三鈴 店長
「もう来られないから他店に行くという人もいる。こうして来てくださる人ばかりではない。ありがたい、本当に」

オーナーの福地康夫さんはやり場のない複雑な思いを抱いていました。

ASUNARO 福地康夫 オーナー
「店の不祥事で来店が見込めなくなるのは自己責任で仕方ないが、そうではないところでこういうことになったのは残念で悔しい」

福地さん夫妻は美容室を切り盛りしながら広島市の説明会に参加するなどして、「観音店」再開のタイミングを探っていました。

危険度調査で「帰宅可能」判定も… 店舗前では工事続く

「観音店」の危険度を確認する調査が10月7日、実施されることになりました。福地さんも夫婦で立ち会い、傾きや沈下などがないか点検を受けました。

ASUNARO 福地康夫 オーナー
「営業はできると言われた。ただ店舗前にあんな大きな機械があって、穴も掘っている。お客さんも不安ですよね、ここに来ること自体が…」

ASUNARO観音店 福地三鈴 店長
「1日も早く再開したいが、安全が第一なので…」

陥没事故から1か月が経っても店舗前ではボーリング調査が続いていました。しかし、店自体は「帰宅可能」と判定されたことから、福地さんは営業再開を決断しました。

ひび割れなどを補修する必要があるため、再開日は11月5日に決めました。

ASUNARO 福地康夫 オーナー
「私たちのサービス業はだいたい1か月サイクルで動いていく。どこかで区切りをつけないと」

ただ、不安もぬぐいきれません。

ASUNARO 福地康夫 オーナー
「陥没した場所だけではなく、ほかのところはこれから先、陥没しないのか? だいじょうぶなのかというのはずっとついて回る。あとはもう行政と請け負った共同企業体の力を信じていくしかない…」

11月5日に営業再開へ スタッフ一丸で準備

11月2日、営業終了後にスタッフ総出で「庚午店」から「観音店」に荷物を送り返す作業をしました。

道路陥没事故以降、店の売り上げは前年の半分程度まで落ち込んだといいます。

「観音店」は陥没事故ではがれてしまった壁紙も貼り替えました。

スタッフのやりとり
「クロスはこれになった」
「おしゃれ。トイレもいい色」

福地さんはスタッフの様子を1人離れて見つめていました。

Q.この雰囲気はどう?
「いいですね。事故当初のことを思えば、みんなが明るくていい雰囲気になってきている。みんなで一致団結してやろうということで良い日になるんじゃないかな、11月5日は。とにかくがんばります」

「やるしかない!」40日ぶりに営業再開

迎えた営業再開の日…。「ASUNARO観音店」にハサミの音とにぎやかな声が戻ってきました。

常連客
「スタッフとのおしゃべりが楽しい、ここに来ると。無理してでも来る」

13年通う別の常連客
「営業再開してうれしい。他店へ変える気はなかったからどうしようかと思った」

ASUNARO観音店 福地三鈴 店長
「うれしいです。美容師冥利につきます。こうして楽しく仕事させてもらってお客さんが喜んでくれるのが一番。やってきてよかった!」

オーナーの福地康夫さんも「客の笑顔とスタッフの生活を守っていきたい」と決意を新たにします。

ASUNARO 福地康夫 オーナー
「周りの風景が一変したが、お客さんとよくよく話をさせていただいてご理解いただく。安心していただいて仕事を続けさせてもらう。やるしかない!」

地域が再びにぎわう日を「ASUNARO」はこの場所で待っています。

電話を受ける 福地三鈴 店長
(電話コール音♪)
「ASUNARO観音店です。カットですね。伸びましたよね。お待たせしました。では、あすの9時で! よろしくお願いします」

広島市は現在、建物の改修などの補償について個別に協議を進めています。「ASUNARO」もひび割れの修理や、休業期間の売り上げなどについて補償の相談をしています。

一方で、オーナーの福地さんは「道路陥没事故を受けて、ほかの店に移ってしまった常連客も少なくない。店とお客さんの縁はお金には変えられない」と話しています。

今回、被害を受けた店や住民に対して個別に寄り添ったケアが求められています。

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