この夏は記録的な豪雨で、大規模な道路冠水が全国で相次ぎました。浸水被害を防ぐハード整備の現状と課題を取材しました。

8月の千葉豪雨や、9月に東海地方を襲った大雨。いずれも線状降水帯が発生し、川の氾濫や浸水が相次ぎ、街が濁流に覆われました。

この夏、大雨による大規模な道路冠水に注目が集まりましたが、小規模な冠水も各地で頻発しています。

8月13日昼前、広島県東部の福山市蔵王地区周辺では、1時間に最大50ミリ以上の非常に激しい雨を解析。排水が追いつかず、道路が冠水しました。

福山市蔵王学区町内会連合会 藤井俊昭会長
「この地区は、地盤が低く雨量が多いときは浸水する確率が高い。じわっとではなく、短時間で集中的に低地に水が集まってくる。どうしようもできない状態」

藤井さんは蔵王地区で78年間暮らしてきました。スーパーや病院などが集まり、多くの人や車が行き交う地域の中心部は、藤井さんが子どもの頃には、田んぼが広がっていました。

「80年前には田んぼが広がっていた・・・」昔から悩まされてきた”浸水被害”

蔵王地区周辺は周囲より土地が低く、水が集まりやすい地形で、昔から浸水被害に悩まされてました。

福山市蔵王学区町内会連合会 藤井俊昭会長
「裾をめくって、水の中をザブザブ歩いていかないと、学校に行けないことがよくあった」

2018年の西日本豪雨では地域で、床上浸水の被害も相次ぎました。

福山市蔵王学区町内会連合会 藤井俊昭会長
「道路と用水路の識別ができないので事故が起きやすい。高齢者が多いので、事故が発生する前に対策してもらえるとありがたい」

福山市の”大雨浸水ハード整備” 地域の長年の不安解消へ・・・

蔵王地区など一帯の浸水被害を解消するため、行政も対策に乗り出しています。

JR福山駅から車で5分ほどの場所に、福山市は「蔵王ポンプ場」の整備を進めています。

この一帯で降った雨水を集め、隣を流れる手城川に排水するための施設です。工事進捗率は55%で、来年度末に完成予定です。

地下約14mに設置されるポンプ室に、大小4台のポンプを設置。水槽に集まった水を、毎分1000㎥(25mプール約3杯分)を排水することができます。

福山市施設整備課 柏田泰孝 雨水対策担当課長
「西日本豪雨級の雨でも、床上浸水を解消・軽減できる施設」

雨水を排出する先の手城川の整備は、「県」が進めています。大雨で増水した手城川がオーバーフローしないための対策です。

RCCウェザーセンター 梅川千輝 気象予報士
「蔵王ポンプ場からの排水が手城川に合流する場所では、護岸の高さが上げられて、拡幅もされています。川自体の浸水対策も同時で進められています」

福山市の浸水エリアは他にも・・・ ”ハード整備の限界”と”ソフト対策”

福山市では蔵王地区周辺以外にも、浸水リスクが高い地域は数多くあります。しかし、時間や予算の関係で、今すぐに全ての場所を整備することはできません。

また、排水できる雨の量にも限界があり、整備後も地域の浸水リスクを完全には解消できません。

そのため、行政と地域が「ハード・ソフト両面」で備えていく必要があります。

福山市蔵王学区町内会連合会 藤井俊昭会長
「『ただ困った、困った』では解決しない。毎年防災訓練はやらないといけないと思っている。訓練しておかないと、有事には対応できない」

福山市施設整備課 柏田泰孝 雨水対策担当課長
「我々もハード対策をしっかり整備していくが、想定を超えるような大雨に備えて、ハザードマップなど活用して避難場所・避難経路を確認し、安全な避難につなげてほしい」

”大雨浸水ハード施設” 排水が追いつかなくなる雨の量は?

一般的に浸水のハード対策は、「1時間=40ミリ~50ミリ」までの雨を排水できるように整備されています。その雨量を超えると、排水機能が追いつかず、浸水リスクが高まるといわれています。

雨の強さで、「激しい雨」「非常に激しい雨」「猛烈な雨」という表現が使われている場合は、道路冠水などが発生するおそれがあります。

浸水ハード対策は心強い一方で、全ての場所に整備はできない現実があります。まずは自分が暮らす街のリスクを知ることが重要です。

今回取材した福山市蔵王地区周辺のハザードマップです。昔、田んぼだった場所は周囲より低い土地で、そこに対応するように浸水想定区域が指定されています。

洪水浸水想定区域で色がつけられている地域は、川の氾濫などによる浸水被害。内水浸水想定区域で色がつけられているような地域は、排水が追いつかなくなった際に道路冠水などが発生するリスクがあります。

水は周囲より少しでも低い場所に集まるため、ハザードマップで地域の特性を把握してください。

”下水道管”の中の水位を見える化!スマホで確認できる新たな情報システム

広島市は4月から、新たな下水道管の情報システムを導入しています。

「広島市下水道水位情報システム」は、下水道管の中に設置した水位計の観測データを、スマホやパソコンから確認できるサービスです。(26年7月現在 江波排水区のみで運用)

危険度の高まりに応じた水位が設定されています。

「注意水位」は、下水道管の中が満水になっていることを示しています。「危険水位」は、マンホールから溢水のおそれ、またはすでに溢水している可能性があることを示しています。

広島市は、大雨時の下水道管内の水位変化をリアルタイムで確認することで、浸水への備えに役立ててほしいとしています。現在は一部地域での運用ですが、今後設置拡大を検討しているということです。

台風30号への備え 防災行動に役立てたい情報は?

気象庁が発表する防災気象情報災害のカテゴリーは、4つに分けられます。

◆河川氾濫・・・一級河川などの大河川の氾濫
◆大雨・・・低地の浸水/大河川以外の氾濫
◆土砂災害・・・急傾斜地のがけ崩れ/土石流
◆高潮・・・海水面上昇/波の打ち上げによる浸水

【レベル5相当情報】(レベル5大雨特別警報など)
自治体が「緊急安全確保」発令の目安にする情報で、すでに災害が発生しているか、災害の発生が押し迫っている状況です。命の危険が迫っています。

すでに安全に避難することが、難しい状況になっているおそれがあります。今から自治体が定めた避難場所など、離れたところへ移動することは、かえって危険な場合があります。

洪水・浸水の危険度の高まりは、気象庁HPの「キキクル」で確認できます。”黒色”で示されている場所が、「レベル5相当」の危険を表しています。

いま自分がいる場所が、「洪水浸水想定区域」などにあたり、さらに「キキクル」で”黒色”になっている場合は、ただちに命を守るための最善の行動をとってください。

【レベル4相当情報】(レベル4大雨危険警報など)
自治体が「避難指示」発令の目安にする情報で、災害に厳重な警戒が必要です。「レベル4」は”危険な場所”からの避難が必要な状況です。

洪水・浸水の危険度の高まりは、気象庁HPの「キキクル」で確認できます。”紫色”で示されている場所が、「レベル4相当」の危険を表しています。”紫色”は命の危険を及ぼすような重大な災害が、いつ起きてもおかしくない状況を表しています。

いま自分がいる場所が、「洪水浸水想定区域」などにあたり、さらに「キキクル」で”紫色”になっている場合は、身を守る行動を心がけてください。

自治体からの避難情報を確認してください。

【レベル3相当情報】(レベル3大雨警報など)
自治体が「高齢者等避難」発令の目安にする情報です。災害に警戒してください。

自治体から「高齢者等避難」が発令された場合は、高齢者や小さな子ども、障害のある方や、その支援者など、避難に時間がかかる人は”危険な場所”から避難してください。

危険度の高まる時間帯 あすまで見通せる「気象庁 時系列情報」

台風が接近する前、確認したいのが危険度が高まる時間帯です。

気象庁ホームページにある「時系列情報」では、あすまでの見通しを3時間後ごとに確認することができます。

黄色=レベル2注意報
赤色=レベル3警報
紫色=レベル4危険警報

危険度が高まるおそれがある時間帯を事前に把握し、そこから逆算して、避難タイミングを判断したり、防災行動に役立てたりできます。

しかし、大雨などで急激に災害危険度が高まった場合には、時系列情報で示された通りに警報などが発表されないこともあります。

気象庁の「キキクル」や、自治体からの「避難情報」などと合わせて確認することが重要です。

「TBSニュースDIG」では、雨雲レーダーやキキクル、台風情報・避難情報などをスマホで手軽に確認することができます。

台風30号に関する情報は、気象庁や自治体から発表される最新の内容を確認してください。